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自由詩「メヌエット」

    こんばんは。ローランです。
    今日は、昨日Twitterで言葉の添え木さんによるお題「メヌエット」で書いた詩を改訂したものです。フランスの小説「アンジェリク」のオマージュ作品です。
    Twitterでは文字数がやはり少なくて、状況説明がしきれていないなぁと思いました。
    では、今日もお楽しみ頂ければ、幸いです。

森の小径をイメージして

「メヌエット」

ここ数年出征続きの我だったが
たった今まさかの天恵がもたらされた
数日前に戦場から急に呼び戻され
渋々出仕した宮廷
太陽王から
唐突に我が花嫁を知らされた
披露された花嫁は
緑の瞳が麗しい
いとこの君だった
君は裸足で外を走り回る快活な少女だった
鬱陶しいほどいつも元気で
作法からは程遠い振る舞い
天真爛漫な君は
見ていて厭きなかったな
だが君は私が戦場にいる間に
他の男と婚姻を結んだと聞いていた
ああ、王命で引き裂かれたか
君の心はいかばかりだろう
気の毒とは思うが
陰謀渦巻く宮廷で生き残るには従うしかない
陛下が忠臣である我に君を娶らせるということは
忠誠を誓うなら妻を差し出せ
そういうことだ
意図に気づいたとたん
これまでの幸せな気持ちはすっかりなりをひそめる
我はポーカーフェイスをつくり
君にごきげんようと声をかける
衣擦れの音
煌めくシャンデリア
囁き合う声
涙で潤む君の瞳
熱を含んだ王の瞳
あきらめの風にさらされ凍る我の瞳
我は静かにため息を一つ吐く
そして君との距離をはかりながら
ひとときの夢に踊るメヌエット

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