見出し画像

電動自転車、電動キックボードは公道を走れるの?

最近、新たなサービス提供や新製品の発売により、街中でも電動キックボードや電動自転車が走っているのをよく見かけるようになってきた。これらの新しい乗り物は便利である反面、道路交通法を無視した利用をしているケースも結構な割合で見られる。この記事では、電動自転車や電動キックボードの道路交通法上の扱いや、公道を走れるのかどうかについて解説する。

最新情報はこちら:


電動自転車の種類

電動自転車と呼ばれているものには2種類ある。ペダルによる走行を「アシスト」する「電動アシスト自転車」と、ペダルを漕がなくても電気モーターで自走できる「ペダル付き電動自転車」の2種類だ。前者は所定の条件を満たせば「普通自転車※1」として扱われ、車道、自転車道、および歩道※2を走行できる。

※1 普通自転車とは、自転車のうち、四輪以下で側車が付いていない長さ190cm以下、幅60cm以下で乗車装置(サドル、座席)が1つのみ、制動装置(ブレーキレバー)が走行中容易に操作できる位置にあり、他の車両を牽引していない、歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないもの。幼児用座席は付いていて構わない。電動アシスト自転車は、四輪以下の電動であり、原動機の力が、時速10km以下で人の力の2倍以下、時速24km以上でゼロであり (牽引する場合は別規定あり)、改造が容易でない構造の場合は、自転車に分類され、さらに普通自転車の規定を満たすものは普通自転車として扱われる。

※2 普通自転車が歩道を走行する際は、「直ちに停止することができるような速度で進行」することが求められ、概ね6~10km/h程度の速度未満での走行が求められる。

一方、後者の「ペダル付き電動自転車」は現行の道路交通法上は原付自転車に分類され、車道のみ走行可能であり、原付免許、ヘルメット装着、ナンバープレート取得、方向指示器、ミラー等の保安部品が必要になる。「モペット」などと呼ばれている。

しかし、近年は技術の発達によりEV走行機能を備えた原付自転車と普通自転車の間のような乗り物が出てきたこともあり、警視庁が2021年6月に出した「車両区分を変化させることができるモビリティ」の通達を満たす仕組みを備えれば、一台で車両区分を原付と自転車の間でモードチェンジが可能になった。

この仕組みを実装した自転車が今後増えれば、自転車+EVの新しい乗り物の可能性が広がっていくものと思われる。すでに、この仕組みが実装された製品も登場しており、通常の自転車+電動アシスト自転車+原付自転車の3モードを備えた製品も登場している。

電動キックボードは歩行者?軽車両?原付?

一方、キックボードにも最近は電動機が付いた製品やサブスクリプションサービスが登場している。こちらは現行法上は原付自転車に分類され、車道のみ走行可能であり、原付免許、ヘルメット装着、ナンバープレート取得、方向指示器、ミラー等の保安部品が必要になる。一方、通常のキックボードは歩行者であり、歩道のみ通行可能である※3。

※3 電動機のないキックボードは、軽車両か歩行者かが明確でなかったのが、グレーゾーン解消制度の活用により2021年6月14日の経済産業省からの回答で歩行者であることが明確になった。通常のキックボードが軽車両であると歩道を通れないため、歩行者と認定されたことで歩道も通れることが明確になった。

ただし、こちらも2022年4月20日に衆議院で道路交通法改正案が可決され、電動キックボードは、新たに設けられた「特定小型原付」に分類される予定となった。ただし、改正法の施行は成立後2年以内(2023年7月1日に決定)となる。

特定小型原動機付自転車の新たな交通ルールが施行されるのは、令和5年7月1日からです。施行されるまでは、施行後に特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボード等を運転する場合であっても、現行の道路交通法(昭和35年法律第105号)に基づき、その車両区分(原動機付自転車又は自動車※4)に応じた交通ルールが適用されます。

出典: 警察庁ウェブページ
※4 特定の実証実験で使われる車両は自動車 (小型特殊) の区分となる。

特定小型原付の定義は、原動機は電動に限り、最高速度20km/h以下に制限、長さ190cm×幅60cm以内、特定小型原付に必要な保安部品が装着 (保安基準は記事執筆時点で引き続き審議中)されている、という全ての条件を満たす車輌のことである。原付との大きな差は最高速度が20km/h、16歳以上であれば免許証が不要、ヘルメットが努力義務であることだ。

合わせて電動自転車の場合と同様に車両区分の変更が認められるようになり、特定小型原付自体では歩道は走行できないが、時速6km/h以下の走行モードに変更でき、識別点滅灯火を装着することで歩道も走行可能になる予定である。

これらはあくまでも改正法施行後の話であることに注意されたい。

「小型低速車」の保安基準について (国土交通省)

改正道路交通法施行までは新事業特例適用事業者車両で優遇処置

しかし、このような状態だと改正道路交通法が施行されるまでは電動キックボードの使い勝手が悪くなってしまう。そのため、新事業特例に参加している事業者が貸し出す電動キックボードでは、加入時の条件をクリアしている場合、小型特殊自動車に分類され、速度制限が15km/hとなり、自転車通行帯の走行可能自転車逆走可能な一方通行の逆走可能ヘルメットが任意、などの緩和処置が講じられる。

出典: 電動キックボードのご利用ガイドブック

電動自転車と電動キックボードで法律違反しないために

以上の状況を改めてまとめてみる。

電動自転車は、電動アシスト自転車モードについては、諸条件を満たすものは普通自転車と同様に扱われ、車道、自転車道、歩道 (すぐに止まれる速度)を免許なし、ヘルメット、ナンバープレート、保安部品なしで走行可能である。ただし、自走モードがある車両は、このモードで走る場合は原付と同じルールになる。

電動キックボードは、現行法では原付に分類されるので、免許取得、ヘルメット、ナンバープレート、保安部品が必須なので注意されたい。これらがない状態で走っている場合は現状では法律違反になる。ただし、新事業特例適用事業者が貸し出す電動キックボードは、現行法に特別な変更を加えた状態で利用することが出来、ヘルメットは不要となる。将来的には、特定小型原付に分類されるものは、16歳以上であれば免許証が不要、ヘルメット不要、ナンバープレート、保安部品不要となり車道を走行できる予定である。さらに特別な条件をみたすモードを実装すると、歩道も走行できる予定である。

こちらもどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?