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30歳のクリエイター兼経営者がTencent(腾讯)グループと資本業務提携するまでの歩み


「大谷翔平だって投手も打者もやっているんだ。僕はクリエイターと経営者を一生やりたい」

投資家の方とお話している時に「君はクリエイターをやりたいのか、経営者をやりたいのか」と聞かれた時に、僕が答えた言葉である。

2017年12月——資金調達も、アプリ開発も、全くの無知の状態でチャット小説アプリ『peep』をリリースした。無事にリリースできた事自体が奇跡な状態だった。

リリース後、ユーザーからの反応は良く、僕はプロダクトの改善とコンテンツの制作に没頭していた。

数カ月後にやってくる資金ショートにも気づかずに——。

自己紹介

はじめまして、taskey(タスキー)株式会社の代表取締役CEO・大石弘務、またの名を大石ロミーといいます。

ロミーって何?と思われ方もいらっしゃるかと思いますが、冒頭書かせていただいた通り、僕は小説家をしながらtaskeyの経営をしていますので、大石ロミーという名前がクリエイターの際の名前となっています。

こちらが代表作です。


弊社の創業は2014年8月で、当時23歳だった僕も30歳になってしまい、今期で8期目を迎える会社となりました。

taskeyは、e-Storyアプリ『peep』を運営しています。

どんなアプリなのかというと、この画像のように……

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チャットを読むように物語を読み進めることができるアプリとなっています。

スクリーンショットのこの作品はpeepリリース当初から掲載している作品で、僕が執筆したものです。

ひょっとしたらpeepだけではなくYouTubeの実況動画で見たことがある方も多いかと思います。

リリース当初は「チャット小説」と呼ばれ、このようにチャットのやりとりで物語が成立するのが特徴でした。peepをリリースしたのは2017年12月ですので、リリースからは約3年半が経ちました。

3年半での実績としては

スクリーンショット 2021-06-27 20.23.33

300万ダウンロードを突破
月商数千万円まで成長
● 人気作品は100万人の読者を抱え、漫画単行本も発売

となり、新しいエンターテイメントとして大きく進化を遂げてきました。

そして、2021年6月。
プレスリリースでも発表させていただきました通り、taskeyは中国・Tencent (腾讯)グループとの資本業務提携を実施いたしました。

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リリースは日経の誌面にも掲載されました。

調達した金額の情報は都合上、非公開とさせていただきましたが、海外展開をするに充分な金額を集めました。

この発表と併せて、ここまでの会社の歩みをぎゅっとコンパクトにまとめて書かせていただこうと思っているのですが……

実は僕、今回が初めてnoteとなります。今も実はnoteの書き方をググりながら必死に書いているところです。

特にサイレントで事業を進めていたつもりはないのですが、僕は今まで積極的に事業のことについてあまり外部へ発信していませんでした。

しかし、じゃあなぜ今回僕がnoteを書こうと思い立ったかというと

それはずばり「僕らの仲間、エンタメで挑戦する人たちを増やしたいから」です。

そのためには僕らの会社を知ってもらう必要があります。

だから、このnoteで僕がアジアNo.1の時価総額を誇るTencentと資本業務提携に至るまでの歩みを、赤裸々に綴っていこうと思います。

昨今、韓国や中国のエンタメは目まぐるしく成長し、アジアから世界へと進出する企業はそれぞれ素晴らしいと感じてます。

その一方で、日本で生まれた僕らからすると「負けてられない」という嫉妬と悔しさの混じった感情が湧いて出てきます(僕は相手がどんな大物でも嫉妬する癖があります。ディズニーでも、BTSでも、宮崎駿監督でも)。

僕らはこれから日本のみならず、海外でも僕らのIPコンテンツを展開していきたいと考えています。

そんな僕らに共感していただき、何か一緒にやりたいと思った方はぜひTwitterで僕にDM、もしくは会社ホームページからお問い合わせください。一緒に何かできそうであれば、どんな関わり方でもOKです!
https://twitter.com/oishi_romy

それではまずはpeepの生まれる前である2016年にタイムスリップです〜。

もう小説は若い子に読まれないのかも


2016年、僕たちは完全に行き詰まっていました。
当時、taskeyでは社名と同じ名前を付したサービス「taskey」を運営していました。

taskeyは小説家が小説を投稿し、それを不特定多数の翻訳家がまるでWikiを編集するように勝手に翻訳ができるというサービスでした。

日本には「小説家になろう」さんのような月間数億PVを誇る巨大なサイトが存在していたので、当然そこと競い合う戦略は取らず、日本のコンテンツをどうにかして海外へ届けたいという、今となんら変わらない思想で運営していました。

しかし、小説家のユーザーと翻訳家のユーザー、国内の読者ユーザーと海外の読者ユーザーと、どっちが優先度高く、一体どこから集めるか?という超難題にぶち当たり、戦略が空回りを続け、クリエイター登録数は1万名まで成長しましたが、グロース及びマネタイズには相当苦戦を強いられました。

当時、会社は4名で運営しており、システム受託開発でどうにかこうにか食いつないでいる状態となりました。

一方で僕は作家としても活動をしていました。
活動のきっかけは完全に小説家投稿サービス「taskey」のおかげでした。
僕はまずは小説家の気持ちを知らないと投稿サイトの気持ちいいUI/UXは作ることはできないだろうと、他社の投稿サイトに自分の小説を投稿していくようになりました。

元々、小学生の頃から創作をしていて、中学生の頃も小説を書いていたこともあり、サービスよりもメキメキと自分の創作能力だけが向上していくこととなりました。comicoさんに作品を提供したり、様々なコンテストに応募しては受賞したり、作家としての活動が始まっていきました。

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沖縄国際映画祭で発表されたAmazonさんと吉本興業さんが主催した映像化作品の原作小説のコンテストで大賞をいただきました。頭と靴が真っ黄色なのが僕です。

当時は1日1冊は小説を読み、平日は会社の経営、毎日原稿を書いていました。

しかし、小説の世界にどんどんどんどん入り浸っていくと、僕は突然気づいてしまいました。

「小説を書くのも読むのも好きだけれど、僕は本当に小説が作りたいのか?」

うっすらと気づいていたことではあったのですが、僕は小説が書きたいわけではなく、多くの人に物語を届けたいと思っているだけで、その形はなんでもいいと思っていて、別に絵がうまければ漫画でもいいと考えていました。

その瞬間、「小説」というフォーマットにこだわる続ける理由はなくなってしまいました。

しかし、僕には「taskey」を作ったときから考えていることがありました。
「テキストコンテンツ最強論」という理論です。

僕と同じように絵が描けないから小説家をしている人は多いことが事実のように、「テキスト」は最もクリエイターの人口が多いのです。

つまりは創作のハードルとして敷居が低いわけです。



小説 → 漫画 → 映像(実写・アニメ)→ゲーム


この順に制作するコストもスキルのハードルも上がっていきます。

そうです。
小説は唯一、たった1人の人間が机の前で何時間も粘りさえすれば完成するエンターテイメントなのです。

圧倒的な機動力(低コスト×ハイスピード)を持つエンタメなので、資金を潤沢に持っていないスタートアップ企業がヒットIPを作ることができる唯一の表現方法だったのです。

「全てのIPの源泉はテキストである」

僕はこの言葉を創業当初から言っています。
どんな名作と言われる映画にも、テキストで綴られた脚本が存在します。
必ずIPはテキストから生まれるのです。

しかし、テキストには最大の弱点がありました。
それは時間に対する情報量がとても少ないことです。

これは単純に言えば、漫画1話で表現したいことを文字に起こすと、とんでもない文量になるので、洗練された文章を読みたいわけではなく、物語を読み進めたい読者からすると非効率となってしまうのです。
漫画1話を5分で読められるが、小説だと同じ物語でも20分掛かってしまうといったイメージです。

多くのユーザーがスマートフォンでエンタメを楽しんでいる以上、漫画だって、YouTuberの動画だって競合になるわけです。

簡単にエンタメを楽しむことができるようになった時代に、僕が書いているような小説を読む若者は減っていくだろうという憶測と、事実として文字ものの市場規模の縮小は目に見えていたので、若者にテキストコンテンツを届ける手段に目を向けていくようになりました。

当時は縦型漫画が流行し始めていました。ウェブトゥーンというやつですね。もちろん漫画を作ることも脳裏に浮かびましたが、今さら僕らのような小さな会社が漫画制作に踏み出せば一気にコストが上がり、ハイリスクな勝負となってしまうと考えました。

しかし、「若者でも気軽に読むことができるテキストコンテンツ」なんて都合の良いもの一体どこにあるんだ……そう思いながら、アメリカのアプリを調べている時に見つけてしまいました。

そうです。あったのです。
アメリカで数百万ダウンロードされていて、若者から支持されているテキストコンテンツアプリがあったのです。それが「Hooked(フックト)」です。

Hookedはチャットのような吹き出しで構成されたフォーマットになっており、タップしながら読み進めるアプリでした。

アメリカではそれを「Chat Fiction」と読んでおり、大流行していたのです。

僕は早速ダウンロードをし実際に読んでみると、チャットの中で物語が進んでいくので、難しい活字を読んでいる気分になることもなく、スムーズに読めることに気づきました。

僕は「見つけた!これだ!!」と(心の中で)叫び、すぐに日本版のチャット小説を開発すべく動き出しました。

ヒットするかどうかは確率の問題


すぐにチャット小説アプリへの開発へと動き出そうとしましたが、ここで大きな問題が生じました。

2017年初め、僕を含め社内リソースは4人だけ。おまけにその内2人はシステム受託開発にリソースは奪われていました。

残されたリソースは、僕ともう1人のエンジニア、たった2名の体制でpeepの制作はスタートすることとなりました。

結果として開発をスタートすることとなったのは、2017年春。
アプリは外部の制作会社と一緒に作り、コンテンツは僕が編集者、そして作家となり、作品づくりに没頭していくこととなりました。

作品づくりに当たっては、僕はまずアメリカで先行しているサービスの作品をランキング順に読み込んでいきました。
※ここらへんの流れは、アプリマーケティング研究所の記事が参考になりますので、ぜひ読んでみてください!

そして、ようやくアプリのデモが完成した僕は、日本での傾向を掴むためにこのアプリのターゲットとなりうる10代女子にヒアリングするために原宿へと向かうことにしました。

ごった返す休日の原宿で500円のiTunesカードを100枚ほど手に持ち、原宿駅から渋谷駅までを練り歩き、女子高生や女子大生に声をかけていきました。

「アプリのテストを行なっています。500円のiTunesカードを渡すから、10分だけ時間をください」と怪しげな誘い文句で話しかけ、僕らの作っているデモの作品を読んでもらうことにしました。

そして目の前で僕の作品を読む彼女たちの横で、彼女たちの動かす手や視線、読む手が止まった箇所等を観察し、最後にどの作品をどう評価しているのかなど定性的なアンケートをいくつか取っていきました。

複数の作品はあえて違った書き方をしており、そこで現在の10〜20代女子が好む表現の方法を掴むことができました。

(余談ですが1つ分かったこととしては、女子高生は500円で立ち止まってくれましたが、女子大生は500円では立ち止まってはくれなかったことでした)

それらの結果を元にリリースまで半年を切っている中、作品を作っていくこととなります。

しかし、当然受託開発の新しい受注を止めた僕らは、資金が足りなくなっていきます。

そこでtaskey創業時から株主として関わっていただいているフィギュアメーカーの雄「グッドスマイルカンパニー」の社長・安藝さんに相談に行きました。

(今思えばすごくシンプルな)事業計画とプレゼン資料を引っ提げて、安藝さんにプレゼンを終えると、安藝さんから5000万円ほどの資金を貸していただけることとなりました(それもありえないほどの好条件で)。

安藝さんは創業当初から僕らがヒットIPを生むことだけを期待してくださっており、何度も相談に乗ってもらい、会社の危機を救っていただきました。感謝してもしきれません。

こうして僕はリリースまでの開発費とリリース後数ヶ月の資金を確保することができましたが、先程の安藝さんとのプレゼンの中で、「リリース時にどれくらいの作品数を出すのか」と聞かれ、僕は「100作品ほど掲載してリリースする予定」だと答えました。

もちろん事業計画に載せているKPIにつき達成すべき数字でしたが、編集者は僕1名の状態でリリースまで残り2−3ヶ月ほどの状態だったので、かなり無謀な数字でした。

しかし、それを現実のものとすべく、100作を作るために動きましたが「途中で自分が編集していたら間に合わねえ……」と、およそ50作品を自ら執筆しました。

この時の作品の1つがpeepにおいてもっとも読者を抱えることとなった『監禁区域レベルX』です。

僕はヒットはある程度確率論だと考えており、かの有名なモーツァルトは生涯で1000曲近くを残したとされています。5歳で作曲を開始し、33歳でその人生の幕を下ろしたので、10日に1曲をコンスタントに作っていた計算となります。

そんな天才ですら有名な曲は一握り。
凡人が天才に勝つには圧倒的な量産が必要だと僕は常々考えています。

そして、(Appleの審査による遅延はありましたが)2017年12月に約100作品ほどを掲載し、チャット小説アプリ「peep」をリリースすることに成功しました。

シリーズA——初めてのエクイティファイナンス


満を持してリリースした「peep」。
肝心のマネタイズはというと、フリーミアムモデルの月額960円の読み放題の料金体系でした。およそ1日1話分ほどを読めるポイントを持っており、待てば無料で読み続けることができるが、待てなければ読み放題に入ってね〜というモデルです。

もちろん国内外の競合を加味した結果ではありましたが、価格設定はこれで正しいか分かっておらず、今だから正直に言うと割と勘で決めていたところが大きかったのです。

故にリリースしてからは不安は多く、いち早くユーザーの反応が見たいと思いました。当然リリースしてApp Storeに載っけているだけでは、ユーザーは集まりません。

ユーザーの反応を集めるために、広告出稿をしてみることにしました。社内でそれをやる人間がいなかったので、当然それも僕がやることとなります。

しかし、代理店と話す上で必要な専門的な知識もあまりなく、「CPCってなんですか?」など、代理店の人との打ち合わせの中で学んでいくしかありませんでした。

そして、主にYouTube広告にpeepの広告を出してみると、計画以上にユーザーの獲得単価と課金率が良かったのです。

さらに何よりも驚くべきはユーザーがアプリに入ってきてからの数字を分析してみたところ、読了率がめちゃめちゃ高いということでした。

読了率とは「100人」が『A』という作品を読み始めて、何人がAの1話目を読み終わったか、Aの2話目を読み終わったかという指標のことです。1話を100人のうち20人読み終われば、20%ということになります。

僕たちのコンテンツは、漫画と同じように1話ごと物語が進んでいきます。その1話目の読了率が80〜90%、3話時点でも70〜80%ほどあったのです。

小説家からするととんでもない数字であることが分かります。1話1000−2000字の文字をほとんどの読者が読み切るのです。従来の小説では絶対にありえないことでした。

ターゲットとしていた10〜20代前半のユーザーへ、僕らの作品が届いたのです。

テキストコンテンツを若者に読ませることに成功した僕は、有頂天になっていました。「これはアクセルを踏むべきなのではないか」と、僕の中で次のファイナンスを意識し始めるきっかけとなったのがこのときです。

しかし、同年末、競合に当たるサービスが全国でCM放映をすることとなります。橋本環奈さんを起用したCMでした。正直、僕は思いました。「めちゃめちゃ可愛い」。

そうです、競合のCMに出ている橋本環奈さんがめちゃめちゃ可愛いかったのです。

とまあこんな感じで僕は非常に楽観的なので「市場が盛り上がっていいことなんじゃない?」くらいの気持ちでいて、そこまで気にしていませんでした。

もっと言うとそのCMにより「チャット小説」という言葉の認知が広がったのは事実で、感謝の念すら抱いていました。

それに競合は既に複数社いる状態でしたので、競合の動き方を注視せずにはいられない状態ではあり、社内でも「競合のどれもが投稿型である。peepも投稿型にしないか?」という議論が発生しました。

当時複数あった競合アプリのどれもがユーザーが気軽にチャット小説を投稿できることを重視した設計になっていました。

CGM(Consumer Generated Media:ユーザー投稿コンテンツにより形成されるメディア)は一度成功のループに入ると、ネットワーク効果でユーザーをオーガニックで呼び続けてくれる夢のような仕組みです。それにコンテンツ制作費だっていらないのです。

しかし、僕らは投稿機能を作りませんでした。それは「taskey」を運営した経験からの判断です。

CGMは、夢のような仕組みなのですが、当然その効力を得るためには一定の対価を支払わなければなりません。鋼の錬金術師で言うところの等価交換です。

僕らが支払うべき対価——それは「運営のリソース」です。「いかに投稿しやすいUI/UX」にするか、「投稿させるためのハードルを下げるコンテストを開催しよう」などなど、機能開発からイベント運営まで多くの職種のリソースが持っていかれるのです。

結果的に僕たちがCGMにしない意思決定をした理由はシンプルで、peepが勝つにはどうすればいいかを考えたからです。

peepが勝つためには「ヒットIPの創出」が絶対でした。
ユーザーの投稿した作品からヒットを生み出すか、自分たちの作品でヒットを生み出すか。

僕は迷うことなく後者を選びました。
人員も限られている。そして、何より僕はクリエイターとして自らの作品プロデュース力を信じ、投稿機能は絶対に開発しないという信念を貫き通すことにしました。

その意思決定をしてからは、プロダクトについては閲覧体験の向上、コンテンツについては質と数。たった2つにリソースを注げばよい状態になりました。

僕は時間を忘れ、平日も休日も、昼も夜も忘れるほど、そこに没頭しました。

広告を出しても数字は良く、アクセルは踏み続けていきます。当然DAUも最初は数人だったところから数百人、数千人と増えていきます。

しかし、僕は没頭しすぎていました。

この当時、僕には経営者の思考はほぼなく、クリエイターに限りなく近かったためにこの後訪れることになる会社の危機に気づけていなかったのです。

そう、資金ショートです。

残高は残り数ヶ月分あったので、完全に油断していました。その間に資金を調達するつもりではいましたが、具体的にどう動けばいいか分からなかったのです。会社の残高に気づいた時には客観的に見ても「ああ、これはまずいね」という状態。

そこで僕は起業家の先輩・師として慕わせてもらっていたGlobal Catalyst Partners Japan(GCPJ)の平出さんに相談をすることにしました。

平出さんと出会ったのは僕がtaskey創業以前の23歳の時で、当時平出さんはサンフランシスコで上場企業のグループ会社の社長をしていました。

早朝のサンフランシスコでスクランブルエッグを炒める平出さんと深夜の東京にいる僕とでSkypeでつなぎ、小説投稿サイトであった「taskey」の構想について相談していたのでした。

残念ながら「taskey」は戦略を描ききれていなかったので、GCPJから出資を受けれていませんでしたが、僕は「peep」であれば出資を受けられるだろうという自信がありました。

投資を受けるにあたり、平出さんから投資契約書に書いてある内容から時価総額ってどうやって決めるの?という初歩の初歩から1つ1つ、会議室で説明を受け、タームシートの「タ」の字も知らなかった僕はその後、あらゆる記事や書籍を読み漁り、エクイティファイナンスの全体像を掴むことができました。

戦略を描き直し、事業計画を作り直すと、まずこのラウンドで必要な資金としてはおよそ1億円だろうと見積もることができました。

そこから様々なベンチャーキャピタル(おそらく10−20社)と話をしていったのですが、「上場できるレベルの事業ではないので、エグジットはM&Aじゃないか」などフィードバックをもらうこともありましたが、僕は「サブスクリプション会員をグローバルで1000万人にすれば、充分な規模になるだろう」と思い、その考えを徹底的にプレゼンで伝え続けました。

結果的に僕の初めてのエクイティファイナンスとなったシリーズAラウンドはGlobal Catalyst Partners Japan、サイバーエージェント・ベンチャーズ、コルク、BASE Partners Fund、三井住友海上キャピタルから出資いただくこととなりました。

どうにか資金ショートからの危機から逃れることができた僕たちは、ついに腰を据えてコンテンツとプロダクトの開発に臨むことができる体制にすることができたのです。

このラウンドの投資家の中にベンチャーキャピタルとは別に、コルクがいることに疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

六本木のルノワールでコルクの代表である佐渡島庸平さんをグッドスマイルカンパニーの安藝社長に紹介いただいたのが最初の出会いでした。

そのときはpeepの構想前に作ろうとしていたサービスのプレゼンをさせていただいき、ボコボコにされたのを覚えていて、今思うとおっしゃる通りのフィードバックでしたが、当時の僕にはだいぶこたえてしまい(笑)、不躾にもすごく反抗的な態度を取ってしまったことを記憶しています。

しかし、佐渡島さんのコンテンツに対する技量と熱量は本物だと思っていたので、この資金調達のタイミングで再度お会いする約束を取り付けさせていただきました。

僕はコンテンツビジネスのビジネス側ではなく、コンテンツ側の仲間が必要だと考えていたので、佐渡島さんを巻き込みたいとpeepを開発している時から思っていました。

「peep」の構想をお話すると様々なフィードバックをいただけました。
「peepに掲載されている作品はどんな思想で作られているのか?」と問われた時は答えることができませんでした。当時の僕は「まずは圧倒的な認知が取れさえすればいい、面白ければなんだっていい」と考えていたからです。

それが1つの回答ではあったものの、佐渡島さんからは「講談社には「おもしろくて、ためになる」という言葉があり、全員がその方向を見て作品をつくっている」とアドバイスを頂けました。

僕は佐渡島さんと話しているうちにやはり仲間になっていただきたいと思い、「投資をして欲しい」という意思を伝えました。

すると、「同じように出資のお願いをしにくる起業家は多いが断っている。ただ、君はクリエイターで、安直にこの領域から逃げない(撤退・ピボットしない)ことが分かるので出資することに決めた」と返事をいただけました。

『21世紀、世界でもっとも読まれる物語を生み出す。』


コルクが株主に加わり、早速佐渡島さんからオーダーを頂きました。
「『ドラゴン桜』をチャット小説化してみないか」とメッセンジャーが飛んできたのです。

正直に言うと、僕はすごく悩みました。『ドラゴン桜』は既に漫画で完成されているので、それを僕らと同じ土俵に持ってきても、ただコンテンツを劣化させてしまうことにならないかと。

そこでせっかくやるのなら徹底的にやりたいということで、これまでチャットフォーマットだったpeepのUIを改良していくこととなります。

『ドラゴン桜』のような既に漫画としてのイラスト素材を持った作品を、チャット小説化し、漫画以上の体験へと近づけていく。

これはpeepにとっては1つ転換期となりました。絶妙にイラストとテキストを交えた閲覧体験を作ったです。下のツイートが実際のスクリーンショットです。

僕はこれをタップしながら読み進める漫画として、「タップコミック」と名前をつけました。

結果として読了率も高く、読後感としても漫画に遜色ない出来栄えのものができあがったのです。

この経験を元に、僕は完全に気づいていくことになります。

「チャット小説」はチャットのやり取りで進行する物語だから読まれるわけではなく、スマホ最適化した読み物だから読まれているのだ、と。

活字を追う際に視線移動が極端に少なく疲れないこと背景に写真(視覚情報)を付与することで読者が想像するコストを最小限にすることができることができていたことに改めて気づかされました

これらの気づきから僕は「チャット小説アプリ」を運営する者としてはとんでもないことですが、チャット小説そのものへの興味は薄れていきました。

それよりもその先にある読み物としての大きなフォーマットの変化に興味が移っていったのです。

スマホに最適化したマンガであるウェブトゥーンもその1つです。

漫画も手塚治虫先生がエンタメへと昇華させまだ100年も経っていません。全人類がスマホを手にする今、スマホ最適化した新しい読み物を作っていけば、世界中多くの人に読まれることになるだろう。そう考えたのです。

ここが創業以来一度も決めていなかったビジョンが見えた瞬間でした。
僕は従前からクリエイターとしても、起業家としても、世界で戦いたい気持ちがありました。

せっかく戦うなら世界一へ。

以前、一番21世紀で売れた小説ってなんだろうと調べたことがありました。それはダン・ブラウンの『ダヴィンチ・コード』です。

シリーズ累計ではなく単一書籍で一番売れた小説。発行部数は8000万部

驚異的数字ですね。こんなのまともに戦っていては勝てない。

でも、スマホ時代に突入した今ならビジネスモデルから作り、それにコンテンツを載っければ勝てるのではないか?そう思ったのです。

「よし、1億人以上にpeepをダウンロードしてもらって、1億人以上が読む作品を生み出そう」


『21世紀、世界でもっとも読まれる物語を生み出す。』


今でも続くtaskeyのビジョンが生まれた瞬間でした。

代々木から世界へ


2018年初夏——無事に調達を完了させた僕たちは、自分たちのオフィスを構えることとなります。

僕たちをここまで運んできてくれたシステム受託開発も全てストップし、ここに来て初めて現在のCTOである深見がpeepの開発に合流します。

ただし、1.5億円あるからといって、贅沢はできません。

僕は通いやすくて、そして最低限の安いオフィスを探しました。
結局taskey第二創業期と言っても過言ではない最初のオフィスは、代々木駅から徒歩10分くらいの月15万円ほどの小さな物件となりました。

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たったこれだけのスペースです。まさに仕事だけをする部屋ですね(笑)
全ての雑音を排除し、僕たちは代々木に籠もりました。

メンバーとしては僕と深見に加え、コンテンツプロデューサーの正社員として緒方がジョインしました。緒方は僕の高校からの友人で、自転車で毎日一緒に登校していた仲でした。僕と深見・緒方で3名、インターン4名の計7名でした。

2018年の夏は本当に仕事をした記憶しかありません。

オフィスに毎日集まっても、お酒を飲むことは一切ありませんでした。朝から終電までひたすらにコンテンツ・プロダクトの開発。

まさに青春でした(このオフィスを移転する最終日に初めて緒方と感慨深く飲んで帰りましたが、深見はそのまま帰っていきました)。

そんな仕事と向き合う毎日を送っていると、ある日突然サーバーがダウンすることになります。

原因は何か?と深見に問うと、アクセスの集中からサーバーが落ちたものとのことで、深見はすぐに復旧作業へ入ります。

そうです、なぜかpeepがものすごい勢いでダウンロードされているのです。

その理由は、ゲーム実況配信者のキヨさんが僕の作品である『監禁区域レベルX』の実況動画を公開したからでした。

キヨさんは当時でも100万人を超える登録者数を抱えており、YouTubeの急上昇1位を獲得し、peepはApp Storeのブックカテゴリでは2位、総合では28位を取ることとなりました。
※キヨさんの現在のチャンネル登録者数は300万人を超え、この動画の再生数は現在で1000万再生に。

僕と深見、緒方は「なんだかたった3人でピッコマやLINEマンガと並ぶってすごいよな」と胸を躍らせながら、世界への挑戦を更に決心していくこととなりました。

年商1億へ


僕たちはひたすらに閲覧体験の改善を追求していました。
2018年初夏にリリースしたタップコミック。その次の新しい体験を作っていたのです。

そして、2018年10月——僕たちは次のフォーマットである「シネマノベル」を作ることとなります。これはタップコミックから応用して考えたもので、タップコミックでは「漫画」を「テキスト」と「イラスト」に分解して、漫画とほぼ同じ読後感を与えることに成功しました。

漫画のイラストを少なくしたのに同じ読後感にすることができるということは、それは映画やドラマなどの映像作品も同じように応用できるのではないか。

ライトノベルと言えば挿絵付きの小説ですが、スマホであれば読者の想像を補完する情報が挿絵であるイラストだけではなく、「動画」になってもいいのではないか?という考えのもと開発したのです。

こちらが実際に制作したシネマノベルです。
シネマノベルは1−2分ほどの短尺動画が、小説の冒頭や合間に再生される新しいフォーマットでした。

当初は僕がスマホを片手に撮影する非常に小さなチームでの制作をしていましたが、今では様々な俳優・タレントの方にご出演いただける表現の場となりました。

この作品には『カメラを止めるな!』の濱津隆之さん、水溜りボンド・カンタさん、コスプレイヤーの桃月なしこさんなどにご出演いただき、SNSを中心に話題になりました。

そして、2020年には俳優として大御所である田山涼成さんにもご出演いただくこととなりました。

現在は元・フジテレビのプロデューサーで、「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など多数ヒット番組を企画した高瀬敦也さんに映像コンテンツ制作のアドバイザーとして参画いただき、僕たちのサービスはテキストコンテンツだけに縛られることなく、テキストコンテンツを主軸とし漫画的・映画的な体験を与えられるようになりました。

こうしてリリースして、1年を経たずして、月1000円弱の読み放題会員は1万名近くとなり、月商は800万を越え、年商ベース1億円を突破することとなったのです。

そして、この2018年の冬にはもう1つ大きな決断をしました。
それは長い間運営してきた小説投稿サイト「taskey」のサービス終了です。

peepに作品を提供してくださっている作家さんの中にはこの「taskey」で出会った作家さんもいらっしゃいます。僕はこのtaskeyを終わらせることに歯痒い気持ちはありましたが、やはり僕たちが今後作っていくのは新しい読書体験であることに確信を持ち始めていたので、リソースの集中のためにこの選択をしました。

長い間「taskey」の開発をしていた深見は、「我が子を殺すような気持ちだ」と言い、サービスをエンターキーで終わらせるのを横で見ていました。
あの時の気持ちはまだはっきりと僕の心の中に残っています。

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そして最後に余談ではあるのですが、伝説の始まりである10坪の代々木オフィスは半年も経たずして出ることとなりました。これは代々木オフィスの最終日の写真です。
左からCTO深見、コンテンツプロデューサー緒方、僕、当時インターン(現在正社員)エンジニアのそうた君、当時お世話になっていた業務委託のエンジニアの方です。

まるでロックバンドのインディーズの時の写真のようで気に入ってます(笑)

シリーズB——2回目のエクイティファイナンス


そこからユーザーの獲得へと更にアクセルを踏むべく、2019年春にグローバルブレイン、Global Catalyst Partners Japan、三井住友海上キャピタル、VOYAGE VENTURES、三生キャピタルから出資をいただきました。

僕がこのラウンドのリード投資家をグローバルブレインに決めた理由としては、グローバルブレインの立岡さんからあるメッセージを頂いたことでした。

監禁区域レベルX読み始めたんですけど、面白いです。本当に!
読み始めたら止まらない.....
疲れているので寝たいのにw

このラウンドにおいては複数のベンチャーキャピタルと話をしていたのですが、作品を読み込んでくれた方は立岡さんだけでした。

もちろん僕には言っていないだけで読んでくださった上で検討していただいた方もいらっしゃるかと思いますが、ほとんどの場合中身よりも当然数字で見られることが多かったのです。

それはもちろん投資家であれば当たり前の行動ではあるのですが、僕たちをワインで例えると「そのラベルだけでなく、ちゃんと飲んでくださり判断をする投資家がいるのか」と感動したことを覚えています。

僕たちは飲んでさえ貰えれば、美味しいワインを作れている自信があったからです。この件で僕は立岡さんが好きになりました(僕はチョロいのです)。

この頃で従業員数は約10名程度まで増えました。

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現在のpeepコンテンツチームのリーダー(編集長)である浜がジョインしました。写真一番右です。スクウェアエニックス、Cygamesと業界を10年近く渡り歩いたプロフェッショナルです。

2019年の年始——1月4日に面接をして、まだ10名程度の小さい会社に大手から転職を決心していただけました。

その面接の際にオフィスの社内見学をしたのですが、コンテンツチームが僕と緒方だけで運営されていることに浜が驚いていたのを覚えています。

僕たちは作品の知名度とは裏腹に、まだまだ未熟な体制でコンテンツを作っていました。浜の参画により、まずは作ったコンテンツを分析し、振り返っていく、いわゆる編集会議が発足しました。

実はこれまで作り続けるリソースしか確保しておらず(というよりも、ユーザーを満足させるため、新規で作品を作り続けることにしか時間を充てることができず)、作品の質をどうやったらもっと上げていけるかを振り返ることができていませんでした。

出版社では当然行われているメソッドを導入させた彼の参画は、peepのコンテンツチームには大きな変革をもたらしたのです。

そして、僕らはビジョンである『21世紀、世界でもっとも読まれる物語を生み出す。』を達成するために、英語圏へのリリースを開始することにしました。

まずは最低限必要な機能と作品数を準備し、主にアメリカなどの英語圏へテストリリースをしました。

「監禁区域レベルX」は「Lockdown Zone: Level X」として配信され、テストマーケティングでは多くのアメリカユーザーからポジティブな反応がありました。日本よりもCPIが低くユーザーを獲得することもでき、海外にも僕たちの作品は通用するのだという証明ができました。

ただし、僕はここで海外に思い切り体重を乗せることが本当に正しいのか改めて考え直しました。その意思決定の裏には、今ある資金をまずは国内に投入しなければ、勝ち切ることはできないのではないかという懸念があり、断腸の思いではありましたが一度海外展開はやめ、国内へ全力投球する決意をしました。

それから、国内での市場獲得に集中すること約10ヶ月。
2019年は月商2000万円を突破し、年末にはGoogle Play ベストオブ2019・エンターテイメント部門を受賞しました。

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一番右の金髪が僕です。この年はエンターテイメント部門の大賞はMirrativさんでした。大賞を逃し悔しい思いはしましたが、リリースして2年でGoogleからも新しい読み物の可能性を認めてもらえることとなり、チーム全体で喜びを分かち合ったことを覚えています。

シリーズC——計4.2億円の資金調達


2020年春には発表はしませんでしたが、エクイティファイナンスと政策金融公庫の融資をあわせて4.2億円の調達を実施しました。
その投資家の顔ぶれの1人には『ファイナルファンタジー』シリーズ7から11を開発したスクウェアの代表取締役社長・会長として牽引した武市さんがいました。

僕は小学生の頃からファイナルファンタジー(特にⅦ)を愛していました。おばあちゃんから貰ったお小遣いで、近所のゲーム屋さんで「FFⅦ」を購入しました。当時は小学生でしたが、これまでに体験したことのない重厚な世界観と美しいグラフィックに感動し、以来僕の中にはクラウドが憑依してしまい、常に英雄になりたい体質に変わってしまいました。

少年・大石の価値観を根底から変えてしまったメガヒットIPを作ったスクウェア——そんなレジェンドのような存在である武市さんからエンタメをビジネスにするための経営を直接叩き込んでいただけるのは、またとない機会でした。

僕はtaskey社のプレゼンをさせていただき、「taskeyを年間営業利益500億円を出せるような企業にして、時価総額をまずは1兆円を目指したい」と強く宣言し、出資をお願いしました。

武市さんは「営業利益500億はいけるよ。昔はスマホが無かったからゲームも関税が大きく掛かっていたけど今はスマホがあるからね。ヒットIP作りさえすれば、会社のステージが一気に変わる。とにかく面白いストーリーを作ることだけに集中しなさい」とおっしゃられ、僕らに投資していただけることとなりました。

4.2億円の資金調達を経て、「peep」はプロダクトとコンテンツ、両側面で進化を続けていきます。
「監禁区域レベルX」は100万人を超える読者を抱えるまでに成長し、ついに双葉社さんから漫画化も決定されました。

また講談社さんとも共同レーベルを作ることとなり、4冊同時でリリースしました。

またKADOKAWAさん、LINEマンガさん、ぶんか社さん、様々な出版社さんから漫画化が決まり、peepのIPを原作とした漫画を作りたいと頻繁に連絡が来るようになり、ついには人気作品のほとんどが漫画化が決定している状態になりました。全国の書店やコンビニに行けば、peepの作品が並んでいるようになったのです。

出版が進んでいく一方で、僕たちpeepの主戦場はデジタルに変わりはないので社内のリソースとしてはpeepの改善にフォーカスしていました。
その改善点を1つ1つ洗い出していく中で、元々「勘」でスタートした現在の料金体系は本当に正しいのか?と疑問を持つようになりました。
具体的には「読み放題」のビジネスモデルだけで、国内で成功することはできるのだろうか?という疑問です。

漫画の市場規模は日本で約5000億円ほどあります。しかし、日本では漫画アプリを筆頭にほぼ全ての書籍はサブスクリプションではなく、従量課金でした。

月1000円の読み放題でこの市場規模に到達するには、約5000万人のサブスク会員が必要となることから、サブスクリプションモデルだけで漫画は現在の市場規模を形成できないこととなります。

また世界で見てみてもApp Store・ブックカテゴリのアプリは従量課金でコンテンツを提供しているサービスが多いことから、グローバルでの挑戦も従量課金モデルでやるべきだろうと考え直し、peepを当初から貫いてきたサブスクリプションモデルから従量課金モデルへと変更しました。

こちらの詳細はアプリマーケティング研究所で取材いただいたので、ぜひお読みください。

僕たちはマネタイズを180度変えることで、より1つ1つの作品を育てやすい環境にすることに成功しました。

そして、チャット小説を更に盛り上げ、才能を集めるために同じチャット小説アプリを運営されている集英社さんと共同でコンテストを開催することになりました。

そこで僕は1つ提案をしました。

「僕たちが挑戦していることはチャット小説という枠にはもう囚われるべきではない。新しいデジタルの読み物——『e-Story』と呼ばないか?」

集英社の方々も賛同してくださり、僕たちは電子媒体(electronic)から生まれた物語(story)の全てを「e-Story」と命名し、次世代のe-Storyクリエイターから作品を募っていくことにしました。

結果として約340作品が集まり、既にpeepで連載、コミカライズが行われました。この取り組みは年に1回行わせていただき、2021年も実施いたしました。

ついに2017年からスタートした「チャット小説」は一旦の終演を迎え、「e-Story」に生まれ変わりました。そもそも「チャット小説」はスマホ最適化した読み物のフォーマットの1つであり、現在は過渡期でしかなく、ここから更に進化していくと思っています。

シリーズD——Tencent(腾讯)グループとの資本業務提携


2021年春——従業員数は約40名ほどとなりました。

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ご時世的には集まれなくなってしまったので、写真はBefore時代のものとなりますが、この日はpeep初のインターン生の卒業式で、僕は感極まって大泣きをしてしまった日です(笑)

着実にサービスが伸びてきている中、僕たちは2019年に一度断念していた海外展開をもう一度考えるようになりました。

その最中、昨年株主になっていただいた武市さんからTencentグループを紹介いただき、今回の提携へと話が進んでいきました。

今夏以降、僕たちは英語圏、中国語圏へ自分たちのIPを展開していく予定です。

海外展開と同時にpeepの閲覧体験のアップデートも加速させていきます。今後リリースしていく予定の作品は、既にリリース当初の面影はなくなってしまうほどのUI/UXとなっています。

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ホラーや恋愛など若い世代が読みやすく、感情に訴えかけやす傾向のジャンルの作品が多かったのですが、重厚なファンタジーやインタラクティブでゲーム性のあるストーリーを実装した作品を次々にリリースしていく予定です。

冒頭でも述べさせていただきましたが、海外ではエンタメ系toCアプリが非常に伸びています。

韓国Kakao Entertainmentが米国拠点のウェブ漫画アプリ「Tapas」とウェブ小説アプリ「Radish」をそれぞれ5億1000万ドルと4億4000万ドルで買収しました。

Kakao Japanも時価総額を8000億円に伸ばし、大型の資金調達をしています。

またNAVERは小説投稿サイトである「Wattpad」を約600億円で買収しました。

上記からも見て取れるように、巨大なプラットフォーマーたちの差別化がコンテンツへと変化している今、良質なIPコンテンツが求められ始められています。
近い未来では「プラットフォーマー<コンテンツホルダー」になっていくことは明らかなことです。

日本においては大手出版社を中心とした企業が、日本のコンテンツを世界へと発信しています。

しかし、残念ながら日本のスタートアップにはエンタメに真正面から本気で挑んでいる会社は数えるほどしかありません。僕は人口が縮小していく日本においては、1人の才能にレバレッジが効くエンタメを頑張らずして何を頑張るんだと本気で思っています。

日本人は生まれてから摂取するエンタメの量はとんでもなく多く、コンビニでジュースを買うのと同じように漫画を買いますし、幼い頃から最新のゲームだってすぐにプレイできる環境にあります。故に日本人の作るエンタメのレベルは、僕は格が違うと思っています。

そのコンビニで漫画やゲームを買うことができる環境があるのは間違いなく先人たちが世界でエンタメ市場を切り開いたおかげです。

脈々と培われてきたエンタメの魂を僕たちが受け取り、次の世代へ渡すことができるように、日本のエンタメが忘れ去られないように、僕たちは世界で戦いたいと思います。

僕は市場を調査していく中で、自分たちと近しい企業はどこかを探していました。そして、これだ!と思った企業を見つけだしました。
まだ雲泥の差がありますが、それは「ウォルト・ディズニー・カンパニー」です。

どこが似ているんだ?と思われる方もいらっしゃると思います。
それは彼らがコンテンツを育てる仕組みにあります。
彼らは自らを「メディア・エンターテイメント・カンパニー」と呼んでいます。

そうです。
彼らはエンターテイメントの会社でもあり、メディアの会社でもあるわけです。

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創業者であるウォルト・ディズニーは元々新聞に漫画を提供する漫画家でした。しかし、アニメーションの技術と出会って以降はアニメーションの可能性を見出し、1928年、白黒テレビで最初の作品である「オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット」を放映し、市場を獲ることに成功しました。

「テレビ」というメディアを押さえたディズニーは、次に「映画」でIPコンテンツを横展開していきます。

そして、ついにはテレビ局を買収、そして足りないIPコンテンツを次々に買収していきました。最近では彼らがインターネットにも帝国を築いた「Disny+」が記憶に新しいと思います。

彼らはメディアの特性に合わせコンテンツを作り、そしてメディアと共にコンテンツを育てている会社なのです。

これは「僕たちがなぜスマホでの新しい読書体験を作り続けているのか」に繋がっていきます。僕たちは全人類の半数以上が持つスマホを狙っているのです。

小説でもない、漫画でもない、新しい読み物のフォーマットを手探りで発明し続け、そこで輝くことができる作品を作り続ける。
僕たちもウォルト・ディズニー・カンパニーと同じメディア・エンターテイメント・カンパニーなのです。

taskeyは引き続きビジョンである——『21世紀、世界でもっとも読まれる物語を生み出す。』を追いかけ続けています。

僕は会社がどのフェーズになっても、クリエイターとして作品を作り続け、個人としてではなく会社としてチーム一丸となり、世界中の人々が熱狂するホームラン級の作品を生み出したいと思っています。

クリエイターと経営者——二刀流で2つのリーグを制覇します。


気合を入れて書いたので、約2万字の初投稿となってしまいました。1日で仕上げたので拙い文章となってしまいましたが、長文をお読みいただき大変感謝いたします。ここまでお読みいただいた皆様はきっと、僕たちがやっていることに何かしら興味がある方だと思いますし、充分僕たちの思想が伝わった方だと思います。ぜひ次の章までお目をお通しいただけますと幸いです。

最後に

今回Tencentグループとの資本業務提携により、大きな挑戦をする資金は手にしました。

しかし、まだまだ僕たちには仲間が足りません。
僕たちが募集しているのは以下の職種です。

● peepの閲覧体験を更にアップデートしていくUI/UXデザイナー
● 同じく上記を達成する開発者
● 世界で圧倒的人気を誇ることになるであろうIPコンテンツを生み出すコンテンツプロデューサー
● 僕らを世界で活躍するエンタメ企業にするべく戦略を描けるCFO

そして、もちろん僕らにジョインしていただく仲間だけでなく、僕らと一緒に同じ夢を追いかけることができる外部のパートナーも募集しています。どんな方向からでも構いませんので、少しでも興味がありましたら僕のTwitterにDM、もしくは会社ホームページからお問い合わせください!

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