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北海道東川町で過ごした1ヶ月

夏休み1ヶ月間、株式会社Compathが運営する、北海道東川町でのプログラムに参加してきました。21〜44歳の8人の参加者たちとの共同生活です。私の体験のシェア、そして備忘録として残そうと思います。

〜出発前〜
*計画的にこなす毎日

あらゆる選択肢を吟味して、やりたいことの実現のためにいつも綿密にスケジュールを立てて計画的に生きる私。毎日過ごす時間を意味ある時間にしようとしてた。Googleカレンダーが埋まっていると、充実した時間を過ごせているようで安心する。しっかり確認してから何かをするから、基本的に失敗と思う失敗はしないし、やらかしもしないし、割とうまくいく。学びもある。けどそうしていると常に未来のための今を生きている感覚があって、「今のための今」を生きていないと感じることがある。その時間における目的を事前に自分で決めているため、それ以外の視点から捉えた発見がしづらくなっていた。

そんな状態の私が参加したのは、北海道東川町で1ヶ月過ごすCompathミドルコース。私が元々やっていた教育プロジェクトの打ち合わせでたまたまCompathの2人に出会った。私と同じ大学出身の先輩方二人が起業して地域おこし協力隊として東川で挑戦している。プログラムの内容を聞いていて、調べてみると私の興味が詰まっていた。「うわぁこれだ!」と、心にヒットして、そう思った時にはcompathに長文DMを送ってた。早速zoomしてプログラムの内容を聞いても、散歩、居場所づくり、NVC、身体…私の興味があるキーワードが沢山。大学内外で私が興味持って取り組んできた/いるものばかりだった。私のためのプログラムかもしれないと思った(笑)。また、私自身大学3年生で周りの人たちからは「じゃあ就活してるんだ?どんなところにいきたいの?」と聞かれる日々。自分でもやりたいことが整理できていないのに、他人に話せない。興味はあっても、その興味と自分との接点が発見できていないとただ思いつきで話しているようで嫌だった。自分自身のことをもっと整理したかった。運営側として教育に関わっている身としてのフォルケへの興味、個人として興味あるプログラム内容だったこと、余白がほしかったこと、それが重なり、参加することになった。最初はプログラム期間中2,3日少し見学させてもらうくらいのつもりが、勢いで参加者として1ヶ月滞在させてもらうことになった。

コース開始日まで日が浅く、フォルケやcompath、ミドルコースにめちゃめちゃ心惹かれるものの、何をやっているのかはっきりは分かってなかった。なんで自分がここに惹かれているのかも、言語化し切れていなかった。いつもはあらゆる選択肢を吟味して、自分で納得してから決定するので、勢いで決めてしまって、正直不安だった。でも、とりあえず1ヶ月北海道に行ける時間だけは確保した。気づけばあっという間に東川町に行く日になっていた。

〜プログラム中〜

東川町では、「豊かさとは何か」というコースのタイトルと日々のプログラムの時間のタイトルだけは決まっていた。どのような時間になるのか、どう進んでいくのかわからないまま、「今」を生きていた。
ミドルコースでは、毎朝チェックインをした。チェックインは、自分の心に向き合って、そこにあるものを場に出すこと。人それぞれ整うために必要な時間が違って、パッと言葉にできる人もいれば、じっくりと向き合ってぴったりの表現が用意できてから話し始める人もいる。沈黙がしばらく続くときもあって、正直最初はだいぶ戸惑った。(笑)この時間なんなんだ?なんでみんな話し始めないの?って。でも、このプログラムでは、思いっきり自分を大切にしていい。自分にとって心地の良い過ごし方をしたり、自分のペースを保っていてもいい。私はそんな雰囲気に慣れるまで時間がかかったけど、徐々に馴染んでいく自分を感じていた。

*やらないという選択の先にあるもの

プログラムも、何をやるかは一応決まってはいるけど、そこにいる人たちのペースや、その日の状態に合わせて変わったりする。講師陣たちも、変えられる余白を持っている人たちだった。NVC(Non Violence Communication )、デモクラシーフィットネス、居場所づくりのための椅子作り、作った椅子を使って山でバーベキュー、スプーン作り、写真ワークショップ、身体の声を聞く、東川のまちのことを聞く会、パームカルチャー、真っ暗な森でのナイトウォーク、図書館で課題、みんなとの毎日の対話、料理…。色々なプログラムは用意されているが、参加するかしないかも自分の判断で決めていい。そう言われても、せっかく機会が目の前にあるのにそこに参加しないという選択肢はなかった。でも、中には今日は休みます、このワークは見てますっていう人もいた。羨ましく思いつつ、わたしにはそんな選択できない、と思ってしまった。

でもある時本当に体が疲れていて、ワークに参加しないという選択をしてみた。参加していない時間は、みんなから少し離れたところで寝っ転がっていた。中学や高校で体育の授業を休んでいた時の気分。ああ、やらなくて本当に良かったのかなと、不安だった。目を閉じて一眠りして、心身が回復したので、戻ることにした。みんなの方に行くと、私が休んでいたことは誰も特に気にしていない様子だった。逆に、「気持ちよさそうに寝てたね〜私も寝ようかな」と言ってくれたり。すんなりまたみんなの輪に入れた。その時に気づいた。私は、参加しないという選択をすることで何かや誰かから置いていかれるのが怖かったんだと。でもみんなから少しの間離れても何も変わらなかった。


毎日こんな風に、少しずつ色んな自分に気づく。ソワソワ、ワクワク、無な感じ、ホッとする気持ち、じゅわーっと心が満たされていく感じ。そうした自分はどこから来ているんだろうって考えたり、みんなから言葉をもらったりして、あ、これがあったからだってわかったりする。そうすると内側での自分の感覚と、外側での自分の行動が段々と一致してくる。ありのままの、ナチュラルな自分に近づく感じ。心地よくなる。

*ぶっちゃけ会

2週間くらい経って、ナチュラルに過ごしてみることにじわじわと馴染んできた。でも一方で、みんなそれぞれ自分のペースで、心地よく過ごすっていうのを大切にしているが故に、こんなに緩くていいのかなと感じ始めた。確かに自分のペースで心地よく過ごせるのは素晴らしい。けどそれって東川のこのcompathのプログラムで、ここに集まっている人たちが理解あるからこそできていることで、私が元いたような環境では無理だと思ってしまった。言いたいことが整うまで時間をじっくり取るのも、何か話す時も自分が話したい範囲で話すのも、やらないという選択肢が認められるのも、本当にそんなに優しくていいのか?とモヤモヤした。相手や自分にとって心地いいと感じないかもしれなくても、そこに向かって挑戦することが、状況や人に変化を与えると思った。
私はやっぱりそんな優しいだけの関係性が嫌で、「ぶっちゃけ会しようよ!」と声をかけた。いいねやろう!という声もあれば、不安そうにしている人もいた。思い切って、上記のような自分の気持ちを話してみた。みんなの気持ちもそれぞれに聞いたりした。自分がこの人はこう思っていそうと勝手に予想していたこととは違ったことも沢山あった。話してみて、私は中学以降から人とぶつかることを避けてきていたんだと気づいた。自分の言ったことで誰かが傷つくことも、自分の意見を伝えて相手が離れていくことも怖かった。だから、自分の意見があっても、それが人にネガティブな影響を与えるかもしれない時には、言葉にすることなく終わっていた。物心ついて初めて人と正面からぶつかって向き合った経験だった。

〜プログラムを終えて〜

東川町で1日1日の時間を味わうようにじっくり過ごしていたところから、また東京での忙しい日々に戻ってきた。思ったよりも元の生活への違和感は感じず、すんなりまた馴染んだことに驚いた。今コース終了から1ヶ月くらい経つが、ミドルコースで身体的、心理的、空間的、時間的余白がたっぷりあった生活からの反動か、この1ヶ月はアクティブに過ごした。ミドルコースに参加して、自分が抱えているあらゆるものから一旦離れて立ち止まるという選択肢を自分の中に持つことができた気がする。きっとこれからも私は何かに突っ走っていくんだろうけど、息詰まったら止まってみるという選択肢ができた。働き始めたら1ヶ月どころか1週間の休みを取ることも難しいかもしれない。制度的にはできないわけじゃないけど、そんなこと”社会人として”やってはいけない、迷惑をかけてしまう、など心理的ストッパーがかかると思う。そういう時に、東川町で一緒に過ごした人たちが持っていた、「こうしたい」がどうできるかを考えるマインドを思い出したい。

プログラムが終わっても、compathのみんなとの対話が続いている。グループLINEも動くし、再会もあるし。東川での日常が、元の生活に戻ってからの日常の中にもある。自分の声を聞いてほしい時に声をかけられる相手がいること、気持ちをシェアできる場があること、反応を返してくれる人たちがいること、心が温かいもので満たされていく感じがする。

東川のあの小さな町には、想いを持って過ごしている人たちがたくさんいた。生き方に対するこだわりとも言えるかもしれない。その生き方の実現を町も応援しているし、他者の生き方に対して判断するような人が少ない気がする。だからこそ、何かしらの想いを持って生きようとしている、compath参加者たちが過ごす土地としてぴったりだと思う。人口8000人の町とは思えないくらいのパワーや濃さを持っている。ぜひ、気になる人は一度訪れて欲しいなと思う。

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