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Janis Joplin & Jorma Kaukonen - The Legendary Typewriter Tape: 6/25/64 Jorma's House

 ジャニスがシーンに登場する数年前のセッションテープがオフィシャルでリリースされた。この時の相棒は後のジェファーソン・エアープレインのオリジナルメンバーともなるJorma Kaukonenだが、この時点でそんな二人がJorma Kaukonenの家でセッションしている時点で既に何か違う。同じサンフランシスコのベイエリアに居たとは言え、相当の好きモノで嗜好が近くなければそんなところで知り合ってもいないだろうし、セッションもしていないだろう。類は友を呼ぶ、ではないが、自然とそういう仲間が集まってくるのも不思議なものだが大いにあり得る話、どころか実際にそんな奇跡のような出会いはロック史ではいくつも聞く話だからおかしくもないか。

 この25分間のセッションの模様は「The Legendary Typewriter Tape: 6/25/64 Jorma's House」として2022年に陽の目を浴びたが、その瞬間から歴史となった。こんなに素晴らしい音質で残されている事にも驚くし、中身のセッションの貴重さも当然ながら今でも十二分に通用するレベルの二人の音楽クォリティには更に驚かされるばかり。まず音質レベルは、ロバジョンの一連の楽曲のような質感と言えば分かりやすいだろうか、オープンリールに多分一本のマイクだけでジャニスの歌とJorma Kaukonenの素晴らしいギターが絶妙なバランスで収められてて、いくつかの曲の後ろでJorma Kaukonenの奥様のマルガリータが叩くタイプライターの音が入っているという代物

 まず最初に驚くのは若かりしジャニスの歌声。あのしゃがれ声ではなく、ブルース好きな女の子が頑張って歌っている姿ながらも、当然後の姿から想像出来るように個性的でブルースそのままに聞こえる歌声でもあるから魅力的。それにしても色艶のある歌声で、Jorma Kaukonenからしたら後のジェファーソン・エアープレインにボーカルを入れる際にジャニスの顔は当然浮かんだ事だろうと思う。それでも結果はグレース・スリックの方が正解だったが、Jorma Kaukonenの純粋なブルース好き嗜好だけではバンドは進まなかったから当然その選択になったのか。そのJorma Kaukonenのギタープレイの凄まじさはロバジョン的な、戦前ブルースの一人でバックもソロもリズムも刻んでしまういわゆるホンモノのフォークブルースギターそのままの素晴らしさ。これだけギターが弾けたならジャニスも是非一緒にやりたいと思っていた事だろう。

 純粋に40年代のブルースデュオを聴いている感覚になるレベルの作品に仕上がっているので決して若カリスジャニスのデモテープやオーディションテープではなく、Jorma Kaukonenと二人のセッションプレイとして聴いておくべき作品。収録時間が短いのもあって、自分は本作を立て続けに4〜5回聴きまくってしまって、すっかりその作品の魅力に取り憑かれてしまった。ジャニスの歌声がホントに聞きやすく、且つこのおままでも十分にブルースの女王の異名も取れたのではないかと思えるほどの奥深さを持っているから素晴らしい。こんな発掘音源が今聴けるのだから長生きはするもんだ。


好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪