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徳川家康その二

写真は竹千代が人質生活を送った今川家菩提寺臨済寺内の縁の部屋

竹千代と名乗った6歳のころ家康は織田方に誘拐され二年間を織田領内で暮らすことになった。

母との別離に続く第二の我慢であった。織田時代、後に同盟を結ぶ、織田信長と運命の出会いを果たしたと言われています。

しかし父・広忠が若くして死去したため三河国は完全に今川家のものに…。そんな中、義元と戦っていた信秀の長男が、今川家の人質にされてしまいます。そこで竹千代との人質交換を申し出た義元の要求を信秀がのむ形で、八歳になっていた竹千代は今川家の人質となり、今度は駿府の義元のもとで過ごすことになった。これが第三の我慢の時代でした。

結局人質から解放され三河国の岡崎城に戻れたのは、桶狭間の戦いで今川義元が織田信長に討たれたのちの十九歳になってからのことでした。

世間は幼少ながら物がやり取りさるように敵国の人質生活を送る竹千代を憐れんでいましたが実際には結構厚い待遇の中で織田、今川での生活をしていた。

織田家の人質時代は九歳離れた信長と仲が良かったようで、遊んでいる最中信長に池にふざけて落とされるなどよくいたずらをされていたという話が残っています。この期間の二人の関係が、その後の同盟にも繋がったのでしょう。徳川家康には本来は敵である相手にも心を開かせる何かがあった。この何かが関が原の大戦の前大阪方武将の多くを凋落させた鍵であった。

今川家の人質となった竹千代について駿河の守護今川義元は世話役の家臣とその待遇について話を始めた。

義元「松平家の子にはむごい仕打ちをしろ」と指示をした。

家臣「粗末な食事を与え、休みなく日々武術と学問に励まさせます」と返答をした。

義元は家臣を叱り飛ばした。

義元「儂の言うことがそなたは分からぬか。朝から晩まで海の幸や山の幸いっぱいの贅沢な食事を好きなだけさせ、寝たいだけ寝かせてやれ。夏は暑くないように冬も寒くないようにして、武術も学問も嫌がるならさせなくてよい。とにかく好きなことをさせよ」ということだった。

家臣「私には腑に落ちません」

義元「好待遇に慣らしていけば竹千代は自分に好意を抱くであろう。そうすれな反抗心も薄れ扱いやすい武将になるであろう」

実際にはこの贅沢な暮らしは自分が武将として成長していく上で何ら役に立たないことを竹千代自身に気づかせたという。家康がのちにケチと呼ばれた倹約はこの時代に培われたものであった。

竹千代は駿府の今川の菩提寺に落ちついた。その寺や今川館からは箱根連山を睥睨するように素晴らしい富士山が望めた。竹千代はそんな富士山を眺めながら自分の近習や今川の家臣を連れ駿府の西方を流れる大河安倍川の河原によく散策に出かけた。

ある時安倍川の河原で、子どもたちが赤白二組にわかれて石合戦をしていた。
石合戦とは、二手に分かれ石を投げ合ってどちらが強いか勝負する遊びです。

これを見ていた竹千代に、家来の一人がたずねました。
「竹千代さま。どちらが勝つと、思いますか」
 竹千代は赤白両方の組をじっと見つめたまま、しばらく考えました。
「うーむ・・・」
 すると別の家来が、竹千代に言いました。
「竹千代さま、赤になさいませ。
 赤は百人で、白は五十人です。
 むかしから戦とは、数の勝負です。
 数の多い赤が、勝つに決まっています」

しかし竹千代は、首を振って言いました。
「いいや。勝つのは白だ」
 竹千代が自信ありげに言うので、家来たちはびっくりです。
「竹千代さま、なぜ白が勝つとお思いですか?」
 すると竹千代は、家来たちに説明しました。

「確かに数は、赤が多い。だが、赤の組をよく見てみろ。
 赤の組は大勢という事に安心して、半分が遊んでいる。
 残りの半分も、さほど真剣に戦おうとはしていない。
 一方白の組は数が少ないため、みなが真剣に戦おうとしている。
勝つのは、白の組だ」

「うーむ。そんなものでしょうか」

竹千代の説明を聞いても、家来たちは首をかしげていました。

「合戦、はじめい!」
 合図の太鼓が鳴りひびいて、石投げがはじまりました。すると、どうでしょう。

数の少ない白の組が果敢に攻め込み、まさか負ける事はないとのんびりしていた赤の組が、バラバラと逃げ出したのです。

「なんと! 本当に白が勝った!」
 家来たちは、竹千代の物事を見定める力に感心した。

「さすがは、竹千代さま。まだお小さいのに、よくものを見ておられる」
「まこと。このまま大きくなられれば、いつの日か天下を治めるかもしれん」
「いや、きっと天下を治めるだろう」

家来たちの言葉通り、やがて竹千代は人質の我慢が功を結び天下人となったいくのです。

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https://note.com/rokurou0313/n/n6b1bb4886e77/edit


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