7月2日

曇りたる空の裂けて光射す 敷布広げる君ぞ思へる

何となく仕事をしていたら、曇っていた外の景色がさっとあかるくなった。その瞬間、今朝家を出る前にスイッチを入れた洗濯機のことを思い出して、家内が洗濯物を干している姿が浮かんだ。昨晩の時点では晴れるかどうかを家内が気にしていたから、さっと射し込んだ日光に僕としても、晴れてよかったと思った。
それだけの短歌である。

こないだ仕事の余裕があって、半日休みにして都会へ出た。
本当ならまっすぐ帰ればいいのだけれど、家内には内緒で都会へ出かけた。ラーメンが食べたかったのだ。娘も入れて三人でいると、なかなかラーメンを食べたいと言い出すタイミングもないし、赤ん坊連れはラーメン屋に入りにくいのだ。
そういうわけで、家内には悪いが寄り道をさせてもらうことにした。
無事にラーメンを食べ終えると、僕は特にすることもなくなってしまった。

本当なら目的を果たしたのだから帰ればいいのだけれど、もう少し都会をうろつくことにした。ラーメンを食べるだけに切符代を支払ったと思うともったいない気がしたのだ。
とりあえず僕は本屋に向けて歩いた。
歩く途中で、家内に手紙を書くことを思い付いた。向かっている本屋は本のみならず、文房具も売っていて、きっとレターセットなんかも売っているに違いなかった。
そしてカフェも併設されているから、そこで何か飲みながら、家内に手紙を書こうと思った。

本屋にはレターセットの種類が思ったより少なかった。夫から妻へ手紙を書くときに適したレターセットは、意外と世の中にない。味気ない封筒と便箋もあった。でも僕が書きたい手紙はそういう散文詩的な手紙ではないのだ。たっぷり迷った揚げ句、僕はシロクマの絵が書いてあるレターセットを選んだ。

チョコレートドリンクを注文して、僕は手紙に取りかかった。娘が産まれてから、もうすぐ一年だ。そのことを手紙に書こうと思った。
家内はこの一年、本当に大変だったと思う。家内は偉い、素晴らしい。これからも三人でがんばっていこう。要約すると大したことないが、そういうようなことを便箋二枚くらいで書いた。

結婚する前、まだ離れて生活していた頃、僕は時々家内に手紙を書いて、時々家内からも手紙が届いた。君のことを考えている。私もよ。そういうやりとりだ。
その頃は一度の手紙に何枚もの便箋を使ってそれを封筒に押し込むものだから、封筒はパンパンになっていた。レターセットは便箋がすぐになくなって、封筒ばかり余るので、便箋も封筒も別々に買っていた。封緘用のシールやちょっと変わった切手なんかも買っていた。
そんなにたくさんの言葉を尽くして書いていたのは、自分の寂しさについてばかりだったと思う。
あの頃の手紙は僕も家内も、お互いとっておいている。恥ずかしいからしばらく読み返していない。
もう少し歳をとったら、二人で読み返してもいいと思う。

こないだ書いた手紙は、まだ通勤鞄に隠してある。これまでに
何度も手紙を書いているから、そんなに驚きはしないと思うけれど、少しは喜んでくれると嬉しい。
シロクマの顔のところに、メガネを書き足しておいた。

#日記

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