デッドマウント・デスプレイ

群像劇が得意な作者さんの作品だけあって、ストーリーがよく出来ています。最近のアニメ作品は脚本や構成が素人なものが多いので、このようなストーリーがしっかりした作品は安心して鑑賞出来ます。

作画はあまり良くないですが、主人公とヒロイン枠のキャラだけは崩さずにいこうという意思は感じられます。作画に問題があるスタジオなので、この程度の崩れで済んだのなら良い方です。

キャラクターの名前はかなり独特で「屍神殿」(かばねしんでん)や「放浪桟敷」(ほうろうさじき)、「火吹き蟲」(ひふきむし)など中々厨二心をくすぐられます。これらは簡単には思いつかない種類の名前ではないでしょうか。こういう所も作者さんの力を感じます。

ざっくりしたジャンルは異世界物ですが、異世界のネクロマンサーが現代日本に転生してくるところから話が始まります。宮廷魔術師が存在する世界と現代日本が交錯していく話になっていきます。いわゆるなろう系異世界物とはだいぶ違います。

魔術や魔法に関する事はこの作品独自の解釈があるものの、アニメ視聴者の基礎知識とそこまで乖離はないので理解しやすいと思います。この作品の特徴として魔法や魔術より、超人的な身体能力や色々なギミックが登場しますのでそちらも楽しみです。

この作品の主人公はとても穏やかなのですが、そこが違和感の元です。価値体系が全く違う世界に転移/転生してきたら、生活自体がままならないはずです。ものを判断する基準が全く違うというのは大変です。しかし、この主人公はとても落ち着いています。頼りにしている魔法も魔素が薄過ぎてうまく練れない状態でも「困りましたね」くらいのリアクションしかありません。なんか人間っぽくないのです。それが何故なのかは物語が進んでいくとわかります。魔素の問題も序盤に解決出来ます。やはり魔法使いは魔法を使ってもらはないと。

そして、やはり群像劇。作画は残念でも登場人物たちはしっかりしています。アニメである本作ではその片鱗しか描写出来ません。一枚の大きな織物を見るのに虫眼鏡で細部を追いかけているのが今の状況。モブキャラに見えたどうでも良いエピソードが後に効いてくるなんて日常茶飯時。それが群像劇。なのでお話しは長くなります。このアニメ化から「デッドマウント・デスプレイ」という作品を知って、原作に向かう人がいてくれたら嬉しいです。

では、また別の記事でお会いしましょう。

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