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数字に強い社長になるポッドキャスト 第584回 DDSにともなう劣後ローン

六角 明雄
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この番組は、数字がちょっと苦手な中小企業経営者の方が、数字に強くなって業績をばりばりあげてもらうための応援番組です。

今回も、この番組の管理者である、中小企業診断士の六角が、事業活動に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業への、資金繰支援策についてご説明いたします。

今回も、前回に引き続き、劣後ローンについてご説明したいと思います。

まず、DDSにともなって契約する劣後ローンは、日本政策金融公庫の資本性ローンや、多くの有識者が提言している永久劣後ローンとは、利用される場面が違うということについてご説明します。

DDSにともなって契約する劣後ローンは、一般的には、新たに契約するものではありません。

DDS、すなわち、デット・デット・スワップ(一般の融資と劣後特約つき融資の交換)にともなうものなので、それまでの一般の融資に対して条件変更を行い、他の債務よりも劣後して返済する特約や、期限一括返済とする契約とすることで、劣後ローンになります。

では、なぜ、DDSを行うのかというと、DDSは、融資相手の会社の事業再生をするときの手法のひとつであり、DDSによって劣後ローンを契約する場合は、一般的には、その会社を事業再生するからです。

ちなみに、DDSが行われる場合は、一般的に、銀行の債権放棄もともないます。

例えば、10億円の融資を行っている会社に対して、事業再生を行うとき、銀行が5億円の債権放棄を行い、それと同時に、残りの融資額5億円については劣後ローンに転換するというようなことが行われます。

このとき、銀行は、既存の融資のうち5億円が回収できず、その金額が損失となりますが、残りの5億円は劣後ローンに転換し、将来、その会社が再生すれば回収できることが期待できます。

もし、その会社に対して銀行が債権放棄をしなかった場合、融資額の全額の10億円を請求できる権利は残りますが、多額の融資を抱えたままでは事業を再生させることが難しくなるため、遠くない将来、10億円の融資も回収できなくなる見込みが高くなります。

そこで、5億円の債権放棄をしても、残りの5億円を回収できるようにすることの方が得策(これを経済合理性といいます)と判断されるときに、このような手法が行われます。

ちなみに、すでに廃止された、金融庁の金融検査マニュアルでは、DDSにともなう劣後ローンは、新規融資の契約の場合も含まれると記載されていましたが、その場合であっても、その資金は既存の債務の回収にあてられると思われますので、実質的には、既存の融資の条件変更と同じ結果になると言えます。

ところで、5月27日に、金融庁監督局長から金融機関あてに、「令和2年度第2次補正予算の決定を踏まえた資金繰り支援について」という要請文書が出されています。

それによると、「急激な経営環境の変化により資本の充実が必要となった企業に対する支援において、資本性借入金が有用であり、積極的に活用すべきこと」を要請しています。

さらに、その文書では、「民間金融機関における、事業者支援の取組みが効果的に行われることを確保する観点から、金融庁は、各民間金融機関におけるプロパー融資残高等を分析し、政策金融機関等の融資・保証の実施状況を参照しつつ、融資残高が減少傾向にないかなど、事業者への資金繰り支援の状況をヒアリングすることとする。

その結果、金融機関における事業者支援の態勢について確認の必要が生じた場合は、特別検査(銀行法第25条に基づく立入検査)を実施することで、金融機関の取組状況を適時に確認する」と書かれており、実質的にプロパー融資を減らさないよう要請をしています。

したがって、これから、割合としては少ないとは思いますが、民間金融機関においても、劣後ローンの取扱が増えて行くことが考えられます。

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