見出し画像

パリ旅2020④iPhoneを盗まれた話(1)


そうなのです。

海外旅行(滞在)歴もひとり旅歴もそれなりにあり、ドキドキハラハラな経験もそこそこしていながら、実際的な痛手を受けることなくここまでやってきたのだけど・・・、今回、初めて盗難(スリ)なるものに遭いました。

それも、命綱のiPhone、しかも、パリ到着2日目!!

いやぁ・・・

iPhoneがない!と気づいた瞬間の頭真っ白加減といったら、なかったな。

プランA, プランB, プランC・・・普段ならどんどん頭に浮かぶけど、さすがに、「すべてが詰まった」iPhoneがない、という状況に、とりあえず思考は停止した。

時は夜の19時半頃、ルーブル美術館の近く。

買い物をして、宿泊先までバスで帰ろう、と思っていたのに、例のストにより、待っていたバスがサービス変更だかで来なくなったのがわかり、仕方なくメトロの駅を目指してボチボチと歩いていたときだったのです。

大して混んでもいない路上で「トン」と誰かにぶつかって、そのあと、なんとなくこちらを気にしているような若いカップルと目が合うな、なんか嫌な予感?と思いつつ、スルー。それでも、ちょっと経って、ふとポケットに手を入れたら・・・そこにあったはずのiPhoneが、ない。もちろん、さっきこちらを見ていたカップルも、いない。

あ、やられたかもしれない・・・!!!!!!!

今思えば、それなんです。

たぶん、あの若いカップルに、やられた。
メトロの駅を探して、Google mapをチェックしたあと、ポケットにするっと入れたiPhoneを、盗られた!

とりあえず、頭真っ白のままに、「どうしよう、どうしよう」と(本当に声に出して!)つぶやきながら、来た道を引き返し、落とした可能性にかけながら、祈るような気持ちでパタパタと人通りのいないルーブル美術館の前を行き、帰り。

でも、やっぱりない・・・

ルーブルのピラミッドを前に楽しそうにセルフィーしているアジア系の若者たちを横目に、ウロウロ。。。


荘厳な彫刻たちが頭上から見下ろしている、心配そうに。
たぶん、こうやって金品失くしたかわいそうな旅行客をごまんと見てきた彫刻たちが。

そして、美しい月が光っている。ヤケにシュールな状況。

あー・・・・・・
どうしよう、どうしよう・・・

iPhoneには、旅の、というか、わたしのすべてが入っているわけで。

ほとんど無計画でやってきたパリの街。

東京で暮らしているのとほぼおんなじで、すべての行動はGoogle mapはじめGoogle先生にすべて頼りきり前提で、宿泊先の最寄駅も、住所すらかろうじて覚えているくらいで、路線情報もガイドブックも地図も持っていないし、行きたいお店のリストも、やりたいことも、全部iPhoneに入ってる。

Airbnbだからフロントもいないし、macもiPadも持たずに来たから、オーナーに連絡も取れない・・・

コミュニケーションツールを失った以上、誰もわたしの所在さえわからない状態。

・・・こわっ・・・と、
旅慣れたつもりの自分でも、一瞬本当に怖くなった。

日本の家族や約束していた友人たちにどうやって連絡を取ったら?
そうそう、とにかく、わたしin troubleなことを知らせるために、家族や、(翌日会うことになっていた)友人に連絡を入れなくては!!!

いっそパスポートを落とした方が、事はシンプルだったかも・・・なんて、不謹慎なことが頭をよぎるくらいに、ぼーっとしながら、とりあえず、近くにあった高級そうなホテルに飛び込んで、コンシェルジュのおじさまに声をかけた。

事情を説明すると、「I'm sorry to hear about that...」なんて言いながら(たぶん、ルーブル美術館屋根上の彫刻たちに負けず劣らず、そういう旅行客をいっぱい見ている。コンシェルジュも。)、事務所からノートパソコンを持って来て、「好きなだけ使っていいよ」と、ゲストログインを許してくれた。

ホテルのフロントの片隅で、ちょっと落ち着かない指先で、慣れないフランス語配列のキーボードをカタカタと、とりあえず、iCloudにログインしてfind my iPhoneを試そう・・・にも、「2段階認証」の罠にハマり!何にもできない!
(携帯を失くしたというのに、携帯SMSに送られた暗唱番号を入れないとログインできないという・・・。これは、LINEとか他のアプリ系も全部そうで、今回、セキュリティ強化の弊害?もなかなかつらいものがあるなと実感・・・・・)

フロントのおじさまと、「なんてこったー!!2段階認証なんてこったー!」と騒ぎながら(場所柄、あくまで紳士的に騒ぎながら)、頼みの綱は、facebook。

ブラウザ対応しているサービスのありがたさを痛感しながらfacebookのmessengerで、家族や友人への連絡に成功したのでした。


コンシェルジュのおじさまと会話しながら、家族や友人にmessengerしながら(残念ながらリアルタイムでの返答はなく、とりあえず一方的に連絡を入れただけに留まったのだけど)、だんだんわたしの思考回路も戻って来て、ああそうか、iPhone買うという手があるのか!と思いついたら落ち着いた。

盗まれたのはSIMフリーのiPhoneなので、つまり、そもそも「がわ」があればなんとかなるのだ。日本で使っているSIMは手元にあるので、帰国後は困らない。とりあえずiPhoneゲットして、旅行用の現地SIMを入手すれば、大切な思い出(写真)含めたいていの情報はクラウドにあるから、実は大した痛手は被らないのでは・・・?
(いや、iPhoneという高級品を“想定外の局面で”買わなくてはならないというのは、痛手に違いないけどね・・・お金で解決できるなら・・・くっ。。。)


そうだ、きっと大丈夫。。。。。。。


時間はもう21時をすぎていたので、Appleストアの情報を調べてメモって、決戦(?)は翌日に持ち越された。
(翌日は日曜日だったけれど、今のパリではAppleはじめ結構な数のお店が日曜日も営業をしている。昔とは大違い!)。


そう、なんとかなる!!なんとかするわ!!
と、気を取り直すことができたので、いつまでも(PCがあって心強い)フロントに居座るわけにもいかないから、出発することにした。


コンシェルジュのおじさまから、昔ながらの「パタパタ地図(折りたたんでポケットに入れられるやつ)」を頂戴し、近くの警察署を教えてもらって、お別れした。「本当に大丈夫?」と何度も聞いてくれた。うん、大丈夫じゃなかったら、またフロントに戻ってくるよ!(←迷惑)
1時間、正体不明になりそうな動揺を治めるのにお付き合いいただいた。
いいおじさまで、本当、よかった。

ホテルの中は暖かかったけど、1月のパリの夜、外はしんしんと冷える。

そういえばお腹も空いて、血糖値も下がって身体も冷たいなぁ。
危機感と興奮状態によって、忘れていたよ、そんなこと。

なんとか部屋に帰り着いて、
ワインを飲んで、熱いシャワーを浴びて、
テレビは観る気にならなくて、
ベッドのうえに座り込んで、起こったこと、起こってしまったこと、ほんの数時間のbeforeとafterを思い浮かべて、ぼんやりした。

一寸先は闇・・・
闇とは言わずとも、こうやって一瞬で、いろんなことって、変わるんだなぁ、と。


そうして、小さな部屋でひとり、あぁ、今わたしがここにこうしていることを、誰も知らないんだなぁって、誰にも教えられないんだなぁって思ったら、なんだかすごく不思議な気持ちになった。


もう、恐怖というよりは、不思議な気持ちに。


携帯を持つようになって久しくなって、「誰かとつながれない」ことなんて、ほとんどなくなっていたんだとしみじみと思った。


もう20年も前とかの学生時代にひとり旅をしていた頃は、確かにそんな気分だったんだ、いつだって。


ソーシャルから切り離された自分を。
なんでもない、そこに存在する人たちの、誰にもなんの価値のない自分を。
なにもできない、なにものでもない、自分を。

静かに感じて、ただただ自分の内側だけを感じる旅を、してたんだなぁって、思い出して 。

日本からひとりで飛び出しては、ひとりで勝手に寂しくなって、ハラハラドキドキして、自分を知って、自分と生きていく覚悟を決めて、そういう時間が、自分をつくってきたのだった。


そう、なにをしていたって、だれといたって、いつだって「1分も1秒も離れずに、身も心も一体で、そうやって最後まで付き合いきるのは、自分にとっては自分だけなんだよね」。


って、はい、どんなポエムを並べたところで・・・
わたしはぼやーっとしていてiPhone盗まれた、ただのあわれなアラフォーです!!

と思ったら、もはや切なさと可笑しさで、
恐怖も疲れもすっとんだ。


阿呆だな、わたし・・・!


「おやすみモード」をONにしなくても、誰もわたしの眠りを邪魔しない、夜に。
まったく無音の、パリの夜。

ぐっすり眠れる・・・はずもなく、そんなことも、また、切なくて可笑しい。


ここまでの教訓:

・iPhoneはポケットでなくバッグにしまおう
・「全部その場でGoogle先生に聞こう〜」もいいけど、とりあえず宿泊先の住所くらいはメモっておこう
・フライトのeチケットは念のため印刷しておく
・普段使っていなくても、重要な人(連絡先)とはfacebookで繋がっておいた方がいい
・2段階認証の制限を外しておくことも一考
・GmailとかfacebookとかのPW、忘れてがちなので注意。再発行のメールすら確認できない!というドツボに!
・スマホは断然SIMフリーがおすすめ
・インフォメーションや駅などで手に入るアナログな地図や路線図も持っておくと保険になる
・「仕事から完全解放だ デジタルからも極力解放 うぇーい!」と思っても、やっぱりPCかタブレットか、とにかく「もう1台」は持って行った方がいい、ひとり旅ならなおさら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?