私は「まぁ」から話はじめない

好きな人を好きじゃなくなると、好きな人からもらっていた癖が私の中からでてゆく。賑やかな場所へ出かけたくなる衝動も、よく笑うことも少しアゲみでポジティブになれることも全部、好きな人からもらっていたんだと気づく。私は、好きな人に出会う前のなんでもなかった私に戻っていく。最近それに気づきはじめて、好きじゃなくなったことが寂しくて、好きだったことがうれしい。


失恋した日に貯めてたTポイントを使い果たして詩集を一冊買った。表紙に惚れた。中に詰まっていた言葉たちは行き場のないわたしを受け止めた。帰ってきてから気づいたけど、塩川いづみさんの絵に惹きつけられて本を買うのは二度目だった。私はこの人のことも好きなのか。無意識というものは意識の神格化だわ。三度目も起こるだろう。


なんとなく人生でこの先、失恋なんてものはもうしないだろうと思ってた。まだ22歳だから見切った考えだった。好きになろうが他人は他人だと、割り切っているつもりだった。とんでもねえな、考え方まで貰ってしまって、私の中身は好きな人が持ってるもので多少は形成されてたらしい。他人どころか自分だった。


おちこんでるから友だちに甘えよう。慰めたまえと言わんばかりにずかずか友人宅にあがりこんで歌を歌い、コンビニスイーツを半分こ。しまいにはうとうとし、うどんをたべにいき、また歌う。私の友人、私が話し終わると決まって 「まぁ..」といい話はじめ、なぐさめてくれる。「まぁ」につづく言葉よりも、「まぁ」のくだりに気づく程たくさん話を聞いてもらってたことが宝物。私は友人のことがすごく好き。だけど、「まぁ」はわたしの口癖にはなってくれない。





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