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「持ってるね」

 私はアンラッキーを引き寄せるのが上手い。1つ運が悪かった、という出来事が起こると、芋づる式に運の悪さを発揮する。

 例えば、突然雨が降り出して、家に帰り着いたら止むことはいつものこと。行きたかったお店が閉業していたり、たまたま定休日だったり。大型ショッピングエリアの、半年に1度の全店舗休業日を引いたこともある。そして恐ろしいことに、これらは1日の中で立て続けに起こったりする。

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 これを笑えるようになるのは難しい。私が引いたアンラッキーは、他の誰かのラッキーにつながっている、と思おうとしても、でもやっぱりいいことは自分に起きてほしいと思ってしまう傲慢な人間なのだ。

 最近気づいたのは、どうにかして客観視できるようにするのがポイントということだ。私の場合はこうやって文章に書いたり、夫に話したりする。どうしても周りに言えない状況なら、少し離れた場所にもう1人自分を作る。自分で自分を笑うのだ。これで私の苛立ちや嘆きは昇華され、アンラッキーはおいしいエピソードになる。

 ある日、私のアンラッキーエピソードを夫に話していると、「持ってるね」と言われた。そうだ。アンラッキーがたくさん起こるということは、何かしら『持っている』のだ。だから客観視するとおいしいエピソードになるのだ。

 次アンラッキーが起こったときは、夫の「持ってるね」と言った不敵な笑みを思い出して、笑ってしまおうと思う。

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