苦手になった話
私は傘の尖った部分を後ろ向きに振って歩く人に刺されたことがあり、配慮しない人がとても苦手だ。
その他にも貸した本のページを舐めてめくられるとゾッとするし、X(旧Twitter)でお金配り関係の投稿にいいね押しまくってる人も苦手。
だけど今日は人間にまつわる苦手の話ではなく、違う種類の苦手について話そうかと思う。
ジョナサン
私がまだ小学生の頃、一軒家に母と二人暮らししてる時があった。
全て木造建築の家で、持ち上げるように横にスライドしてドアを開けないと開かないぐらい古いお家だった。
前の住人がガーデニング好きだったこともあり、
庭には色んな植物が植えられていたが、私たち親子は一切の手入れをしておらず、庭がアマゾンのように野生みをおびていた。
そんなジャングル感満載な庭先でみどり色のでっぷりとした大きいイモムシを発見してしまった。
触覚は生えていなかったものの、綺麗な黄緑色のボディーに少し不快に感じる目玉模様。
見つけた初めは目玉模様が怖くて正直気持ち悪いと思っていた。
悲鳴をあげて母に報告すると
『可愛いじゃん。蝶々になるんだよ』と教えてくれ、せっかくだから育てて羽化させてみようとなった。
母に虫かごへ入れてもらい、私はイモムシにジョナサンと名前をつけた。
ジョナサンは四六時中もぐもぐしていた。
もくもぐしては排泄しての繰り返し。
捕まえた当初は目玉模様に気味が悪いと思っていたのに、育てていくうちに愛着が湧き、手のひらに乗せたり徐々に触ることができた。
たぷたぷして、つるつるして、魅惑のボディー。
寝る前はジョナサンにおやすみのキスまでしちゃって、私たち親子は完全にジョナサンの虜になっていた。
しばらくしてジョナサンは蛹になった。
あれよあれよと固くり、羽化はもうそろそろと差し迫っていた。
いつ生まれてもいいように虫かごから蛹をだし、育てた我が子の羽化に立ちあいたいとよく見つめていた。
今日こそは見張ってやるんだと思っても睡眠欲には負け、寝落ちしてしまったある朝、ジョナサンの蛹はいなくなっていた。
やった!やっとジョナサンが羽化したんだ!
綺麗な蝶々になったんだ!
興奮して母を起こし、家の中にいるジョナサンを探した。
探しても綺麗な蝶々は見つからなかったが
台所にある蛍光灯にアブのような太った茶色の蛾がしがみついてた。
ジョナサン…………?
マミーあれがジョナサン?
母は何も言わずに蛾を捕まえて外に投げた。
ミステリーハンター
中学生の頃、学校から自宅まで徒歩40分も時間がかかる距離だったが、帰り道の一人の時間が私はとても好きだった。
わざと遠回りしてみたり、大通りを歩いてみたり、決まった帰り道を作らず色んなルートをよく試して歩いていた。
数々ある帰り道の中で360度、見渡す全てがサトウキビ畑の道が特に好きだった。
サトウキビ畑の道は歩いてる人を見ることもなければ、車両が通りすぎるのすら見ることもない。
大きな声で歌っても誰にも聞こえない、40分間私だけのシークレットタイム。
ある日私は誰もいない静かなサトウキビ畑で
世界ふしぎ発見のミステリーハンターになっていた。
『今日私は沖縄県北部にあります、伊是名島の内花にきております!
見渡す限り緑の絨毯、サトウキビ畑です!』
オーディエンス0の中、一人で木の枝をマイクに見立てて喋っていた。
目につくものをリポートしてみたり、一人でノリノリになっていたその時、ふと目の前に折れかかっているサトウキビがあったので手ではらった。
触ったサトウキビに何かついており、手に目をやるといたのよ、あいつが。
人生ではじめましてのカメムシだった。
手についている緑色のアイツを指で捕まえて、なにこの虫?って近くでみてしまったのよ。
とんでもない激臭。臭いとかじゃないぞ。
目にきたもん。
さっきまでミステリーハンターだった私は一匹の小さなカメムシにパニックを起こし、激臭をまといながら40分間の道のりを帰ったのだった。
カメムシもまさかこんなところにミステリーハンターが来ているとは思わなかっただろうね。
新種の大発見
ある日シャワーを浴びていたら壁にみたこともない、気持ちの悪い虫が張りついていた。
見た目はムカデの脚をモデルのようにスラッと長くしたような感じ。
生まれてこのかた見たことも聞いたこともないモデル虫を両親に見せたところ見たことないと。
家族でこの気持ちの悪い虫はなんなんだと話題になり、私は新種発見という謎の高揚感に包まれていた。
この大発見をみなに見せなければ。
使命感に駆られてしまい、急いでジップロックに入れて冷凍してエンジェルちゃんにした。
次の日ジップロックを学校に持って行き、友達らにモデル虫をお披露目した。
みんな驚いて大発見だと騒いでくれると思っていたのに教室は悲鳴に包まれ、
気持ちが悪い、吐きそう、見せないでのブーイングコールの嵐。
渋々ジップロックを捨て、あれから15年。
結局あの虫はなんだったんだろう。
月日が経っても正体不明のままであった。
私が発見したあの虫をどこか知らない学者に見つけられてしまい、知らんおっさんの名前を付けられているのではないか。
寝る前に思い出しては悔しい気持ちが込み上がった。
そんな中去年、おろちんゆーさんというユーチューバーがあの時発見した虫にヒューマンビートボックスを聞かせる動画をアップしていた。
※ランク下に貼ってるので苦手な人は目を細めてください。
なーんだ。
ゲジゲジって一丁前の名前付いてるじゃん。
発見した私の名前付けたかったのにさ。
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?