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Yahoo! 広告の今まで、そしてこれから|2019年通期、第4四半期決算発表会資料から読み解く

川手@RKawtrです。

4月30日に Z ホールディングスの通期、第4四半期決算発表会があり、資料が配布されました。本日はその資料をもとに、いち広告運用者目線で Yahoo! 広告に対して、如何に今後広告運用者が向き合うべきかという点についてお話しできればと思います。

なお使用する資料は下記リンク内「通期および第4四半期決算 決算説明会」の「プレゼンテーション資料」になります。興味がある方は資料も合わせてぜひどうぞ。

 Yahoo! 広告の2019年度成長要因について

まず通期決算資料から、2019年度の Yahoo! 広告成長要因について見ていければと思います。資料を一読した上で、自分自身実際に運用していて、特に下記3点は大きく Yahoo! 広告の成長に貢献しているという風に実感した点をピックアップし、ご紹介できればと思います。また一部は以前Q3の際に書いた note と内容が重複する形となっております。その点事前にご了承いただければ幸いです。全部で3点あります。

成長要因(1)広告表示オプションの強化

資料内でも紹介されている通り、「Q3より導入した表示オプションの改善が奏功」し、前年同期比 + 54億円となっています。

これは1広告あたりの画面占有率(特に1位の広告の画面占有率)がオプションの改善により引き上がり、その影響で従来よりも上部の広告にユーザーが流れやすくなり、結果1ユーザーあたりのクリック単価が結果的に高まった影響によるものと考えられます。

自分はこれ、ほぼ「クイックリンクオプション」の影響ではないかと考えています。以下は、実際の広告掲載時に表示される「クイックリンクオプション」です。

クイックリンク表示オプションは広告の画面占有率を大きく引き上げつつ、ユーザーに様々な選択肢(リンク先)を提供しながら、クリックすることが可能なスペースを提供する広告表示オプションです。

スマホだと最大6つまでリンクを同時表示することができます。

PCも最大6つまでリンクを同時表示な上、それぞれのリンクに対してテキスト形式で補足情報を表示させることも可能です。

特にスマホ関連は、これが大きな影響を与えているのではないかと考えられます。以下は画面占有率がどの程度クイックリンクなどの広告表示オプションの影響で、ファーストビューがどの程度異なるのかを比較したものになります。

より上位の広告がクリックされやすくなっているか、お分りいただけるかと思います。

成長要因(2)PC版ブランドパネル広告の運用型配信開始

PC 版ブランドパネル広告の運用型配信開始も、非常に大きな動きであったのではないでしょうか。

長らく最低クリック単価制(初めは250円、その後撤廃)という、非常に扱いが難しかった広告枠でしたが、最終的には最低クリック単価が撤廃され、通常の運用型広告の枠と同様に広告配信できるようになったことは非常に大きな動きです。

Yahoo! 側にとっても PC 版ブランドパネルを運用型配信の広告とするメリットは、単純にブランドパネル広告の広告在庫数に対して、様々な広告のストックを潤沢に確保できるに留まらず、将来的に「ブランドパネル」に対する理解を深め、他の「Yahoo!プレミアム広告」の運用を検討してくれる可能性のある運用者を市場に、低コストで産み出すことができるという点において、非常に大きなメリットある戦略ではないかと考えられます。

また当然広告運用者にとっても、予算面で提案のハードルが高くないにも関わらず、良質な広告枠に広告配信できるということは非常にメリットとして大きく、Twitter などを見ていても、積極的に提案し展開するケースが非常に多く散見されました。

ブランドパネルを広告出稿できるということは、 PC のみとはいえ、Yahoo!  トップページ右側の非常に大きな広告枠に広告を表示させることができるということです。これは特に中小企業にとって、単純な広告効果に留まらない、また別に大きな意味を持ちあわせます。

また単純に広告枠としても、広告誤タップ・クリックが起こり難いという点、リマーケティングやサーチターゲティングといったあらゆる広告配信メニューに対応しているという点、月額の予算制限がないという点、とても魅力的です。加えて2019年10月より、 PC 版ブランドパネル広告枠で動的リマーケティングの配信も実装されました。この動きも PC 版ブランドパネル広告枠の活用を後押ししたように思います。

成長要因(3)ソフトバンク顧客に対する営業活動

資料には「下期」と記載ありますが、おそらくQ4からの動きではないかと思います。Yahoo! が Yahoo! 自身の既存顧客支援(出稿の新規提案・プランニングの提案)を開始しました。またそれ以外にも「ソフトバンク顧客に対する新規広告出稿の提案」を展開しています。前者は業務委託で別会社が支援を行ったようですが、後者についてはどのような形で展開されたか記載がありませんが、ソフトバンクの支援もあり、良質な顧客リストを手にし、 Web 広告の効率的な営業活動ができたのかもしれません。ここでは44億円のアップリフト効果が起きています。3,410億円のうち44億円ですから、数値だけ見ると全体の1.2%程度のインパクトでしかありません。しかし、Q4の初動の数値ということを考えると、今後の伸びしろにも期待が持てます。

ここまでが、2019年度の Yahoo! 広告成長要因について、資料に記載されていた中でも自分が特に気になった点をまとめたものになります。

如何に広告運用者がYahoo!広告と向き合うべきか

資料の中でも言及されている通り、「検索連動型広告・ディスプレイ広告ともに力強く成長」しています。その認識は正しいと思います。しかし一点気になったのは COVID-19 (新型コロナウイルス感染症)の影響です。

例えば「検索連動型広告」について、以下のような記載があります。

新型コロナウイルス影響による出稿減(Q4 -27億円)

検索連動型広告はこのような状況でも「検索しうる層」、つまりは顕在層への効率的な広告投資が可能な施策であり、コロナの影響があったとして停止するのは最後の最後という認識です。

しかし、イベント・交通・エンタメ・映画などといった広告はすでに営業停止に伴い広告を全停止しているケースが多く、そのためマイナスが色濃く出ているものと考えられます。

結論から申し上げますと、自分は2020年度は通期で見た際、このままのペースで行くと広告面においては、かなり苦しい戦いを Z ホールディングスは余儀なくされるのではないかと考えられます

出稿減の影響が出たのは2月に入ってからでしょうから、今後 Q あたりで-35〜60億はマイナスが生じる可能性があるように考えられます。もちろん逆にプラスに転じる企業も多く出てくるかとは考えられますが、マイナスの影響の方が大きいはずです。

しかしながらそれに伴い、 Yahoo! 広告内部で色々と良い変化が起こる可能性が高いのではないかと考えています。Yahoo! は Z ホールディングス化に伴い、ソフトバンクG という強力な営業力を手にしました。その結果、2019年度は大きく全体成長が見受けられました。しかし、現在のような状況下では前年と同じように成果を出すのは難しいのではないかと考えられます。そのため Yahoo! 自身が、消費者同様に財布の紐がキツくなった企業ですらも広告出稿したがるような、理想的な広告配信プラットフォームづくりに今まで以上に注力していくような形になるのではないかと考えられます。

Z ホールディングスの指針は、次の通りです。

情報技術のチカラで、すべての人に無限の可能性を

おそらくこの指針を力強く示していくのが、2020年度の主な動きになるのではないでしょうか。

では今後具体的にどのようなことが起こりうるのかという点について、3つ予想を記載したので下記にてそれらを解説していければと思います。

予想(1)消える広告主とそれに対する対策が急ピッチで進む

現時点で予定されている大掛かりな移行とはまた別に、昨年の「 PC 版ブランドパネルの運用型配信開始」のような策を3〜4つ展開してくるのではないかと考えています。

交通系・エンタメ・イベント系の広告出稿減は収束後もしばらく続くことが予想されますので、その穴を埋めるための期間限定での予約型の運用型移行、新しい広告メニューの登場などが想定されます。

運用者はこれに対して迅速な対応ができるよう、日頃から情報収集しておくなど、準備を進めていくことが求められるようになってくるはずです。

予想(2)小さなアップデートが小刻みにくる

例年以上に小さなアップデートは小刻みにくることが予想されます。

直近だと検索広告における「【】」の入稿が可能となる変更がありましたが、そのレベルのものが月1レベルでくるんじゃないかと思います。

ただ思った以上に管理画面移行に工数がかかっているのか、「タイトル3」と「説明文2」の追加変更が無期延期されたりもしているので、もしかすると後半でまとめてくる可能性もあるかと思います。

自分の記憶違いでなければ、「【】」については事前に特に強くアナウンスなどはされていなかったのではないかと思います。朝令暮改という訳ではありませんが、前述した「タイトル3」と「説明文2」の追加変更のような大規模なものはさておき、ある日突然「来週仕様変更あります」といった仕様変更・アナウンスが今後も続出するのではないかと思います。(1)同様、広告運用者はこれに対して迅速な対応ができるよう、日頃から情報収集しておくなど、準備を進めていくことが求められるようになってくるはずです

予想(3)より人に寄り添う形にシフト

資料にも記載ある通り、Yahoo! はアドフラウドの影響で通期で20億円のマイナスを見積もっています。またそれ以外にも商材・サービスによっては広告配信を制限していたり、広告の表現もより厳しく取り締まるようになったりと変化してきています。この影響は短期的に見ると売上のマイナスに留まりますが、社会全体の Web 広告に対するイメージや、それらを野放しにせざるを得ない状況などを鑑みると仕方がないことではないかとも思えます。むしろ逆にここで手を打っておくことは、非常に得策的な動きではないかとも思います。社会の Yahoo! に対するイメージをより良いものにしておくことは広告媒体として、決して裏目に出ることはありません。

広告の向こう側にいるのはリアルな人であり、そういった人たちの声に耳を傾けシステムをより良い形にしていく動きは今後ますます加速度的に増してくるのではないかと考えられます。

媒体の特性や考え、意向を考慮した広告運用が運用者には今後ますます求められるようになってくるはずです。

余談

前述した通り、自分は広告は2020年度は苦戦を強いられることになるのではないかと予想しています。しかしその反面で広告以外の分野、特にショッピング・金融は大きく伸びるのではないかと考えられます。特に「

ZOZO を本当に傘下にしたんだ...と実感します。

PayPay は自社 EC でも利用可能ですので、これが通常の EC などでも利用可能となれば、大きなインパクトがあることは間違いありません。

収束後の経済活性化や、価値観の変化に備えて今はコツコツ仕込みの時期ですね。

最後に

コロナ収束後も消費の回復にはしばらく時間がかかると考えられますし、消費形態変化や「 Web 」に対する一般認識についても、大きく変わるものと考えられます。それらに備え、初めは牛歩に見えるかもしれませんが、 Yahoo! を含む媒体各社は広告システムの改善や見直しを図るはずです。

媒体の出す情報をチェックし、アカウント、商材と照らし合わせて迅速に対応を進めていくことが将来的に運用型広告で大きな成果を出すためには、今必須の動きとなってくるのではないでしょうか。

@RKawtr

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