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ぼくをかたどる陰影について(留年へ向けた覚書)

(pdfで読むことをおすすめします)  はじめに書いておきたいのは、この文章は、かなり長くなるはずだ。すごく長い。とても長い。そのうえ、なんとなく長いわけじゃない。ここには分量相応の重みがある(はずだ)。書くのがつらいのと同時に、読むのもつらい。非常につらい。そんなもの、いったい、誰が読むのだろう? わざわざつらい気持ちになる必要なんか、どこにもないのに。でも、この先ぼくが書くことになる文章は、あくまで「読むのがつらい」文章であって、「読みづらい」文章ではない……はずだ。ぼ

    • 演劇における極私的三大元素

      はじめに 以下の文章は正統な演劇教育を受けずに育った、アウトローの立場に身を置く者の独り善がりな(タイトル通り「極私的」な)感想録である。  「自分のことをいちばんよく知るのは、いちばん近しい他人である(Who knows you best is your closest stranger.)」という有名な格率の通り、演劇文法(それが果たして文法と呼べる程に洗練された代物かどうかはひとまず無視して)に毒された人々からは永遠に見通せない「何か」がそこにはあるはずだ。全員が専門

      • 【西日本周遊】一日目 上方落語のリフレイン、最後の遊郭

        はじめに長い休日、それも十日を超える休みは滅多にとれない。 外遊びに明け暮れた小学校の夏休み。午後5時のチャイムが街中を響かせた後に残す寂しさ。心なしかセミの鳴き声もしんみりと聞こえる。 みずみずしい期待に満ち溢れた中学校の春休み。電車やバスは僕らに都会を教えてくれた。大人へ向かって心も身体も成長していく確かな実感。 仄かにメランコリックな高校の冬休み。終りが着々と近づいてくる。制服を脱いでも大人になれるかわからない、その自意識の辛さ。 休暇の記憶はかつての情緒を呼び

        • 大学生、人生の旅人(2. 西日本周遊)

          しばらくぶりの更新。 十日間に渡る西日本旅行をしてきました。その旅行記を「一記事につき一日分の行程」の配分で更新する予定です。数週間くらいかかりそう。お楽しみに。 一日目(大阪・天神橋) 徹夜からの自宅スタート。成田発-関空着のLCCで大阪に着弾。上方落語を観たのち、5日間お世話になる西成の根城へ。夜は飛田新地散歩も。 二日目(大阪・梅田) 本日の目玉は円城塔・田辺青蛙夫妻のトークイベント。このために今回の旅行を企画したといっても過言ではない。帰り道、国立国際美術館

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        ぼくをかたどる陰影について(留年へ向けた覚書)

          大学生、人生の休暇(1.青山・乃木坂)

          注:この記事は約10000字です。時間の無駄かもしれません!! 2021年12月12日 日曜日 9:54 ~ 20:28 1.1. 霊園の記憶東京に触れる 誰もいない、名もなきハイウェイをただひたすら走り続ける。 キュートでレトロな「パブリカ」、超低燃費の新発売「AQUA」、そして、エンジンとモーターを併せ持つジャパニーズテクノロジーの結晶「プリウスPHV」。 これらは全て自分の愛車であり、ぼくは度々、放課後のゆったりとした空気の中、一人きりのドライブを楽しんでいた

          大学生、人生の休暇(1.青山・乃木坂)

          「バカ」を徹底的に描く -『チェネレントラ』を観て-

          はじめにふた月ほど前(2021年10月6日)に観たオペラ『チェネレントラ』の感想を今更ながら書いていく。 思い立ったが吉日とはよく言ったものの、この諺はいささか当人の自主性に賭けすぎており、そもそも思い立てない人々を見殺しにしている点から少々不親切である。 「思い立てない」当事者としてはちょっぴり悲しいので、無理やりにでも記憶を捻り出すことによって、自動記述の流れるままに何か新しいものを(再)発見していきたい。 『チェネレントラ』概要『チェネレントラ』は、当時25歳のジ

          「バカ」を徹底的に描く -『チェネレントラ』を観て-

          大学生、人生の休暇(0. プロローグ)

          0.0. プロ・プロローグ桜並木とビラ配りに始まる華やかな大学生活への期待も虚しく、振り向けばそこは枯葉と紙屑の山であった。 「夢は叶わないから夢である」誰かがそう語る。夢を叶えた者たちをこれまで何人も目にしてきたが、人間の欲望は果てしなく都合良く、その都度目移りするものだ。つまりこの台詞は半分正しく半分間違い。スペアではなくストライクとガーターが共存している、そんな感じ。 そもそも人間の言葉に完璧など求めてはいけない。放たれた言葉はたちまち身体を離れ、宙へと浮かび迷子に

          大学生、人生の休暇(0. プロローグ)