見出し画像

未来を指しながら

 テーブルの上に寝そべったまま僕は誰かが僕を動かしてくれるのを待っていた。
 その手に導かれて僕はどこへ向かうのだろう。まだ僕の知らない未来。ここにいる長い時間のことを思えば、どこへでもいいと思うだろう。理想もないとこだとしても、その瞬間は、離れていくという事実が何よりも最初の救いになるだろう。
 僕に触れて導いていくものの存在。君はいつやってくるのだろう。
 僕には君が必要だ。そして私はいくつものテーブルの間を縫って、ついに私という存在を見つけ出すあなたが現れる瞬間を心待ちにしながら、今という退屈な時間をただ待つという行為に捧げているのでした。他に方法があるのなら、例えば自ら声を上げてあなたに私という存在を知らせることができたなら。あるいは、他のものに頼んでそのヒントの端くれのようなものでも、どこかにそっと置くことができたなら。
 できるものなら、私は迷うことなくそうすることでしょう。僕は小屋から抜け出すことを知らない犬のようなものだ。わしはコントロールされて駆けることを覚えすぎた馬のようなものじゃ。

ヒヒーン! ヒヒヒヒーン! そうわしの声はそのように単純に訳することもできるのじゃ。じゃがな、もし、わしが馬であったとして。俺はペン。ずっと俺はここにいる。ここに忘れられたままだ。いったい誰が? それを問うたとこで何になる。
 ともかく俺は待つしかない。
 待つしかない存在。それが俺だ。だが、俺は自分のことを疑ってはいない。そいつは必ずやってくるだろう。
 俺はここに存在する。お前はどこかで俺を探している。俺を探してさまよっている。動かなくても俺には見える。俺は動かない。お前はあきらめない。だから、俺にはわかっている。出会うことは必然だ。俺は未来を指している。あっしはヒヒーンの使い。ずっと一つの未来を指しながら、僕はここで君が訪れるのを待っている。忘れられた哀れな存在などではない。僕はここに静止した状態で長い助走を取っているのだと思う。
 ここに流れている時間は、きっとそういう時間だ。
 僕には君が必要だ。君にとっても同じだろう。

 どこまでもどこまでも進むことができる。それが君と僕の先にある未来なのだから。誰かが私の存在に気づいて近づいてくるけれど、その目は長い間探し続けたものをついに発見した人の目ではなく、ただ何となくそれを見てしまった者の目なのでした。見たいものを見つめるのではなく、他に何も見あたらないからという理由で、気もなく向いているような目。
 その時、私は寒気さえも感じ、実際テーブルの上で音を立てて震え始めていたのでした。

「君じゃない!」僕が待っていたのは君じゃない! 
来ないでくれ! 向こうに行ってくれ! 
どうか見つけないでくれ! 
「触れないでくれ!」僕をどこにもつれてかないで。


#待つ #小説 #詩 #文具 #迷子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?