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マンションリノベの定番になるべき名案

今日は、タイトル通り、マンションリノベを行うときの定番として普及してほしいことについて書きます。

名案と書いてますが、ちょっと考えれば、ああそうだよなとわかること。でも意外と誰もやってない。ぼくの自邸でも採り入れており、訪れる人の評判もとてもよいです。なにより、ぼく自身がこれやってよかったなぁと心から感じています。

結論から言うと、玄関扉に内扉を設けること。写真を添えながら解説していきます。


断熱改修は「二重窓」がコスパ最強

まず、前段となる話をしておきます。

ここ数年、政府からの断熱改修への補助金が手厚くなってます。その改修内容の代表格は、二重窓。一般的にも「二重窓」の概念が浸透してきており、実際に二重窓を設置されているお宅もかなり増えてきました。

二重窓はもっともコスパの高い断熱改修であると言えます。屋内外の熱の出入が一番はげしいのはガラス面であり、そこを二重にしてあげるだけで、文字通り、肌感覚で違いを感じられるほどの効果があります。

LIXILやYKKなどの大手メーカーが、既存窓の内側にオーダーサイズではめ込める二重窓製品を出しており、コストも1か所あたり5~10万円レベルで施工可能です。補助金を用いれば、もっと割安になります。とにかく安価に断熱性能を上げたいという場合はこれで十分。かなり満足度の高い改修になると思います。※普通にググってトップに出てくるような業者はあやういので信頼できる人に依頼しましょう。

既存窓の内側に、YKKの二重窓製品を入れている様子

一方で、ぼくがデザインにこだわる際は、このような既製品は用いず、造作の木製建具で二重窓とします。少し割高にはなりますが、アルミサッシの冷たい印象を和らげ、全体に統一感を与えることができます。

こげ茶色の既存窓の内側に、木製建具を入れたリノベ事例

窓に次ぐ断熱上の弱点を克服

そして本題。断熱を考えるときは、まず第一に、二重窓改修を行うのがよいでしょうという前提で、その次の段階です。

マンションの玄関扉は、防火上の規定などもあり、金属製の建具でつくられています。金属ということは当然、熱の伝播も大きい。特に冬場は、ひんやりした空気が玄関扉から伝わってきます。扉と枠の間や、ポスト部分から隙間風も入ってきます。窓に次ぐ断熱上の弱点になっているわけです。

そこを二重窓ならぬ、二重扉とするべきというのが今回の話です。

下の写真は、ぼくの自邸の玄関周りですが、奥に玄関扉が写っています。一見すると、普通の玄関扉に見えますね。(他にいい写真がなく、ちょっとわかりづらいですが、、)

右奥に写っているのが玄関扉(内扉は開けてある状態)

実は、ここの壁面全体を少しふかし(前に出っ張らせ)、その壁の中に引戸を仕込んでいます。上の写真では、建具枠に見える部分の一部が、引き込まれた引戸の戸先になっています。

下の写真が、内扉である引戸を90%くらい閉めた様子。完全に閉めると、玄関扉部分が木製の壁面のように見えます。

既存の玄関扉の内側に、木製の引戸を設置している

このように、玄関扉の内側に木製建具を設けることで、金属扉からの熱の出入をシャットアウトしています。冬場にこの引戸を開けると、ひんやりした空気が入ってきて、断熱効果を果たしていることを実感できます。

外の気配も遮断

ぼくが玄関建具の二重化を行った最大の目的は「断熱」だったのですが、意外な副次的効果を得られています。それが「気配や音の遮断」

マンションは、玄関扉を開けるとすぐに共用部となり、日常的に他人が通行する空間となります。

特に今回の自邸では、玄関空間を他の部屋と分離していません。玄関も含めた家全体を一つの空間としてつなげています。

そうしたときに、扉一枚を隔てて、すぐ向こうに他人が居るというのが結構きもち悪い。実際に、玄関で靴のメンテをしているときなどに、業者の方が廊下掃除に来たときなんかは、掃き掃除の音が丸聞こえ。向こうの音が聞こえているということは、こちらの音も聞こえるということ。なんとなく落ち着きません。

そんなときも、この内扉を閉めておけば、すごく守られてる感があります。隔てが二重になることで、音はもちろん、気配を断ち切ってくれるので、安心感が違います。

デザインに統一感をもたらす

そして、もう一つの副次的効果。こちらは狙い通りでもあったのですが、デザインの統一性です。

木製の内扉を閉めた様子

せっかく他をがんばって設計していても、玄関扉だけ既製の建具が無骨に見えていたら、ちょっと残念ですよね。

この自邸では、棚板や収納扉の面材としてラワン合板を多用しており、建具枠にはベイツガを使っているのですが、この玄関内扉は引手部にラワン、面材としてシナを羽目板風に用いています。

このように、住宅内の他の部分と合わせて、素材・寸法などデザインに統一感をもたせることができるのは大きな魅力です。

玄関扉の二重化、「マンションリノベで」と限定的に書きましたが、もちろん戸建て住宅でも有効です。ただ、戸建て住宅は、玄関扉以外にも屋外と接する箇所がたくさんあるので、玄関扉の二重化だけでは十分な効果を得られないかもしれません。

その点、外部との接触ポイントが少ないマンションでは、わかりやすく効果を実感できるということで、あえて限定的な書き方でご紹介しました。

これ、他の家でやってるの、見たことありますか?ぼくはマンションリノベ専門の建築家が内開きの二重扉をやってるのを見て、引戸という形で自邸に採り入れてみたのですが、他では一度も見たことないです。こんな名案を、なんで誰もやってないのか、不思議でなりません。

めちゃくちゃ効果的だし、そんなにむずかしいことでもないので、今後リノベを検討されている方は、ぜひ採用を検討していただければと思います◎

今回、事例として出てきたぼくの自邸は、ぼく自身の設計事務所のホームページはもちろん、toolboxさんのサイトでも取り上げられていたりします。よかったらのぞいてみてください!


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