みなみあらた
ことわざを主題に発想した物語です。
人が世界を壊す時代、人新世。人新世に漕ぎ出す、九州連邦。この新しい国の、そのゆくえは?
「静かの海」と翻訳したのは、いったい誰だろう。
こんな風に話してるように思えてしゃあない 争奪戦 1大阪 道頓堀に面したテラスの前にはお洒落な花壇。5月のよく晴れた空の下、その花壇の端を100匹ほどのアリの群れが、浮庭橋に向かって進んでいる。イブ・シティの探索係 第8旅団である。その先頭を並んで歩いている2匹は、第8旅団を率いる団長のマチと副長のイチ。 イチがマチへ話しかける「アンタの後釜は、タマゴ班長やったムラに決まったらしいで」 マチは「そうらしいな、ウチも今朝聞ぃたわ。今、サイ様のお世話係長やるんは大変やで」と眉間
こんな風に話してるように思えてしゃあない 日常ここは大阪 道頓堀に面したテラスの前にはお洒落な花壇。 その地下には、ざっと5万匹の蟻たちが暮らす巨大コロニーイブ・シティが深く深く広がる。今日も今日とて、地下2階女王の間で女王アリのサイとお世話係長のマチが、いつもの朝のルーティーンをかましている。 陽気なマチ「おはようさんですぅ、サイ様ぁ。よう眠らはりましたぁ?」 その声で目を覚ましたサイ「ふぅあぁぁぁ おはようマチ。ゴッつ寝たわぁ もう永遠に目ぇ醒めへんか思たわぁ」 マチ
きのこの山 たけのこの里 ときたらだったら、次は でしょ 1匹だけ…みにくい …「七つの子の巣」 でもイケる おしまい #だったら #だってさ #だよね
9月10日 12:52pm お昼休み 「えッ!?」小雲は大きく眼を剥いて、手元の宝クジとディスプレイの当選番号を何度も何度も見比べる。眼を剥いたまま「当たっ…てる」と呟いて、宝クジに視線を落とした。ビアガーデンの帰りに同僚と遊びで買った宝クジ バラ10枚が、取り出した手帳と一緒にカバンのポケットから飛び出した。すっかり忘れていたその赤い封筒の中に、サマージャンボ1等5億円が...眠っていた。眼を泳がせながら「まずは…ママに」最近の体調不良を気遣ってくれるアイツに、とスマホでメ
たこ焼き定食 があるのなら だったら 雪見定食 があっても良い おしまい #だったら #だってさ #だよね #逆説
ある秋の日 海辺の無人駅に、南から満員のキハ40が到着する。 乗客たちは挙って短いホームに降りると、何人かは脚を止めて真っ青な空へと続く山々に見惚れ、残りの乗客はホームの端に立っている手作りの掲示板へと群がる。 最近SNSやニュースで話題になっている、この村の掲示板たち。 ホームの掲示板には、1枚の写真と その下に青い文字が続く。 村へ豊穣の水を届けた美しい川は、やがて豊かな恵の海へと流れ出ます。 まるで水平線から続く朝日の道へと向かうかのように。 ファーーン 数人を乗
注:『 』は心の声です。 次の朝 6:00am 『起きなさい乙女 起きるんぢゃ』 乙女は目を開けず、なんやの顔で『んぅぅぅ』 『起きろ』 うっすら目を開け、怒った顔で『うるさい』 『むぅぅぅ 外さん 内さん 懲らしめてやりなさい』 外さんと内さんが、そろって声なく〆あげる ギュギュギュッ ギュアグウウウッー 「ギャァアア 何すんねん」と乙女は目を見開いて大声で飛び起きた。 『先ず 腸より始めよぢゃ よいな』 乙女はまだ反抗顔で『うぅぅぅ』 『最初はツボから
注:『 』は心の声です。 『あかん、今日も出ぇへん』イキみ疲れて便座で頭を抱える西 乙女。 『なんでやねんな いっそがしい朝に一瞬でヤッつけたろ思とんのに、もう3日目やで…何が邪魔しとん』そして、もう一回イキもうとしたその時、 『なっとらんのぢゃ』と乙女の心に声が響いた。 乙女は、鬼の形相で便座から飛び上がり、辺りをキョロ見する。 『そんなに躰を固くしたらもう無理ぢゃ 外さんも内さんも驚いとる』 顔面蒼白の乙女は、声の主を探しながら『だ だ 誰や』 『カッカッカッ
はじまり 「どっかに...ないかな」 北 美麗は、検査衣にガウンを羽織って、一階の広い通路をキョロつきながら奥へと向かう。 平日午前のごったがえす通路で、患者たち、看護師たち、そして医者たちも、美麗を見ると息を呑み、見蕩れ、立ち止まり、目で追う。 身長168cm、細身で真っ白な肌に大きな瞳、雑誌から抜け出たような場違いな美人が、不釣り合いな病院着で、いま、整形外科の前を通って辺りを伺いながら真っ直ぐ奥へと歩いていく。 美麗の顔が見えなくなると、見惚れていた人は皆、魔法から解
中編で、月面地形の和名を統一したのは日本天文学会ではなさそう、な感じでしたが、天文月報の思わぬところに突破口がありました。 では、ナゾ解きの後編です。 1960年の天文月報を読んでいくと、 天文月報 1960年(昭和35年)11月号 の目次に広告があります。 東京天文台 関口直甫著「月面裁判」 300円 中野繁著「月面とその観測」 380円 「月面裁判」! なんですか、それ! 関口氏は、中編に出てきた 天文月報「月への飛行の力学」 を書いた方ですね。 … どっちも図
前編で、明治41年から現代まで続く「天文月報」という手がかりに辿り着きました。月面地形の和名の記録があるのか? ナゾのゆくえは? はてさて、どうなりますか。では、中編です。 天文月報 1911年(明治44年) 8月号 雑報「月の各点の光の差異」に、 『此差違は「海」の部分にて特に著し。』 月の地形の呼び名が、なんらか存在するみたい。 それにしても、初めての明治の雑誌ですが、割と読めるモンですね。 天文月報 1914年(大正3年) 3月号 雑報「月面に於ける火口の変化」に
初めて不思議に想ったのは、いつだったっけ。 月が話題になると、想い出したように調べて、すぐに行き詰る。 着陸できなかった ispace で、また想い出した。 「静かの海」と翻訳したのは、いったい誰だろう。 どうして「静かの海」なのか? アポロ11号が降り立った月面の海の名前をウィキペディアを引くと、 ラテン語名は、Mare Tranquillitatis 英語名は、Sea of Tranquility とある。ここまでは、ネットが無い時代でも辿り着けた。 Tranqui
完 未来は 2024年4月6日(土) 10:30am 有明海 潜水艦隊 緑川から加勢川へと、遡上を続ける大国海軍 上陸部隊。 700人の海軍兵を乗せたゴムボート140台が、50mの川幅を長さ50mに渡って埋め尽くし、11ノット 時速20Kmで、侵略目標 健軍水源地の入口 江津湖まで、あと15分のところを進んでいる。 緑川河口では、上陸部隊へ届ける重火器の輸送が始まっている。 いま輸送型潜水艦のハッチから甲板へ、ロケットランチャーが数台運び出された。別のハッチから次々に飛び
結 黒船4 2024年4月6日(土) 10:08am 九州大学 知能研究室 椅子に縛られた小森助教授の目の前の床が波打つと、ウェブ男が波紋から飛び出し、足をバタつかせて天井まで飛び上がった。 続いて飛び出してきた猿に、研究員も戦闘員も「エッ」っと固まる。 誰よりも、小森助教授が目を剥いた。 タケルは波紋から飛び出すと、目の前に広がった研究室の風景に驚いて 「エッ? な なにココ 実空間? なんで?」 「タケルゥー!?」”どうしてココに調”の声へ目を向けたタケルは 「先生
結 黒船3 2024年4月6日(土) 9:05am 健軍1丁目X-Y 「ふぅあぁ〜ぁ」 ベッドで大きく背伸びをすると、東 武はようやく目を覚ました。 「ん?メールが...なんだこりゃ」 チラ見したパソコンに、ものスゴイ数のメールが届いてる。 subject:「何してる!タケシ」だの、 subject:「ヤタガラスの大群バイ」だの、 subject:「早く来い」だの、何十通も、オンライン教室のみんなから。 「えぇぇぇ、なんだコリャ、大変だぁ」 サイバー防人に参戦しようと、ア
結 黒船2 2024年4月3日(水) 五島列島沖に横陣した大国 太平洋艦隊に、九州連邦 大統領府は、連邦海軍第三艦隊と第四艦隊を長崎 樺島沖12海里の領海に展開しました。独立を宣言した北海道と琉球への軍事支援で派遣した第一艦隊と第二艦隊を欠いている今、もし開戦となれば、圧倒的な海軍戦力の差は本土決戦を意味します。大統領府は、大国大使館との交渉を進めながら、大国軍の上陸を阻止する防衛線設営のために、九州全土から陸軍と警察を首都長崎に集めますが、4日の真夜中になっても首都は混乱