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点描画が増えてきた!?「改組 新 第10回日展」

芸術の秋ということで、今年も日展の季節になった。
さて、今回はどんな素晴らしい作品に出会えるか。

日本画部門


「春宵」 松田絵理

この方は3回連続。特徴的な画風なので、すぐ目に留まってしまう。もはや殿堂入りか。加山又造っぽいところがあるので、琳派のように金箔・銀箔をふんだんに使った作品も見てみたい。


「旋律」 島本純江

花の絵は、日本画の伝統を踏襲しているのだが、色の重ね方で奥行きを出しているところが印象的。色も重くならずに軽さが出ている。
「旋律」という表題を観て改めて絵に目を移すと、どことなくカンディンスキーの抽象画に通じるところがあるような気もしてきてしまう。


「雪迎え」 藤島博文

この方も特徴的な画風で、2回目の登場。振り返ってみると前回も鶴がモチーフで、秋がテーマだった。来年は春?
さすがプロだけあって、他を圧倒する画力。


「過ぎゆく夏」 岡本徳子

この方は前々回に紹介した方だったか。今回は特選受賞、おめでとうございます。モチーフは似たものではあるが、今回の方が色彩が豊か。あまり夏らしさは感じられなかったけど。

洋画部門


「浜辺に咲く昼顔」 田中一利

極端に空の広さを強調した構図。浜辺自体はブーダン以来書き継がれているが、ここまでのデフォルメはなんと大胆なことか。表題の昼顔もここでは脇役に回ってしまっている。それでも、この空の青さたるや。もはや夏と言えば酷暑になってしまっているが、清涼感に満たされる。


「ばら園」 和田貢

ばらの香りまで漂ってきそう。ばらはその造形そのものが幾何的なせいか十分絵になるのだけど、そこをよい具合にデフォルメして描いている。バランスも崩れておらず、たくさんの花でありながら軽やかさも感じられた。


「愛読書」 池田清明

この方も以前紹介した方。安定した画風。この方に肖像画を描いてほしいと思う女性は少なくないのではないだろうか。もはや巨匠の風格である。
この方のHPには、実際に絵筆をとっている動画もあり興味をそそられた。

洋画部門 特集~点描コーナー

点描画は、主には19世紀のスーラやシニャックによって世に出されてきた画風であるが、その性質上大作にならざるを得ないのだが、それを点描で表現するというのは至難の業で、そのためかどうか知らないがスーラは若くしてこの世を去ってしまった。。
そんな点描に挑む作品が今回は3作(他にもあったかな)あったので、紹介したい。


「Firenze, la citta dei fiori」 熊谷有展

フィレンツェを描いたこの作品。全体を格子状に区切ってその中を点描しているよう。花の都の名の通り、明るさが際立っている。


「高炉」 正守荘志

前の作品よりは少しは粗目の点描かな。それでも十分細かいけれども。
高炉という重厚なモチーフと点描のギャップがふしぎな空気を作っている。誰かに準えるのは良くないとは思うが、岡鹿之助を彷彿とする。空のグラデーションもいい感じ。


「船揃えⅢ」 鈴木順一

この方は以前にも紹介した。明るい画面、全体的に赤みがかった色合いは、3人の中ではもっともシニャックを継承しているかのように感じる。点描というとなんとなく洋のイメージだけど、モチーフは日本の漁港というのも面白い。

マイ・フェイバリット


「天体観測」 福田季生

やりました。ついに特選を受賞されました!
今までの入選作は琳派のような作風が多かったのだが、今回は青を基調として夏の夜をイメージした涼やかな作品。丁寧に描かれた浴衣の柄が目をひく。また女性の凛とした横顔が、上品さを醸し出していて、観る側の心持も正されるかのようだ。


「夕景・安曇野」 歳嶋洋一朗

今回の舞台は日本、長野の安曇野。和のモチーフも良い感じ。
夕景という朧な時間帯が絵筆のタッチにぴったりで、雰囲気を作り出している。これはぜひ実物を観てほしいところである。

後記

公募展である日展を何年にもわたって鑑賞してきて、自分の絵の見方もなんとなくわかってきた気がする。
①モチーフの明瞭さ、②絵筆のタッチ(絵筆の跡が無駄に残っていない)、③伝統からの系譜
これらが見て取れる作品が好きなんだなと。

そうは言うけれども、実際に描くとなったら難しいのだろうな。。

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