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漠然と「好きなことを仕事にしたい」と考えている人たちへ

漠然と「好きなことを仕事にしたい」そう考えている人は多いだろう。しかし、私は基本的には好きを基準に仕事を決めることは得策ではないと考えている。好きを基準にするのであれば得意を基準にしたほうがよい。今日はつらつらとそんな話を書いてみたい。

理由1 仕事は本質的に自分のためにするものではなく、社会やt他人に価値を提供するものだから

仕事の本質を考えると、仕事とは「社会に対して提供した価値に対して対価をもらうこと」と定義できるかもしれない。そう考えた時に、社会貢献しやすいのは圧倒的に好きなことより得意なことだ。私は将棋も好きだしピアノを弾くのも好きだが、将棋もピアノも仕事にはなり得ない。得意のレベルが社会に貢献できるレベルに達していないからだ。大谷翔平が多くの人を魅了しているのは、大谷翔平が野球を大好きだからではなく野球のプレーが素晴らしいからだ。

理由2 好きなことだから頑張れる、は大抵幻想だから。好きな気持ちは容易に嫌いに変わり得る。

今回、一番私が主張したい部分はここかもしれない。「好きなことだとつらいことがあっても頑張れるので好きなことを仕事にするのが良い」という意見を聞くことがあるが、これは結構ダウトだ。

私の好きな小説に「将棋の子」という小説がある。この小説は将棋のプロを目指して研鑽するがあと一歩のところでプロ棋士になれなかった若者に焦点を当てた小説だ。そしてここでのポイントは、この小説で描かれている若者達の多くは、将棋に勝てなくなったきた段階で段々と将棋が嫌いになり気持ちが萎んでいくということだ。

私の周囲を見ても、好きなことをやっていても他人(世間)に認められないと、次第にモチベーションは下がっていく。残念ながら多くの人にとって仕事を継続するためのモチベーションは圧倒的に「社会承認」>>「好きという気持ち」だ。上司に褒められて昇給した、顧客に成果を褒められた、作った作品が世間的に評価を得た、そんな喜びがあるからこそ人は仕事を頑張れる。「好きという気持ち」は最も頼りない心の支えだ。好きという気持ちは社会承認を失うと容易に崩れ、好きなものは容易に嫌いなものに変わりうる。

理由3 人は自分のためよりも他人のためのほうが頑張れる

理由2と似た内容になるが、自分のために頑張るというは意外とつらいものがある。好きなことだと自然と努力できる、という意見を目にすることがあるが、これもダウトだ。なぜなら野球選手を目指す人でも野球はすきだが、走り込みは好きではない、というケースが多々あるからだ。もっと一般的な仕事のケースでも、顧客との商談は好きだが、上司への報告は嫌いだというケースもあるだろう。ある仕事が本質的に好きでも、仕事に含まれるタスクの全てが好き、というケースは稀だ。

「好き」を基準にすると、どうしても「つらいことがあっても仕事だから我慢して」という考えが薄れてしまう。そもそも好きが基準なのだから、好きで選んでいる仕事でつらい思いをするのは矛盾している、という考えに流れがちだ。「結果を出すためにどうすればいいか」を必死で考えて仕事に取り組むほうが頑張れる。畢竟、好きを基準にすると成功できる可能性は下がると思う。

理由4 成功できなくても稼げなくても好きなことが出来ていれば幸せ、という人は少数

ごく一部こういう人もいるのだが、残念ながら少数派だ。多くの人は20代の時はまだよくても30代、そして40代が近づくにつれ「好きなことだけやっていれば人生幸せ」という考えに疑問を持つようになってくる。年を取るにつれだんだんと自分の人生が不安になり、劣等感や孤立感にさいなまれたりすることになりやすい。若いうちから過度に老後の心配をして貯金にいそしむような人生も個人的にはどうかと思うが、ある程度の収入は精神安定剤として必要だ。そして収入よりも大事なのは社会の構成員として自分はちゃんと存在できている、という実感だと思う

まとめ

結局、仕事を選ぶのにその仕事が好きかどうかはあまり関係ないと思う(あえて嫌いなものを選ぶ必要もないが)。ましてや、大学生が就職活動をするにあたり、自分の好きをひねり出して考えるような行為は全く無意味だ。自分に正直に生きる、という側面が近年あまりにもてはやされ「社会のため」や「家族のため」という考えが少し時代遅れの考えのように思っている人が増えているのは、ちょっと残念な気はしている。

私が仕事をしているうえで最も幸せを感じるのは「必要とされている場所で自分の力を発揮し、価値を創出できている時」である。将来の仕事選びに迷っている人は自分が好きなことではなく「自分が最も社会に貢献できるのは何なのか」を考えてみることを是非おすすめしたい。

将棋のプロ棋士になれなかった奨励会員(将棋のプロ養成機関)にスポットをあてたエッセイ。せつないけど大好きな本です。

承認欲求について興味がある人には是非お勧めしたい本。少し前にはやったアドラー心理学の解説本ですが、学校教育で教えるべきと思っているほどの良本です。心理学本ですが直ぐに生活に生かせる実践的な本。


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