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複業時代の死なない経営

ぼくは今、3つの事業をやってます。

・建築設計業(さんかくデザインラボ)
・ギャラリー運営
(ギャラリー八角)
・コミュニティスペース運営
(かもがわクリエイティブベース)

しかも、基本的にすべて一人で。最近、ようやくスポットでバイトを雇ったりするようになってきたものの、それでも基本は一人です。

メインに据えているのは設計業。独立以来、安定して利益を出していて、それを原資にギャラリーを始め、ギャラリーが収支トントンまでいけたタイミングで、新たな事業としてかもベース(かもがわクリエイティブベースの略称)を始めました。

設計業は、この一年、自邸づくりとかもベースづくりに時間を割きまくったために売上を落としていますが、来年の売上はすでにそこそこ目途が立っており、復調することが確定的。ギャラリーはアルバイトを入れ始めたけど収支トントンをキープ。かもベースも、開業から半年足らずで、月ベース黒字に転換しました。今のところ、すべて順調と言っても良い出来だと思います。

目を見張るような大きな成功を為しているわけではないものの、よくそんなにいろいろできるね、と感心される(呆れられる?)ことが多いのも事実です。実際、そのへんの人より頑張ってる自負もありますが、何も考えずにガムシャラに頑張ってるだけだったなら、すでにどれかの事業、あるいはぼく自身が潰れてしまってるとも思います。今日はそのあたりの考え方について、「死なない経営」ということで書いてみます。

これは有料級かも、、


設計業:ライスワークとライフワーク

まず、建築設計業。ぼくがやってる設計の仕事は大きく分けて2種類。ライスワーク的に収入を確保するための設計と、割に合わないことも多いけど、ライフワークとしてやりたい設計

ライスワーク的な方は、独立前から繋がりのあった工務店からの仕事です。年に4~5件程度、工場建て替えといったプロジェクトの概要設計依頼があります。そのプロジェクトが成立するかを判断するための、概算見積り作成のための設計です。これについては営業活動と捉えて無償で対応しており、そのうち1件程度が実際に動き出します。

事業投資的な側面が強いプロジェクトばかりなので、デザイン要素は低く、誤解を恐れず言ってしまうと、機能を満たして建築確認申請を通せばいいんでしょというもの。注文住宅ほどのきめ細かい打合せは不要なので、最低限の図面だけ揃え、あとは工務店にほぼお任せ。監理も要所を確認するのみ。割りのよい仕事と割り切っています。

こうした仕事は、上記工務店以外からも単発で入ってきたりします。細かい納まり検討や、壁紙などの仕様決めの打合せは工務店側に行ってもらうことを最初に条件として決め、ぼくじゃなくてもできる仕事は可能な限り他者に振るようにしています(これは最近、ようやくできるようになってきたこと)。それで効率的に最低限の収益を確保した上で、やりたい設計の仕事をやります。

やりたい仕事は、ぼくレベルではそうポンポン入ってくるものではないので、年1~2件程度。今後もやりたい仕事を受注できるかどうかは、この仕事のクオリティにかかってくるので、割りが悪くても全精力を注いでいます。年2件までなら、完全にかぶりさえしなければ、まだ余裕をもってこなせます。

とは言え、一般的なサラリーマンの仕事量に換算するなら、ここまでですでにリソースを使い切っているかもしれません。建築設計だけでも一般的にはブラック労働を強いられる世界なので、さらに2つの事業を一人でやるには、いくら効率化しても、やっぱりプラスアルファの頑張りが必要。これはもうしょうがない。笑

ギャラリー運営:リスクを極限まで削る

ギャラリーの経営を考えたときに、最も注意を払ったのは、固定費を可能な限り小さくすること。当たり前ですが、限られた資金の中で運営を継続していくためには、垂れ流すお金を最小限にとどめるのが不可欠です。固定観念にとらわれないよう、想定され得る経費一つ一つについて検証していきました。

経費に占める割合が大きいのは、大抵の場合は人件費。ギャラリーで商品を売ることを軸にするとなると、店頭にスタッフが必要です。でも、ぼく自身は本業が別にあるので、ずっと店頭に立つなんてことはできない。では、人を雇うとして、その経費を回収するためにどれだけ売上をあげないといけないのか?

アルバイト一人を時給900円で1日8時間雇ったとすると、月20日営業としても、14万4000円が毎月の人件費として発生します。これを物販で賄うには、どんなに少なく見積もっても月に50万円くらいは売上がないと難しそうです。でも、素人が始めるギャラリーで毎月50万円の物販売上なんて、まったくイメージできない。なので、人を置かないという選択をしました。

ぼくがギャラリーでやりたかったのは、好きな作家さんの展示会やイベントでした。それだけなら、そんなに頻繁にやるものではないですし、開催日数を絞ってしまえば、人を雇わなくても自分がギャラリーに立つことで完結させられます。そして、それ以外のとき、展示会が行われていないときは、スマートキーとセキュリティカメラによる遠隔操作のレンタルスペースにしました。こうすることで、最初の設備投資さえ済めば、あとは家賃など最低限の経費項目しか残りません。

その結果、毎月の固定費は、家賃を入れても10万円程度になりました。売上10万円で収支トントンです(自分の人件費は除く)。人を雇った場合よりも採算を合わせるのがずっと簡単で、売上が立たなかった時のダメージも小さいので、死ぬ確率が下がる。

また、「仕入れを伴う物販」を行うことも避けました。仕入れをするということは在庫を抱えるということ。売れなかったら仕入れ分の損失が発生するし、在庫しておくための場所も必要です。売れないもののためにアレコレ考えなければいけないのは本末転倒。リソースがもったいない。だから在庫を持たずにできる運営方法という条件で考えたわけです。

こうして一つ一つ固定費を削り、リスクを消していった結果、初期費用に150万円ほどかかった他は、開業初期でも月に2~3万円を自分の懐から出せば経営を維持できる体制が整いました。そのくらいの出費であれば、趣味と思って出せないこともないですよね。初期はよく「趣味:ギャラリー経営」と言ってました。笑 お小遣いで趣味として始めた副業といった感覚になるので、気負う必要もありません。

コミュニティスペース運営:短期的売上を捨て信頼関係を築く

コミュニティスペース・かもベースも、基本的にはギャラリーと同じ発想で運営しています。こちらは場所づくりに初期費用がそれなりにかかっていて融資も受けているので、ギャラリーよりもリスクは取っているんですが、固定費は限りなく小さく抑えています。

常駐の管理者を入れると、それだけで経費が圧迫されるので、まずは人件費をゼロにする方法を考えました。コミュニティスペースという特性を考えると、普通はだれでもウェルカムとするところですが、かもベースは会員制として、入会時にはぼくが書類選考と面談をする仕組みにしています。会員制にすると、ドロップインなどの気軽な利用ができなくなるので利用者が減り総売上も減りますが、頻繁に利用説明をする必要がないので常駐管理者は要らなくなるんです。

また、顔見知りになった上で利用してもらうので、利用者のマナーも必然的によくなります。顔が見えないと、ひどい使い方をする人がたくさんいて、そのフォロー(掃除や近隣クレーム対応)が大変だということを、ギャラリー運営で痛いほど学びました。笑

さらに、「会員はお客様ではなく、一緒に場をつくっていく仲間である」というコンセプトの元に、消耗品の補充やゴミ捨ては会員のみなさんも手伝ってくださいねという形にしています。その分、会費は他の同様の施設よりも安め。つまり、少しの売上を捨てることで経費も抑えているということです。

まぁ、これはこれで、会員とのこまめなコミュニケ―ションや、会員同士の交流を促すイベント運営も必要なので、簡単ではないんですけどね。

死なない経営:スモールスタートから改善を積み上げていく

死なない経営とは、経費を可能な限り圧縮して、スモールビジネスから始めること。最初から大きな成功は望めませんが、ぼくは大きな成功を目指しているわけじゃないので、死なずに継続することの方がずっと大事なんです。

それに、死なずに続けていれば、じわじわ伸びていくことも実感しています。伸びてきたら、少しずつリスクを大きくしていけばいい。

最初はレンタルスペースの予約対応や、会員希望者への対応にも時間をとられてましたが、回数を重ねていくと定型文ができてきますし、生じる課題に対する傾向と対策も見えてきます。

例えば、ギャラリーで言えば、スペースレンタルの経験を重ねて、起こりやすいトラブルについての注意書きと、違約金について明記した規約を、利用者に対して事前にテキストで送るようになりました。そうすると、トラブルは目に見えて減ってきましたし、トラブルが生じても、利用者から違約金を取れるのでダメージを軽減できます。

改善を重ねていくことで、業務も体系化・効率化していけます。業務を体系化すれば、仕事を外注しやすくもなります。実際、ぼくはギャラリー運営3年目にしてアルバイトを入れ始め、自分の仕事を減らしながら、それでも赤字にならない経営ができてきています。かもベースも、掃除の外注を入れるなど、ぼく自身の負担を下げるフェーズに入ってきています。

負けない条件:場所の力に頼る

最後に補足的に一点。死なない経営の考え方と同時に、負けない条件でスタートすることも重要だと思っています。

ぼくの場合の負けない条件とは「場所」。ギャラリー八角も、かもベースも、場所の力が圧倒的に大きいんです。誰が見ても絶対いいよねという場所を借りています。どちらも、始めようと思って始めた事業じゃありません。いい物件を見つけちゃったので、そこで何ができるかを考えたらこうなったんです。笑 やりたいことありきで、物件は妥協して選ぶという経緯で始めていたら、もっと努力が必要だったろうと思います。逆に、ハードがよければ、ソフトが多少ズサンでもいけちゃうってことですね。

負けない条件と、死なない経営が揃えば、そうそう潰れることはないでしょう。この記事を読んだみなさんには、数年後のぼくがどうなってるのかを見て、さらに検証を深めていただければと思います。(飽きたって理由で辞めてないことを願います。笑)

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