見出し画像

イワン・シメリョフとロシアのクリスマス

先日、大学書林の語学文庫を取り上げました。

この記事で『ツルゲーネフ散文詩』の説明の過程で、ツルゲーネフも他の作家に大きく影響を与えており、その一例としてシメリョフという作家について次のように書きました。

ツルゲーネフについては、他にも『父と子』や『初恋』など人気の高い作品も多く、『初恋』についていえば、シメリョフという作家が書いた『愛の物語』という小説でツルゲーネフの『初恋』について言及されており、さらにはこの『愛の物語』をもとにして『春のめざめ』というロシアアニメまで作られています。

この時は、シメリョフが書いた『愛の物語』がLitResには見つからないのは不思議と書きました。

また、日本ではシメリョフの邦訳が以下の書籍で読めることも記載していました。

こちらの本がようやく手に入りまして、いくつかわかりましたので追記しておきたいと思います。

シメリョフの『愛の物語』

上記の記事を書いたのはほんの1か月半ほど前でしかありませんでしたが、当時は「LitRes万歳!」な感じでおりましたので、「LitRes」に無ければ見つからないぐらいのつもりでおりました。

しかし、ツルゲーネフの散文詩もYouTubeで朗読動画がいくらでも見つかることを知り、LitResでは見つからないものも他の場所で見つかることがわかりました。

そういうわけで、今なら慌てることなく、「イワン・シメリョフ 『愛の物語』」で検索してみますと、いとも簡単に見つかりました。原題がわからないのなら多少は工夫が必要でしょうけれども、今回はタイトルがわかっているのです。

検索語:Иван Шмелев История любовная

リンクを貼ると画像がうまく表示されませんが、とても素敵な表紙の本として売られています。

画像1

この絵のトーンは、映画「春のめざめ」のシーンでしたっけ?ちょっと映画を見直してみないといけません。本が出版されたのが2019年となっていますし、こちらの評価サイトを見る限り、挿絵はたぶん映画のシーンから引用していると思われます。

『春のめざめ』の映画はこちら。カバーの絵の左側と同じと思われる女性の絵が挿絵にも見えますね。

著者のイワン・シメリョフは1950年に亡くなっているので、著作権は切れていると思いますが、オンラインでも『愛の物語』は公開されています。

...誰だよ、見つからないなんて言ったヤツ。探し方が悪かっただけ(というより、LitResに何でもあると思い込みすぎ)でした。

『愛の物語』Аудиокниги@YouTube

書籍も見つかりましたし、Googleの検索結果には、オーディオブック(複数の動画に分かれているので、複数形なんでしょうか?Аудиокниги)もあります。

こちらはその1番目のАудиокнига。最初の方にはイワン・シメリョフの紹介が入っています。

『CDブック ロシアのクリスマス』

さて、実際に入手した『CDブック ロシアのクリスマス』には、シメリョフの他に、ドストエフスキイ、ソログーブ、ブーニン、クプリーンと5名の作家によるクリスマスに関する短編の翻訳とその日本語の朗読のCDが収められています。

シメリョフの『クリスマス』

この書籍の第1章がシメリョフの『クリスマス』。先頭を飾る作品です。

和訳で3ページだけの、本当に短い短編です。書籍の最後に「収録作品と作家について」で、各作家と作品について簡単に紹介されていますが、それによると1873年~1950年の生涯で、モスクワの富裕な商人の家に生まれ、働きながら小説を書いたとのこと。

その後、ロシア革命が起き、息子が赤軍に銃殺されたことをきっかけにフランスに亡命し、そこで活躍していたそうです。

本作「クリスマス」は、フランスに住むロシア人(原文はロシア語ですので)に向ってモスクワのクリスマスの様子を語って聞かせる内容になっています。

『クリスマス:Рождество』

シメリョフの『クリスマス:Рождество』の原文もこちらで読めます。例によってロシア語は文字化けしていますが、リンク先はきれいに表示されます。

そしてこちらも例によってYouTubeで朗読音声も見つかります。

ところで、原文の長さに比べて和文が短いとは言え、この長さは何か血が酔うような気がして、力不足ながら和訳とロシア語の原文を比較してみました。

和訳は全文訳ではないようです。「収録作品と作家について」によれば、ソ連時代は祖国では黙殺され、とありますので、底本にしたのが簡略版だったのか、何らかの意図があって抄訳にしたのかは不明です。

他の四名の作品の言語・朗読はまた別途に

イワン・シメリョフの『クリスマス』については、上述の通りです。

他に、このCDブックで取り上げられているドストエフスキイ『キリストのヨールカ祭りに招かれた少年』、ソログーブ『雪娘』、ブーニン『イーダ』、クプリーン『クリスマスの列車で』も興味深い作品です。

ちなみにソログープの『雪娘』は、いくつもバリエーションが存在する「雪娘」の一つだそうで、リスムキー=コルサコフのオペラ化作品とはあらすじが異なるようです。


本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。不明な点などありましたら、コメントいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?