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ビトク「DREAMCHASER#3」インタビュー(2023.11)

先月、10月21日、私は渋谷GARRET udagawaにて行われた、 Sailing Before The Wind 企画 DREAMCHASER #3 に足を運びました。
(以下、Sailing Before The Wind:SBTW)

私も大好きな FALLING ASLEEP とのツーマン、60分のロングセット。
圧倒的なクオリティのライブから、1年ぶりの主催ライブへの気合を感じました。
(以下、FALLING ASLEEP:FA)

今回は、そのDREAMCHASER #3 の話を中心に、SBTWのリーダーでありベーシストのビトクさんに「ライブ」について、詳しくお聞きしました。

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ーインタビューをお受けいただきありがとうございます!
まずは、SBTWにとってDREAMCHASER #3 はどのような位置付けのライブだったのでしょうか?

ビトク:DREAMCHASERは、もともと僕らがスタジオライブ企画として始めたシリーズです。2018年に閉館した渋谷駅前音楽館で、2017年と2018年に2回開催。FAは初回のゲストで出演してもらったときからバイブスが合いすぎて、2回目も出てもらいました。

だから今回「ツーマン誰とやる?」と考えたとき、「そうだDREAMCHASERやろうぜ!」となりました。ツーマンにしたのは、今年ワンマンをやっても、去年と違いをつけにくかったから。

で、大前提、今年10月21日に主催をやることは、去年10月22日にワンマンをやった時点で、決めてました。この時期を、SBTWの主催イベント日として、恒例化するために。

なぜ10月中頃を選んでいるかというと。僕の誕生日が10月22日でして。渋谷CYCLONEの店長セイキさんが、2018年から2021年までほぼ毎年、生誕祭イベントを企画してくれたんです。

2022年は、ちょうどワンマン開催できる機運が高まっていたので、「(今まで企画してもらった分)今年は自分達で主催やります!」という流れですね。恩返しの意味も込めてます。

ーSBTWのライブに来るお客さんは、どのような方が多い印象ですか?

ビトク:うまく言えないですが、類友というか、僕らメンバーと似たような方が多い気はします。価値観的な意味で。男女比や年齢層に、大きな偏りがないのも、個人的には嬉しい傾向です。今回のツーマンは、SBTW好きな人もFA好きな人も、バランスよくお客さんが来てくれました。

ー直前に新曲:Inferno (feat. CØRTES)のリリースもありましたが、当日のセットリストはどうやって決めたのでしょうか?

ビトク:いつも逆算で決めます。イベント内容(対バンや客層)に合わせて曲を配置してから、セトリの流れがキレイになるよう他の曲を組みます。例えば、対バンが歌モノ寄りだったら、サビがクリーンの曲をなるべく入れたり。

今回の60分セットも、核となる曲を先に決めて、そこから逆算して組みました。”決める”というか、自然と”決まる”感じ。

具体的には、入場SE (One Step Overのリミックス) からのOne Step Overはセット。それに続く2曲目は、別のキーにしたい。ドラムソロの後は、そのままドラムビートで入れる曲。アンコールではFuturist必須。……などなど。

個人的なやりたさ云々ではなく、「やる必要がある曲」で考えています。例えば、前回のワンマン時にはなかった新曲や、認知度の高いPV曲は、やる必要がある曲。それを配置したら、自ずと前後の曲候補は絞られる。同じキーや同じテンポの曲が、続かないようにしたいので。

今回やらなかった曲、封印したわけではありません。ただ、枠が限られる以上、昔の曲よりは、新曲をやる必要がある。逆にいうと、理由さえあれば、いくらでも昔の曲やります。〇〇周年とか全曲披露とか。

セトリを、気分で決めたり当日の空気で変えたりは、僕はやりません。昔に試しはしましたけど。悪い意味でお客さんに合わせるよりも、自分達の美学に沿って、セトリは事前に決めて、「ついてこいよ」くらいの牽引力でライブした方が、良いなと。

ー当日は、ライブの音質が素晴らしく、驚きました。SBTWの音響や照明へのこだわりを教えてください。

ビトク:ありがとうございます、音響と照明はGARRET(会場)のスタッフさんに丸投げです! 何度も担当してもらっていているので、お任せしています。楽器の音に関しては、一切要望出してません。
例えば「ギターの高域をもう少し削って~」とか「キックの音が~」とか、何も言ってないです。エフェクト(リバーブ)のかけ方を相談したくらい。自分はPAと照明のプロではないので、具体的要望を出さない方が、むしろ良い結果になる。

あとは各バンドメンバーが、責任持ってやってくれてます。ギターの音作りも、全部ギター隊に丸投げ。今回の僕のこだわりを強いて挙げるならば、各セクションの担当者を信頼したことです。

ー60分のロングセットでしたが、曲の繋ぎ方には
昨年10月のワンマンライブの経験が活かされている印象でした。今回のツーマンライブで新たに工夫したことや、発見したことがあれば教えてください。

ビトク:去年のワンマンライブの無料公開 & ライブアルバム化が好評だったので、今回もそのための手配は整えました。「ライブアルバムにすること」から逆算して決めた部分もあります(詳しくは以前noteで書いた通り)。

一番の発見は、60分が意外と短かったこと。いざやってみたら、あっという間すぎて。来てくれたお客さんからも「〇〇やってほしかった」「もっと曲やってくれ~」みたいな感想をいただきました。

来年どういう形にするかは、まだ決めてませんが、最低90分はやります。やりたい。そう思わせてくれた、お客さんに感謝です。

ー対バンのFAは、2019リリースの1stアルバム”My Heart Still Goes On”の再現という特別なセットでした。お互いのステージにボーカルが参加するシーンも見られましたが、SBTWのステージに他のバンドのメンバーがフィーチャリングするのは珍しいと思います。
SBTWとFA、どのような関係があって実現したのでしょうか?

ビトク:2016年、幻に終わったBurning Down Alaskaの来日ツアーがあって。全公演にSBTWの出演が決まっていました。このツアー、BDAは来日キャンセルになりましたが、SBTWだけで回ることにして。FAは、そのツアーの新潟場所で初めて見ました。

当時彼らはまだ叙情派ハードコアスタイルで、超カッコ良かった。ものすごい衝撃でしたね。あのときの衝撃は今でも忘れられない。その後さらに鋭くなった、独自路線を貫く活動スタイルにも、共感。

ゲストボーカルは、必然性がない限りやりたくないですね。そもそもお客さんは、誰かも分からないゲストボーカルを見たくてお金を払っているわけではないと思うので。
僕は、例えば大好きなバンドを見に行って、全然知らないゲストボーカルが出てきたら、困惑します。普通に本家が歌ってほしいです。本家を聴きたくてライブに行ってるので。ただし今回のようなツーマンや、一緒にツアー回るバンドなら、イベントの価値として、やっても良いかなと。


ーライブの告知は、FAの1stアルバム再現、新曲リリース、コラボマーチ等、順番に情報を解禁して畳みかけていく作戦に見えました。今年は国外のバンドの来日も非常に多く、応援しているバンドが多い人は、簡単にライブに行くことを決められない状況だと思います。

情報解禁時の手ごたえはいかがでしたか?

ビトク:FAが1stアルバム再現や旧編成でのライブを発案してくれたのは、本当にありがたかったです。SBTW的には、そういう案は予想していなかったので。純粋に「ツーマンやれるだけで御の字」と思っていました。なぜか守りに入ろうとしていたというか。

新曲Infernoも、当初は企画後のリリースを想定していました。でもFAが前のめりになってくれたのが嬉しくて、リリースを前倒しに。やっぱり「攻めの姿勢」を提示するのは大事ですね。実際にチケットの動きは、そういう情報解禁と連動しました。外から見て「バンドがバンド活動に投資している」のが分かると、応援しやすいのかなと。

ライブ被りは懸念事項だったので、とにかく日時は早めにアナウンスしました。バンド的にもお客さん的にも、被って”得”なこと、思い浮かばないですし。来年の主催ライブ日程ももう発表していて。2024年10月19日です。

ーここからはビトクさん個人にフォーカスした話題に移ります。
現在(2023年11月)noteのマガジンの購読者が400名を超えていますが、noteをはじめとする発信活動をきっかけに、ライブに足を運んでくれる方はどれくらいいらっしゃるんですか?

ビトク:実数は不明ですが、少なくとも数名はいるかと。発信活動でいうと僕はポッドキャストもやっていて、お便りで「ライブ行きます」とメッセージが届いたこともあります。パターンでいうと、ライブハウスで会った人に「noteも読んでます」と声をかけてもらえることが一番多いですね。

何か一つがきっかけになるというより、僕の活動が複合的に作用して、認知してもらえている感覚はあります。例えば、メタルコアとマーケティングの両方に興味がある人は、SBTWの音楽と僕のnoteどちらも楽しめるので、より馴染みやすく(?)なるような。

そもそもnoteは、「ライブへの集客」目的で発信しているわけではないので(むろん結果的にそうなるのは歓迎)。もっと長期的な視野でやってます。

例えば、僕が3年前にアップしたベースの音作り動画▼。
今でも初対面のベーシストさんからは必ずと言っていいほど、「あの動画見ました!」と話題にしてもらえます。

で、僕は今でも、この動画と全く同じやり方でベース音を出しています。それくらい、長いスパンで考えてコンテンツを出している。

noteやポッドキャストも同じように、2年後3年後10年後も通用するようなイメージで、発信しています。むしろ後になってからこそ、今やっていることの意味が明らかになるはず。

例えば、3年後にライブハウスで、「今年上京してきました。地元にいた頃からビトクさんのnote読んでます!」みたいな出会いが、あると思っていて。実際、なかなか直接は会えない距離の方にも、届いてほしくてやってますし。物理的な距離と、時間的な距離を超えた先に、発信の意味を置いています。

ービトクさんはライブ中のムーブがよく話題になりますが、演奏とどう両立させているのか率直に疑問です。音がずれたり、他のメンバーや機材にぶつかったりはしないのでしょうか?

ビトク:ズレたりぶつかったり、しますよ! でも、かなり注意深く見ないと、分からないかなと。なぜなら、動いても大丈夫なパートでしか、動いてないので。左手が常に動くようなリフのパートでは、回転してません。

ステージングを追求する上で、もちろん運動神経的なスキルは必要ですが、論理的にできる確認も大事。例えば、リハーサルで、天井の高さや床の滑りやすさをチェックしたり。ステージが狭い場合は、ボーカルが前に出たときに生まれるスペースで回転したり。

感覚的には、僕らSBTWからすると、むしろ動かないで弾く方が、曲のニュアンスを出せなくてやりにくいです。ヘドバンや回転を入れないと、逆にムズムズする。バンドのライブを「身体を全く揺らさずに見る」のが難しいのと同じ。動きながら弾く方が、やりやすい。
例えば、アカペラで歌うとき(歌だけを口ずさむとき)、手拍子を入れた方がリズムを取りやすくないですか? それと同じ原理で、その延長線上に、「ヘドバン/回転しながら弾く」があるイメージです。自然体の延長線上。

ーその一方で、フロアのお客さん一人一人にしっかり目線を向けているのも印象的です。ライブ中はどんなことを考えているのですか?

ビトク:何も考えてないです! 無心の方が、事象をキャッチする余白が生まれるので。「あのお客さん久しぶりに来てくれたんだ」とか「あ、動画撮ってくれてる」とか。
感覚的な判断もしますね。「もうちょっとボルテージ上げた方が良さそうだな」みたいな。その場のエネルギーに呼応して、パフォーマンスしています。

ーSBTWの他にも様々なバンドのサポートでライブに出演されていて、バンドごとにライブでの様子も変わっている印象です。それぞれ、どのような点にこだわってライブをされているのですか?

ビトク:サポートの場合は、与えられた職務の全うが、最優先。つまり、滞りないパフォーマンスで、ライブを成立させること。思考的にいうと、得点よりも、失点を防ぐルート。冒険をしない。ぶち上がっても、突然「イケるか渋谷!」みたいなシャウトを入れたりはしない。そういうのが職務として”求められる”場合は、やりますけど。

そもそもお客さんは、バンド目当てでライブに来ています。「急遽3日前にサポートを頼まれた自分」目当てではありません。仮に自分を見に来てくれる人がいたとしても、それは「職務を全うする自分」を見に来てくれたのであって。「素の自分」が求められているわけではない。

パフォーマンス以外の面でいうと、なるべく団体行動するようにします。メンバーと離れて行動しない。一言でいうと、”波長”になるのかな。呼吸を合わせるis大事。例えば、スタジオやリハ終わりに皆でご飯を食べるなら、極力同席。

SBTWではリーダーをやっているので思いますが、メンバーの単体行動は、組織に微細な精神的負荷を与えるんですよ。「あれ、〇〇どこいる?」みたいな。もちろん仕方ない場面もありますが、あの一瞬の負荷が連続すると、結構しんどいです。

や、常にコバンザメかませばいいとは限りませんが……。たまたま通路塞いじゃったり、楽屋で不必要に場所取ったりとか、そういうのはメンバー(や関係者)にストレスを与える可能性があるわけで。僕がサポートの仕事をするときは、そういう微細な負荷はかけないよう心がけています。

サポートメンバーは、サポートメンバーが必要とされなくなる日のために必要。冷たい表現ですが、代替可能なパーツなんです。変に思い上がらないために、僕はそう考えています。


ーライブのタイトルである、DREAMCHASER は直訳すると「夢を追う者」ですが、ビトクさんにも目標とは違う、漠然とした夢はあるのでしょうか?

よかったら教えてください。

ビトク:もしかしたら本当は、スタジアムでライブしたいのかも。正直、何が夢なのか分からなくなっている自分がいます。だって、スタジアムでライブするのは”嫌”じゃないし。やったことがないから、好きか嫌いかも不明。

……ここでいう”スタジアム”は、比喩です。大きな舞台という意味の。かれこれSBTWを13年やってきて、それなりに知見と経験を得て、色々「現実的に可能かどうか」が見えてきちゃった。例えば、来週、武道館でライブするのは、現実的に無理です。

しかし、バンドを始める前は、もっとピュアに考えていた。今は、経験と知識が、自分の可能性を縮めている気すらします。「予算的に無理だよ」とか「あの人との人脈がないから無理だよ」とか、そういう理由づけにばかり、知見が機能しちゃう。

小学生か中学生の頃か、親が持っていたBon Joviの『Live From London (1995) 』のVHSビデオを見て、映っている”何か”に憧れたんですよ。それがデカいステージに立つことなのか、曲がヒットすることなのか、リッチーみたいなギタリストになることか、分からない。けど、とにかく、”何か”に憧れた。

その”何か”が、僕にとって、漠然とした夢ですね。

ちなみにユカちゃんの夢や憧れがあれば、聞いてみたい。

ー私は高校生の頃から海外バンドの音楽を聞いていた影響か、漠然と「ツアー」というものに憧れがあります。具体的なことは何もわからないのに、オリジナルのツアーを組むイベンターやツアーチームのクルーなんて、想像するだけでワクワクしますね。
どのような形になるかわかりませんが、私がこの音楽シーンに貢献できるような活動をするとしたらライブが1つの基軸になると思うので、今回「ライブ」にフォーカスしたインタビューをしたい、という構想が実現したこと、とても嬉しく思います。

ビトクさん、ありがとうございました!!

ビトク:こちらこそ、素晴らしいインタビューをありがとうございました!


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interviewer:yuka
image:本人提供
photo by Fukuda Masaya

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