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「山下達郎vs松尾潔」に対するメディアの報道姿勢への違和感

こんにちは。
私はこちらのnoteで趣味である音楽関連の記事を書いている者です。
私は80~90年代の音楽への思い入れが深く、どちらかといえば過去の思い出話を書く事が多いので、時事的な話題には基本的にはあまり興味はありません。

しかしながら、現在話題となっている「スマイルカンパニーの松尾潔氏との契約解除問題」についての、メディアの報道やインターネット上での音楽ファンも含めた一般の人々の意見を読んで、少し思う所がありましたので、個人的意見を書かせていただきたいと思います。

事の経緯については、いまこの記事を読んでいただいてる方にはあらためての説明は不要だと思いますので、詳細は省略します。

7月1日の松尾潔氏によるTwitterでの名指しでの「批判」を受けて、7月9日に山下達郎氏がラジオ番組「サンデーソングブック」で自身の考えを表明したものの、結果的に火に油を注ぐ結果となってしまいました。

メディア記事や一般人がネットに書き込んだ反応を読むと、今回の山下氏の対応や姿勢について、概ね下記の2点を問題視する意見が多いようです。

1.松尾氏のジャニーズに対する批判を「憶測に基づく一方的なもの」と断定し切り捨て、そもそも議論の土俵に上がろうとしない逃げの姿勢への批判

2.故・ジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所への恩義を重んじるという自身のスタンスを明確にしつつも、そのような自身の姿勢を理解できない人に対しては「私の音楽は不要」と挑発し開き直る傲慢な態度への批判

批判の矛先は、山下氏の言動や態度だけでなく、所属事務所であるスマイルカンパニーや山下氏の妻である竹内まりや氏へも向かい、音楽業界にとどまらず世間を巻き込んだちょっとしたカオス状態となっています。

私は80~90年代の音楽を愛好しているので、山下達郎氏の作った作品の中にも大好きなものがたくさんあります。
近年では山下氏はシティポップ再評価ブームの象徴的な存在となっていて、海外の音楽ファンにも広く知られる存在となりました。当然、山下氏に対して海外からライブのオファーも殺到したようですが、彼自身はあくまでも作品製作と国内でのライブ活動に集中する仕事の姿勢を変えておりません。
私も個人的に、そのような山下氏の仕事へのこだわり方を尊敬しています。

山下氏は、その豊富な音楽知識や語り口から、一見理論的で客観性が強いイメージを持たれがちですが、山下氏と大滝詠一氏の「新春放談」や、ライブでのMCにも馴染んでいた私にとっては、先日のサンデーソングブックは特に驚くべき内容ではありませんでした。

また、山下氏は東京生まれ東京育ちではあるものの、シティポップでイメージされるようなお洒落な地区とは真逆の、豊島区や練馬区といった下町育ちで、彼自身もそのような自分のアイデンティにプライドを持っているのだろうなとも思っていましたので、少し逆張り気味の傾向がある点も織り込み済みでした。

私個人の山下達郎氏のイメージは、もともとは「好き嫌いがはっきりした口の悪い音楽オタク」であり、親戚に必ず1人はいる「頑固で偏屈だけど、たまに良い事をぽろっと言ったりする、面白いおじさん」という感じでした。

昨今の流れから、世の中でも山下達郎氏を「弱きを助け強きをくじく」聖人扱いするような流れがなんとなく出来上がっていたフシもあり、実は私も少しそんな目で見始めていたところもあったのですが、今回の一連の動きで「そうだ、もともと山下達郎はこんな感じだったな」と妙に納得してしまいました。

ただ、それらを踏まえても、今回の山下氏の主張は、正直「ツッコミどころ」が多く、だいぶ分が悪い内容だったとは思います。
他の事案ならまだしも、「故・ジャニー喜多川氏による未成年者への性加害」という、非常に重大な事案へのスタンスや考え方を問われるものですので、もう少し慎重に言葉を選ぶべきだったとは思います。

また、口火を切った側の松尾潔氏については、詳しく存じ上げていませんでしたが、正直少し違和感も感じました。
提示された契約解除の提案に納得できない点があれば、その時点で徹底的に相手方と交渉を行い、その上で合意に至らないでのあればしかるべきアクションに移すのが、一般的なビジネス契約の進め方です。

ところが、松尾氏は弁護士も交えた上で契約解除には合意したにもかかわらず、後日SNSを使って契約解除そのものに納得していなかった旨を不特定多数に向けて発信した訳ですが、この行動もそもそも如何なものかと思います。
「いや、そもそも目に見えない圧力が常態化している芸能界だからこそ、SNSで発信するより他なかったはず」と、その行動を擁護する意見もありますが、そうであれば尚更、真っ当な手順で対応するべきでした。イレギュラーに対しイレギュラーで対抗し続ける限りは、事の本質に迫り本当の問題点をあぶりだす事からは、かえって遠ざかってしまうと思います。

最後に、私が実はもっとも気に入らなかったのは、本事案を報道する大手メディアの姿勢とそのスタンスです。

そもそも今回の騒動の発端は、故・ジャニー喜多川氏の犯罪的行動と、それに対するジャニーズ事務所の不透明対応にあり、「スマイルカンパニーの松尾潔氏との契約解除問題」は、そこから派生した場外乱闘のひとつです。
しかしながら、標的となったのが山下達郎という、これまでスキャンダルとは無縁の「新鮮な素材」だったため、ゴシップ系メディアだけでなく大手新聞系のメディアまで、ここぞとばかりに面白おかしく書き立てています。

これら大手メディアによる、問題を矮小化して事案の本質から話を逸らし、自分たちは巧みに物影に身を移動して「ガヤ」だけを飛ばす変わり身の早さには、心底辟易します。
料理人と女優を待ち伏せして不倫現場を抑える暇と行動力があるなら、ジャニーズ事務所で社長を待ち伏せして不意打ちで取材を仕掛けるくらい、訳もないはずです。

せめて、そのような自分達を自己正当化する言い訳でもするならまだ可愛げもありますが、あくまでも客観的立場を装い傍観者を決め込む彼らこそ、A級戦犯なのではないかと思った次第です。

(おわり)

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