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栃木SC戦は本当に「退屈な試合」だったのか?

 みなさんこんばんは、アンドレイ・コピィロフです。

 今回はこんなタイトルにしてみたわけですが、まあ結論から先に言いますと客観的に見ると80分以降は確かに退屈だったと思います(初っ端からタイトルを否定していくスタイル)。

 ただですね、では最初から最後まで退屈な試合だったのかというと実はそうでもなかった。試合内容を深く見ずに「レノファ縦ポンばっかやなあ」と切って捨ててしまうのも勿体ないですし、逆に栃木SCに対して「ワンチャンスをモノにして守り切った」とあっさり片付けるのも勿体ない。

 ですので、試合の段階を区切りながら、両将の頭の中に分け入ってみよう。(ナレーション:松重豊)


 まず両軍のスタメン、フォーメイションがこちら。

 栃木は前節で[5-4-1]を採用していましたが、途中から4バックに変更して逆転勝ち。そのこともあって、レノファ対策よりも自分たちの形を出すことを優先した布陣と思われます。
 対するレノファは前節に引き続き[4-2-1-3]のダブルボランチ。[4-1-2-3]の中盤逆三角形はしばらく封印ということでしょうか。

■なぜレノファの攻撃は「左」に偏ったのか?

 まずもって、DAZNの試合スタッツを見るとレノファの攻撃は66%が左サイドと、かなり偏っていました。「左からばかり攻めているのでは…?」という感想も多かったと思います。これには理由がありまして……

 栃木の守備方針として、⑩⑭西谷ツインズはレノファ戦術の根幹である⑥前さんと㉙みゆきちをがっつりマークしていました。これが「⑭吉濱に持たせる」狙いだったかは分かりませんが、前・三幸に対して最大級の警戒をしていたということでしょう。攻撃は自然と左サイドから始まることが多くなり、右を向くと前・三幸へのマークがきつい。吉濱は左利きということもあって左への展開が多くなったという顛末です。パス本数も三幸84本、吉濱121本と普段と逆転現象が起きていました。

■ゴール期待値の高い「ニアゾーン」 #とは

 ところで、この試合で私が注目してみたのが「ニアゾーンへの侵入回数」です。

 ニアゾーンというのは上図の黒い部分、簡単に言うと「ハーフレーン(ハーフスペース)のペナルティエリア内」を指します。この陣地を押さえると得点の可能性が高くなると言われるゴールデンボ……ゴールデンゾーンですね。二〇三高地みたいな。

※ハーフレーン(ハーフスペース)についての解説は割愛しますので、下記のブログなんかを参考にしてみてください。。。

 ニアゾーンを狙った得点の例としては、昨年の徳島戦(やっさんに最後にやられたやつ)が分かりやすいと思いますので動画をご参考ください。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、ニアゾーンの攻防に注目しつつ、試合を15分ごとに分割して振り返ってみましょう。

■試合開始~15分

◇ニアゾーン侵入回数:山口3回/栃木0回

 序盤戦は完全なレノファペース。ピンチらしいピンチはありませんでした。

 ひょっとすると単純なロングパスに見えたものもあったかもしれませんが「あーここを狙ってるぽいなあ」というのが見て取れ、栃木DFもちょっと嫌がっている感じがありました。ちなみに侵入回数としてカウントするかどうかは完全に私の主観です。

■16分~30分

◇ニアゾーン侵入回数:山口1回/栃木1回

 この時間帯から少し停滞してきます。 

 田坂監督のハーフタイムコメントに「守備のスライドを続けること」というものがありましたが、DFラインがスライドしたり、ボランチが間に入ったりして栃木も徐々に対応。レノファのチャンスは減ってきますが、19分25秒のシーン(⑲工藤ちゃんが詰めてGKの手を蹴ってしまったやつ)は狙いどころが出た攻撃だったのかなと。
 逆に栃木の侵入回数1回はPKゲット時のもので、見事得点につながりました。このシーンのレノファの守備対応について、大きくスペースが空いてしまったエラーの原因はと言うとチームの決め事にもよると思いますが、個人的には攻撃型ダブルボランチの弱みが出てしまったのかなと思っています。

■31分~46分

◇ニアゾーン侵入回数:山口0回/栃木3回

 リードされて前掛かりになったレノファはカウンターを食らう場面が増え、栃木に何度も危険ゾーンに侵入されることに。ちょっと悪い流れで前半を終えます。初スタメンでよく頑張っていた㊾菊池りゅうほダビッドソンですが、ポジショニングに何度か不安がうかがえました。

■後半開始~60分

◇ニアゾーン侵入回数:山口3回/栃木0回

 後半ギアを入れ直したレノファは栃木を釘付けにすることには成功しますがなかなか決定機を作れず。得点の匂いが出てきたのは56分に⑦田中じゅんいちさんが入ってからでした。

 栃木がかなり引き気味になったので、システムを変更して前への圧力を高めます。

■61~75分

◇ニアゾーン侵入回数:山口1回/栃木0回

 攻勢を強めるレノファに対して、これはたまらんと思ったか田坂監督がすかさず動きます。

 ⑭西谷兄に代えて㉚和製カン・スイル(見た目が)田代を投入し、5バックにして城壁を築く方向へ。この時点でかなり「守り切る」を意識したと思われます。「クロスに弱い」というデータのあった栃木ですが、この田代選手(訳あり)は空中戦で最後まで威力を発揮していました。
 このあとレノファは⑧シン・タクミに代えて④決戦兵器高井を投入。栃木は72分に㊵ゲームメイカー寺田を⑤高さとパワーのヘニキに交代していよいよ塹壕戦に突入します。

■76分~試合終了

◇ニアゾーン侵入回数:山口2回/栃木0回

 攻勢には出ているものの、栃木の塹壕戦に決め手を欠くレノファ。78分に⑬楠本を投入してパワープレイに突入。かつての宮城大作戦を上回る「菊池四九号作戦」が発動されました。

 ロングフィード能力を活かしての「発射台」を期待されて投入された楠本ですが、これが意外となかなかいいボールが入らない。パウロのクロスも引く弾道のものが多く、作戦時間ほどチャンスが作れず。0-1のままタイムアップとなります。

■あとがき

◇ニアゾーン侵入回数合計:山口10回/栃木4回

 ニアゾーン侵入回数にも見て取れるように、なかなかいい形のアタックが出来ていたレノファ。しかしながら速さ、精度などが紙一重で足らずに、無得点での敗戦となってしまいました。
 これで1勝4敗の21位、まだまだ序盤なのですがレノサポさんは熱くてピュアすぎるために不安・不満が溜まっているご様子だったのでお便りを募集してみましたが、多少は留飲を下げていただいたでしょうか。

 わたしとしては「ポテンシャルは間違いなく高いが、もうちょっと時間が必要では」とスタンスですのであまり結果に一喜一憂せずに見守っていきたいと思います。

 本日は間もなくFC琉球戦。4勝1分けと好調な相手ですが、逆に無敗チームを倒すことで上昇気流に乗れるといいですね!


 あ、それとやはりパワープレイは武器になりそうな感じはあるので、ぜひとも国際ロングボール学会に入会して研鑽を積みましょう(・∀・)


それでは皆さん、Até breve, obrigado(・∀・)

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