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それでも会社を辞めてしまったひとへ

■「例の記事」に関する反省的なあれこれ

(↑このサムネイルはなんの写真でしょうか? 正解は後半で)
ふと思い立って書いた フリーランスと「生々しい経営」について という記事が、バズると言うほどではないものの、しばらくTwitterとnoteの通知が止まらないくらいの反響をいただいて、想像以上に多くの方の目に触れたことについて、今、ちょっと冷静になって考えています。

あの記事を書こうと思ったのは、Twitterかなにかで「1記事3000〜4000円のお仕事をやってくださるフリーライターさん募集してます……」みたいな文章が目に入って、「うーん。それ、食っていけるか?」って思って、そこから自分の経験を遡っていろいろ試算しはじめたら、あんな感じの記事になったんすよね。まあ、副業でキャリアのスタートとしてやってる人だっているので、僕の試算はある意味で「お節介」でしかなかったのかも知れません。

フリーランスと「生々しい経営」について を読んでくださったのは、フリーランス経験者、あるいは、フリーランスになるかどうかを検討している方、あるいは、検討した結果、会社員の道を選んだ方などさまざまでしたが、あの、生々しい数字満載(実は税金とか保険とかはしょってましたけど)の文章をどのようにとらえたのでしょうか。

「フリーランスは甘くねえぞ」と感じた方もいるでしょう。
「これを参考にがんばろう」と思ってくださった方もいたようです。
「お金についてもう少し考えてみようかな」みたいな感想もたくさんいただきましたね。

確かにどれも僕が届けたいと思っていた「読後感」です。あ、この「読後感」というのは一部のコピーライターの間で使われる符丁みたいなもので、自分たちが書いた言葉を読んだ人たちに、どんな感覚を残せたら正解か? を考えるときの基準となるものです。まあ、ここで書いている文章は、広告で使うコピーみたいな計算はそんなにないんですけどね。っと、話それちゃいましたが、「読後感」の話はさておき、あの記事を読んだ人たちから見た僕の「フリーランス」という働き方に対するスタンスってどんな風に写ったのかな?ってことがちょっと気になっていました。


■自由はときに呪いのようでもある

僕はよく、気心知れたフリーランスの仕事仲間、小さな会社の社長仲間と冗談めかして「こんなクソ面倒くさい状況で仕事し続けているのは、前世でよっぽど悪いことしたんだよ。神社の守り神の白蛇さまを殺したりしてるに違いない」なんてことを言ったりします。このわけわからない例えに対して、意外に同意してくれる仲間が多いのはおもしろいんですけどね。

もちろん半分は冗談です。でも、この冗談の中に、僕の「独立」とか「フリーランス」に対するスタンスが凝縮されているように思います。

普通に考えたら、やらなくていいことたくさんやってるし、半年先にどうなってるかわからないし、そこまで金持ちにもなれてないし(ロイホで値段見ないで注文できる/銚子丸で皿の色をみないでひょいひょいとれるクラスまではきましたが)、ちょっとメンタル落ちると「どうしてこうなった……」と自問自答することしばしばです。

でも、やめない。でも、続けている。

なんでか?って、そりゃあ、すごく楽しいし、仕事も仲間も増えたし、自分の意志で動けるようになった。社員たちにも恵まれている……暗黒の会社員時代に比べたら、想像を絶するほどに自由です。

でも、その「自由」を、呪いのように感じる瞬間もあるんすよね。

あるとき10年来の仲間であるデザイン会社の社長と飲みに行ったときのことをたまに思い出します。2人ともそれぞれ長くいっしょに仕事をしてきた腹心のスタッフが巣立ってしまった直後で、ちょっと放心&傷心していた時期です。ふっと口をついて出た言葉は、

「なんかさあ、おれら、会社辞めて、フリーになって、会社つくって……すげー自由になったつもりでいたけど、どこにも行けないんだよなあ……」

でした。その時点で僕の「独立」歴は8年くらい。メンタル的に落ちていた時期だったせいもあるけど、心のどこかに「代償」という2文字が浮かんでは消えたりしました。ああ、こうやって書くと、かなりメンタル落ちてましたね。


■会社員を続ける才能をドブに捨てるな

つまり、僕の「フリーランス」「独立」に対するスタンスはこうです。

「志を持って、なりたくてなる」のはいいとして、誰かにせっつかれてわざわざなるべきものではないし、ましてや「フリーランスになること」を目標にするのはちょっと違うんじゃないか……です。

フリーランスとしてやって行くには、その職能の才能とは別の、ちょっと異質な資質が求められることが多いです。会社員をやりつつ、自分のことを「社畜」なんて呼んでしまう人たちにとっては、それがことさら特別な存在に見えたり、かっこよく見えたり、すげえ楽しそうに見えたりすることってあると思います。

でも、裏を返せば、会社に属して仕事をこなすことにだって、かなりの才能が求められるんです。これについては2年以上勤めたことがある会社が自分の会社以外にない僕が断言します(ひどい)。もう、40歳にしてやっと悟りましたけど、僕には、圧倒的に会社員をやる才能がなかった。中2病的な「俺は特別だぜ」みたいなニュアンスは一切なく、強い劣等感とともにそう確信しています。もう諦めました。

だから、なまじっかな憧れとか、軽いノリで会社を辞めてしまうことは断じておすすめはしません。ほんと、会社勤めできる自分をもっと誇った方がいいと思います。今、社員を「雇う側」をやっているから、余計にそう思うのかも知れませんが。

■それでも会社を辞めてしまった人へ

でも……それでもうっかり会社を辞めてしまった人、それでもフリーランスになる道を選んだ人がいたら、僕は、鬱陶しいほどにお節介を焼きたいと思っています。

だって、そうなっちまったもんは仕方ないじゃないですか。かつて28歳で会社を逃げ出した僕が、多くの先輩たちにそうしてもらったように、縁があれば僕もそうします。人数に限度はありますけど、お会いする機会があれば焼き肉くらいはごちそうしましょう。

だから、まあ、「脱社畜」とか「会社員おわってる」とか「働き方改革」なんて、他人の声とかトレンドっぽい話なんて気にしないでください。喜びも、呪いも、全部があなた自身のものなんすよ。人のアドバイスなんて聞かなくていいと思います。そのわーわー言う人たちがあなたの面倒を見てくれるわけじゃないんで。何より、自由って「自らに由る」ってことっすからね。

と、いささかあざとい言葉遊びでオチがついたところで、サムネイルの話を少し。

このよくわからない空間は、僕がフリーランスになって約3年間を過ごした仕事場です。今思うとよくここでスタッフ雇って仕事していたよなあ。

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