見出し画像

映画メモ49「SABAKAN」

どうせ泣くから観たくなかった。

映画『サバカン SABAKAN』 大ヒット上映中! (sabakan-movie.com)
サバカン SABAKAN | キノフィルムズ (kinofilms.jp)


小学生の頃のキラキラした夏は
きっと誰にでもあって。

私は誰も知らない、何もない祖母の住む田舎で
ずっとぼんやりしていた夏。
風の色や、空気の匂い。

ひとりでいても変だとも言われない。

海を眺めて、干からびたミミズをまたぎ、
牛さんに挨拶をして、水の少なくなった川を見る。
なぜか私にとってのキラキラした夏はそれだ。

そこに「友達」はいない。

人間は嫌いじゃない。
だけど、疲れていたのだ。
集団に。
そんな小学生だった。

かわいくない。

この映画の中にいる小学生男子は
今もいるんだろうか。

私はいつも
「またね」
と言いたい。

大事な友達に
「またね」
と言う。
「またね」だけで、
分かってくれるし、
彼女(彼)の言う「またね」の意味も分かる。
言ってみれば「またね」だけで泣いてしまう。

私に「友達」は多くない。
夏休みはいつも祖母の家にいたから
基本、夏休みの思い出はひとりだ。

友達?と一緒に過ごしたといえば15の夏だ。
児童相談所の一時保護所で
たくさんの子ども達と過ごした。
ご飯を食べてマラソンや盆踊りや、セミ採りをして。
私は安心して生きることをして
すっかり太った。

にこやかに笑う丸くなった私を見て
やさぐれた私を見ていた中学校の先生が面会で泣いたほど。
「こんなことで、泣くんだ」
と驚いたけど、私も今なら泣くと思う。

今の私はきっと、酸っぱいミカンを渡すだろう。

15歳の夏を一緒に過ごした人たちと
私は連絡を取れない。
そういう決まりだ。
みんな、どこにいるんだろう。
元気だろうか。
今もたまに思い出す。
施設に行った後、どうだっただろう。
もうすっかりおばさんだ。
男女分かれていたし交流することもなかったので
男子の方はさっぱり知らないけれど、
あの夏を一緒に過ごした人たちが幸せでいてほしい。
友達、と言えないかもしれない。
すれ違っただけかもしれない。
だけど、1か月以上、寝食を共にし
これからどうなるんだろうと不安を話し合っていた。
名前ももう怪しい。
でも幸せでいてほしい。

おしまい。


よろしければ投げ銭をこちらへお願いします。 投げ銭をくださるあなたにも私以上の喜びがありますように。