2/13JR大阪環状線京橋駅8時8分発

細く微かな雨を弾き飛ばしながら電車がホームに滑り込んでくる。大気も過剰すぎる水気をはらんでいて分厚い風を巻き起こす。
屋根から漏れて落ちてくる雨水が、ホームに水溜まりを作っている。わずかな水溜まりを見て零した赤ワインではないかと錯覚する。安物のプラスチックボトル。安易なデザインのラベル。なぜか薄暗い水溜まりが握れば凹むボトルを思い出させるのだ。そして、今週どこかでワインが無性に飲みたくなる確信を伴う予感。悪酔いをしなければよいが。

電車の中は陰気に満ちていた。元気に首を動かしたり、お喋りを繰り返すのは学生ばかりで、一週間の消耗が始まる社会人にとっては憂鬱へ向かうだけの時間だ。陰気になっても仕方がない。私はリュックの持ち手に傘を引っ掛ける。家を出てから傘を開いてはいない。わずかな雨をシャワーにして歩くのが好きだった。

手抜きの空が窓から広がる。ほとんど変わらない濃さのグレーの空。どこまで行っても。そう思うと、途端に街並みがジオラマになって、電車もプラレールみたくなる。作り物のインフラ、作り物の月曜日。

雨になると、レールのノイズが減る。うるさくなるのは足音ばかり。どこまでも電車に乗っていたかった。

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