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分身の術を阻止したい

「私が
2人いればいいと思うの!」

電話口で友人が息巻く。

運転が得意な彼女がハンドルを握る間、助手席で旦那がボーッとしている。
ナビが下手くそ。
店が新しくなっていることなど何も気がつかない。
そんな平和な話だ。

一方私は、普段助手席で、おかしな看板や、変わった形の山をみつけては

「見て!」

と叫んで、運転の集中を途切らせ、旦那を困らせている。
ナビは私も下手くそだ。

耳が痛いんだかどうだかわからない気分で笑いながら聞いていると

だんだん雲行きが怪しくなってきた。

「家事でもなんでもそうよ!」
「頼めばやってくれる。」
「でも頼まないとやってくれない。」
「あんたの肩に載せてるそれは何?
脳みそ使えよっておもう。
何みてんの?」
「全部私が指示するのか?」
「一緒にいる意味ない。」
「私が2人いるほうがマシだ!」

なんかわかる気がする。
でも耳が痛くもある。

「一緒に考えてくれるのが嬉しいよね!いい案かどうかは別として。」
私は言った。

お気づきであろうか?
「いい案かどうかは別として」
というのはなんかわからないけど私自身の保身のためにも言っている。

「本当それ!」
良かった。彼女は同意してくれた。

「横にいるなら、自分の脳みそ使った意見を聞かせて欲しい。
ほとんどポンコツ。ほとんどムダ。
でもさ、でもさ、その中に私が『オッ』と思う意見があるかもしれないじゃんか。
その時に初めて一緒にいる意味感じるよね!

ああ!良かった。
なんか希望が見えてきた。
胸を撫で下ろした私に
彼女は続けた。

「頭使って案だして、私を説得してみろっつーの!
ほとんど却下してやるけどね!」

うゔっ。

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