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映画 『怪物はささやく A Monster Calls』

この物語の主人公は 13歳の少年 コナー。
母親と二人暮らしをしているが、母親は重病で ほとんど寝たきりの状態。 進行が早く最善の治療法がなかなか見つからないため入院することに。コナーはしばらく祖母の家で暮らすことになった。祖母とコナーはどうも馬が合わない。5歳の頃に出ていった父親は遠く離れた地で新しい家庭を築いていてそこにはコナーの入る余地はない。コナーは自分の居場所を見つけられない。
ある日の夜12時7分。いつも窓の外に見える巨木が怪物となってコナーの元へ現れる。そして言う。「これから3つの物語を話す。4つ目の物語はお前が話せ。」と。

この巨木の物語がとても面白い。

例えば、1つ目の物語はこんな感じだった。
この街はかつて王国だった。戦争によって息子たちも妻も失ってしまった国王に残されたのは大事な孫だけ。そんな国王が再婚し若い王妃を迎えることとなったが この王妃は実は魔女なのではないかと疑われていた。程なくして国王が亡くなり、巷では 女王の座を狙った王妃が国王に毒をもったのだという噂が広まっていた。国王亡き後、孫が王位を継承するのにはまだ若いという理由で1年間だけ王妃が国を統治することとなった。王妃は玉座にしがみつくため 孫にも結婚を迫る。しかし孫は農村の娘と恋に落ちていた。駆け落ちをすることにした孫と農村の娘は 大木の麓で夜を越すことにしたのだが、翌朝目覚めると農村の娘は血を流して亡くなっていた。孫は「王妃の仕業だ!」と言い巨木と共に城に攻め込んだ。その後 王妃は行方知れずとなり王国は孫によって統治された。
巨木の話はここで終わりではない。
王妃を行方知れずにしたのは巨木自身。巨木は 王妃を別の街へ逃がしてあげたというのだ。
なぜなら。王妃は国王を殺していない。国王は寿命で亡くなった。王妃は農村の娘も殺していない。農村の娘を殺したのは すぐに王位を継承したかった孫だったのだ。孫の罪は誰にも知られることはなかった。しかし 王妃がいなくなったことによって国民の不安は拭われ 王国は幸せを取り戻し その幸せは永遠に続いた。

王妃は罪人ではなかった。しかし 国民に不安や恐怖や不信感を与えていた。
孫は罪人だった。しかし 国民に安心や希望や幸福感を与えていた。

物事には二面性があり必ずしも単純な善悪では判断できないということを教えてくれている。

これは少年が話す4つ目の物語に大きく関わってくる。
「こんなことを考えてしまうのは悪なのだ。」
「こんなことを考えれば善なのだ。」
というのは間違いである。
物事は こちらから見れば悪でも こちらから見れば善ということだらけだ。

だからどんな考えだって持つことは自由。
しかし、素直になることはなかなか難しい。大人になればなるほど 道徳心だったり空気を読むことだったりが増えてきて邪魔をしてくる。

「不謹慎」ってなんだろうとすごく考えた。

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