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[エスとの出会い]ミルコお茶に招かれるの巻

ふんわりスカートをゆらしながら
美人が自宅にお茶に招いてきた。

遠巻きにみていた彼女の行動には普段から品と知性が滲み出ている。

私はプライベートな時間をお上品だとか真面目だとかに使うのはゴメンである。

しかし、
「何故に私?」
私は知りたい興味に勝てなかった。

この女性は私からいったい何が引き出せると思っているのだろう?

ひょっとするとこの女性はバカかもしれない。私からは何にも出てこない。それはそれで面白そうである。

そんなわけでノコノコでかけていったら、勧められた椅子で茶碗を選ばされた。

「高級紅茶が出てくる。」

それが私の予想だった。


いったいどういうことだろう?

今、私の選ばされているのは


「抹茶茶碗」


である。

絶対におかしい。


面白すぎる。


私は平静を装い
この茶会ごっこに
完全にのっかることにした。

「ミルコさんはきっとそれを選ぶと思ってたわ。おすすめよ。私もそれ気に入っているの。」

ゆったりとのたまって
お茶をたてる準備をはじめた彼女の姿は優雅そのものである。
女の私でも見惚れるほどだ。

私は彼女が用意してくれた茶碗をひとつひとつ褒めあげ、そして私の今日の気分と、私の選んだ茶碗の関係を話して聞かせた。

お湯が沸く音が聞こえはじめる。

「お菓子、召し上がってね。」

菓子皿をみやって私はうなる。
私が持参した菓子も組み合わせて
綺麗に盛り付けられている。

私はそれをその季節にふさわしい景色に例え、彼女を褒め称える。

それから、抹茶って先にお菓子食べてから飲むんだっけと思い出し、
「召し上がってね」
はトラップではなく
指示だと気がついて
素直にいただくことにした。

お菓子の後の抹茶も
泡が美しくたっていて
とても美味しかった。

さて、お茶の後には
おしゃべりだ。

このような優雅な人との
会話の内容は慎重に選ばれる。

私は会話の主導権を女主人に任せることにした。

そして女主人は優雅にそれをつとめあげた。

彼女が優美であればあるほど
こっちはおかしな気分になる。
白昼夢の中にいるようであった。

私は自ら進んで何につきあっているのだろう?
自分に吹き出しそうにもなる。

「この女、ちょっと深掘りしてみたい。」
私の中でそのような欲求が鎌首をもたげはじめた。

何をとっかかりにしようか?

その日の会話で意外なことに、彼女ことエスと私はいくつか同じ本を読み同じ作家が好きであることが判明した。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

今や無二の友となったエスに
面と向かって聞いてみたことはない。

しかしエスのほうもこの時だ。
「ノリがいいな。この女、ちょっと深掘りしてみたい。」
この時絶対そう思っている。

そして私はまんまと彼女に仕留められてゆく。自ら喜んで。

なんのはなしですか



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