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【プロジェクト紹介】 「子ども目線」で通学路の安全点検地図づくり

立正大学データサイエンス学部 教授 原田豊

私たちが開発した『聞き書きマップ』というアプリを使って、「子ども目線」で通学路の安全点検地図を作る取り組みについて紹介します。

 小さな子どもが事故や事件の被害にあう、いたましいできごとが、なかなか後を絶ちません。私たちは、こうした事故や事件を防ぐ取り組みをお手伝いするために、『聞き書きマップ』という、誰でも簡単に無料で使える安全点検地図づくりアプリを開発してきました。最近は、小学生がこのアプリを使って、「子ども目線」で通学路の安全点検地図を作る取り組みが始まっています。

■『聞き書きマップ』とは

 この『聞き書きマップ』には、スマートフォン版とパソコン版があり、この2つを組み合わせて使えるようになっています。つまり、地域の安全点検活動を行う際には、スマートフォン版(アイフォン用またはアンドロイド用)を使って手軽にデータを記録し、そのデータを地図の形にまとめる際には、パソコン版の大きい画面をフルに使って作業をするわけです。この2つを組み合わせた『聞き書きマップ』の構成を、図 1に示します。

図 1 『聞き書きマップ』の構成:パソコン版とスマートフォン版

■「子ども目線」の通学路点検の取り組み

 『聞き書きマップ』の最大の特色は、安全点検まちあるきなどで気づいたことを、その場で音声で記録することです。そのため、少し練習すれば、小学生でも十分に使うことができます。この特色を生かして、小学校の児童たちが、自分たちの通う通学路を「子どもの目線」で点検する取り組みが始まっています。
 この取り組みを今とくに熱心に進めてくださっているのが、千葉県八街市です。八街市では、2021年に起きた通学路でのいたましい交通事故がきっかけとなり、全市をあげて通学路の安全を守る取り組みを進めています。その一環として、小学生が『聞き書きマップ』を使って、自分たち自身の目線で通学路の危険な場所などを調べて地図にまとめ、下級生に知らせたり、地域の大人たちに伝えたりしています。そのようすは、たとえば、下記のNHKの情報サイトなどでも紹介されました。

通学路での事故減らしたい 安全点検は子ども目線で 千葉・八街
(NHK 首都圏ナビ)

NHKの情報サイトで紹介された小学生による通学路の安全点検の取り組み

■ 学年を越えた体験学習への展開

 さらに今年は、こうした地図づくりの取り組みの成果を、学年の違いを超えて共有する活動が始まっています。たとえば、八街市立八街北小学校では、4年生と3年生の全児童が体育館に集合して、『聞き書きマップ』を使って4年生が作った安全点検地図を、4年生たちが3年生に説明する発表会が行われました。そのようすを図 2に示します。

図 2 八街北小学校での通学路安全点検地図発表会から

■ 研究成果の「社会実装」に向けて

 私たちにとって、小学校などでのこうした取り組みをお手伝いすることは、私たち自身の研究成果を「社会に実装」するための、大切な一歩となっています。大学などでの研究の成果を論文として発表するばかりでなく、社会の安全・安心を守る取り組みを進めてくださっている「現場」の方々に、直接役立つ形で届けることが必要だと考えているからです。そのためにも、現場の方々から「学ぶ」姿勢を常に忘れず、「現場とともに進む」ことをめざすべきだと思っています。
 今後は、私が担当するゼミの学生諸君とも手を携えて、大学の教室の中だけではなく、広い社会のさまざまな現場から生きた学びを得ることを目標に、こうした活動をさらに進めていきたいと考えています。

【参考文献】
[1] 原田 豊, 2022,「「子ども目線」による通学路の安全点検の試み ― 千葉県八街市での取り組みを例として ―」『交通安全教育』: 6-15.
[2] 原田 豊, 2023,「ミクロな地域社会研究への地理空間情報技術の応用:QGIS プラグイン版『聞き書きマップ』を例として」『理論と方法』 38(1): 126-141.

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