亡き父の思い出~父にとっての宝物の巻~
父は私が社会人になって約20年ほど経ったころ他界した。
亡くなった父の身の回りを整理していたときに、時計が出てきた。
というか、病院から出るときに荷物の中にあったもの。
その時計には見覚えがあった。
私が社会人になって初めて給料をもらったときに職場の先輩にこう言われた
ろく、初給料をもらって嬉しいと思うが、まずはご両親への感謝を形にしなさい。立派に社会人になりましたよ、ありがとうってな。
私は初給料が嬉しくて、給料日の数日前から何を買おうかウキウキしながら考えていた。その中には両親への贈り物などなかった。
もちろん親には感謝の気持ちは持っている。それを初給料で形にすることは確かに大切なことだ。その先輩には感謝している。
父に送ったのは腕時計。それまで父はかなり使い古されたポンコツを使っていたので。
給料といっても社会人1年目の初給料である。自分にとっては大金に思えるが、買い物をすると考えるとそれほど思い通りのものは買えない。
気持ちが大事だと思い、それでも出来る範囲で高価なものを贈った。
今でもはっきり覚えているが、手渡した時の父はちょっとだけ涙ぐんで、めちゃくちゃ驚いて大声で
お~~~!!!
ありがと~~~!!!
と喜んでくれた。
そんな父を見て、私も嬉しかったし感謝の気持ちが大きくなった。
私も大声でありがと~!と叫びたかったが、素直になれなくて安もんだけどねとか言った。
心の中ではあなたの子で良かったよなどとテレビドラマのセリフのようなことを考えてた。絶対に口に出せないけど(笑)
そんな思い出の時計を死ぬまで使っていてくれた。
使い古されてポンコツになるまで使い続けていてくれた。
たぶん、何度も修理とかしたんだろうな。
子どものことなんかそっちのけで仕事をしていた父だったが、ちゃんと愛されていたんだと実感した。
あの世まで持っていってほしいと棺桶に入れたかったが、燃えないものは駄目だということで、形見として大切に保管している。
父さん、時間がわからなくて困ってないかな・・・
トップの画像は実物ではなく、ギャラリーからお借りしたものです。
inagakijunya(稲垣純也)さん、ありがとうございます。
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