青い扉03

 レゴブロックで出来た小さいお花がマサヨちゃんの部屋の棚の上に置いてあった。白い顔にクリクリっとした目のマサヨちゃんはお絵描きをしていたようで、団地の向こうに花いっぱいみたいな色がたくさんな山を描いて、そこと団地を虹が結んでる絵みたいだった。
「花、持ってきてん。あげるわ。レゴのとこに置いとく?」
意外と平井が優しく声をかけた。マサヨちゃんの前やとみんなちょっと穏やかになる。
「うん。ありがとう。花、どこで摘んできたん?下?」
「そうやよ。シロツメグサともういっこ、名前わからんけど。」
「ありがとう。」
  僕らはマサヨちゃんとマサヨちゃんのお母さんが出してくれたシュークリームを食べながら、春の遠足に持っていくお菓子の話をしたり、虹の上を歩くときは靴を脱いだ方が良いだのの話をしたり、トランプで7並べをしたりして過ごし、察しのいい竹田くんが
「じゃあ、僕らも夕飯食べに帰ろか。」
という散会の言葉を合図に、僕たちはふだん片付けなんてほとんどしないが、トランプを片づけ、僕なんてシュークリームのお皿をキッチンに持って行った。トランプを出すマサヨちゃんのツヤツヤしてる爪、星占いや心理テストの本、ホラー漫画が置かれた空色のカーペットと紅茶の香りを僕は今でも思い出す。救急車の赤色灯をみて青いバンダナが寂しくベランダで揺れるのが思い浮かぶ時はいつも。

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