佐藤蓼丸

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佐藤蓼丸

https://suesuo.blog.fc2.com/「多次元飛行船」も併せてご覧ください。

マガジン

  • 私的タイプ論のための基礎知識「しくじり先生」世界編

    「私的タイプ論」執筆のために、「今なぜ、世界がこんな風なのか」過去の書物や既存の知識から考察し、断片的なアイデアをまとめてゆく作業をしています。

  • 私的タイプ論のための基礎知識「しくじり先生」日本編

    「私的タイプ論」執筆のために、「今なぜ、日本がこんな風なのか」過去の書物や既存の知識から考察し、断片的なアイデアをまとめてゆく作業をしています。

最近の記事

ダーウィンの個人的事情と進化論の関係

「ダーウィンは、機械化時代に機械的な生物社会の概念を確立したのである。人間社会の闘いを、動植物の闘いに置き換えてみせた。私有財産相続制の社会において、生き残るためにいちばん大切なものは、占有と遺伝であると述べた」➡ ジョフリー・ウェスト『ダーウィン伝』 ジェレミー・リフキン「エントロピーの法則2」21世紀文明の生存原理 1983年11月5日 初版第一刷発行/祥伝社 より 👇 ダーウィンの両親はともに中産階級に属し、思慮分別に富み、安定した財産に支えられ、生活の心配は何一つな

    • 進化論が熱狂的な支持を得た理由

      ジェレミー・リフキン「エントロピーの法則2」21世紀文明の生存原理 1983年11月5日 初版第一刷発行/祥伝社 より 👇 このように、自然淘汰にまかせておけばすべては進歩すると考えたダーウィンは、人種における優劣の差というものに関心を持ち、いつかは劣種が自然淘汰されると信じた。それは、彼の従兄のフランシス・ゴールトンが唱えた優生学論を支持したことでも明らかである。 ゴールトンは、計画的な出産によって「進化の過程を自然の成行きにまかせず、より迅速に無駄なく確保する」ことを初

      • 暗記によって多くの事実を学ばねばならなかった

        ジェローム・R・ラベッツ「ラベッツ博士の科学論ー科学神話の終焉とポスト・ノーマル・サイエンス」2010年12月25日 初版第一刷発行 こぶし書房 ■巻頭言 より 👇 学生時代、私の科学についての認識は、大半の学生と似たりよったりだった。理論は、変化したりせず、正確な予測を提供すると考えていた。私は、暗記によって多くの事実を学ばねばならなかった。その後かなりの年月を経た1993年に、エドモンドソンとノヴァックが米国の大学研究の一環として聞き取り調査をした学生たちと同じように、当

        • 秩序だった、穏和にして平和的なる奴隷制度

          ロバート・N・ベラー「心の習慣・アメリカ個人主義のゆくえ」1991年5月8日発行 みすず書房 より 👇 トクヴィルは、近代社会が自由の喪失へ向かうとすれば、その道筋の一つと なるのが「管理的専制」 ―― ときに彼はこれを「民主的専制」という逆説的用語で呼んでいる―― の出現であろうと考えた。彼の定義によれば、管理的専制とは「秩序だった、穏和にして平和的なる奴隷制度」といったものである。「それが外面的に自由の形態を取ることは、ふつう考えられる以上に容易なことである。・・・それは

        ダーウィンの個人的事情と進化論の関係

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        • 私的タイプ論のための基礎知識「しくじり先生」世界編
          35本
        • 私的タイプ論のための基礎知識「しくじり先生」日本編
          40本

        記事

          嗜癖する社会

          A.W.シェフ「嗜癖する社会」誠信書房 1993年2月20日 第一刷発行/1997年 第六刷発行 はじめに より 私たちの社会は驚異的な速度で堕落しています。巨額の汚職や財政破綻などのニュースが私たちの日常生活の一部になっています。テレビのニュースや新聞を通じて幼児ポ ルノの組織に子供 が誘拐されるのを恐れたり、かかり つけの医者が患者を誘惑した話を耳にしたりします。酸性雨と公害によって地球は破壊され、核戦争による破滅が今にも起 こりそうです。飢餓と戦争は地上に蔓延していま

          嗜癖する社会

          気づいていない人々

          フリッチョフ・カプラ「新ターニング・ポイント/ポストバブルの指針」1995年発行 工作舎 より 👇 ■新版へのまえがき 1970年代に、物理学者として私が抱いていた大きな関心は、今世紀の初めの30年間に物理学で起きた、そして今尚、物質理論の中で、色々手が加えられつつある概念や発想の、劇的な変化にあった。その物理学の新しい概念は、 我々物理学者の世界観に、デカルトやニュートンの機械論的概念から、ホリスティック(全包括的)でエコロジカル(生態学的)な視点へと、大きな変化をもたら

          気づいていない人々

          心が片輪に その1

          靴を磨いたり、服を着たりはできる。 髪に櫛を入れたり、イカス恰好もできる。 素顔を、微笑のうしろに隠したりもできる。 だが、どうにも隠せないものが一つある。 それは、心が片輪になっている、その時だ 。 (「心が片輪に」ジョン・レノン・三木卓訳) E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 より 👇 我々は現代にまで辿り着いたが、さらに、ファッシズムの心理学的な意味について、また

          心が片輪に その1

          1億総下層中産階級 その9

          この一見矛盾した謎は容易に解くことができる。利己主義は、正にこの自愛の欠如に根差している。自分自身を好まない人間や自分を良しとしない人間は、常に自分自身に関して不安を抱いている。 彼は純粋な好意と肯定の基盤の上にのみ存在する内面的な安定をもっていない。 彼は自分自身に気を使い、自分の為にあらゆるものを獲得しようと貪欲の目を見張らなければならない。 彼には根本的な安定と満足とが欠けているからである。 これと同じようなことは、いわゆるナルシス的人間にも当てはまる。彼は自分

          1億総下層中産階級 その9

          1億総下層中産階級 その8

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 👇 すなわち愛は「好むことではなくて、その対象の幸福、成長、自由を目指す積極的な追及であり、内面的なつながりである。それは原則として、我々をも含めたすべての人間やすべての事物に向けられるように準備されている。排他的な愛というのはそれ自身一つの矛盾である。 だしかに、ある特定の人間が明らかに愛の 「対象」となることは偶然ではない。このよ

          1億総下層中産階級 その8

          1億総下層中産階級 その7

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 👇 これまで我々は、近代社会において、資本をもち、その利潤を新しい投資に回すことのできる人間について論じてきた。彼らは大資本家であろうと、小資本家であろうと、その生活は経済的機能の遂行、資本の蓄積ということに棒げられた。 しかし資本をもたず、労働力を売ってその生活を稼がなければならない人間は、 一体どうだったのだろうか。彼らの経済的地

          1億総下層中産階級 その7

          1億総下層中産階級 その6

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 👇 人間を超えた目的に、たやすく自己を服従させようとするこの傾向は、実際には、プロテスタンティズムによって準備された。もちろん、 ルッターやカルヴァンの精神にとっては、経済的活動のこのような優越性を認めることほど縁遠いものはなかったけれども。 しかし、彼らはその神学的な教えに於いて、人間の精神的な支柱と、人間の尊厳と誇りとの感情とを破壊

          1億総下層中産階級 その6

          1億総下層中産階級 その5

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 👇 しかしこれは、資本主義が発展する自由の過程に及ぼした一つの結果(自由への道のりの通過点)であり、それは同時に個人を、増々孤独な孤立したものにし、彼に無意味と無力の感情を与えたのである。 ここで最初に取り上げるべき要素は、資本主義経済の一般的特質の一つとしての、個人主義的活動の原理である。すべての人間が、整然とした明らかな社会組織の

          1億総下層中産階級 その5

          1億総下層中産階級 その4

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 より 👇 我々はこのようにして、自由の問題とは、近代史の過程において、 これまで獲得してきた自由をより一層獲多く獲得することであると考えがちである。またそのような自由を否定する力に対して、自由を守ることだけがすべてであると考えがちである。 もちろんこれまで獲得してきた自由は、すべてできる限り守らなければならないが、 我々は自由の問

          1億総下層中産階級 その4

          1億総下層中産階級 その3

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 より 資本主義社会のより高度な発達が、宗教改革時代に兆し始めた変化と同じ方向へと、パースナリティに影響した。 プロテスタンティズムの教義は、近代的産業組織のもとで果すべき役割に対する、心理的な準備を与えた。この組織、この習慣、またそこから生まれるこの精神は、生活の隅々に行き渡り、パースナリティ全体を形成し、前章で検討したような矛盾を

          1億総下層中産階級 その3

          1億総下層中産階級 その2

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 より しかし、我々の主要な関心は、中産階級の反応にある。資本主義の発生は、もちろん独立と創意とを増大させたが、それは中産階級には大きな脅威であった。十六世紀のはじめ、中産階級の個人は、まだ新しい自由から多くの力と安定とを得ることはできなかった。 自由は力と自信よりも、むしろ孤独と個人の無意味さとをもたらした。そのうえ彼は、ローマ教会

          1億総下層中産階級 その2

          1億総下層中産階級 その1

          E.フロム「自由からの逃走」昭和26年12月30日 初版/昭和40年12月15日 27版(新版)/昭和62年10月20日 94版/東京創元社 👇 敵意や憤りは、また他人に対する関係のうちにも表現された。その主要な形は、道徳的な憤りであった。それは、ルッターの時代からヒットラーの時代に至るまで、下層中産階級のもつ変らない特徴である。 この階級は、富と力とにあかし、生活を楽しむことのできる人間に対して、実際には羨望をもっていたが、この憤りと羨望とを、道徳的な公憤の言葉や、これら

          1億総下層中産階級 その1