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シャニマスシナリオの「優しい余韻」に包まれてほしい


最近の生きがいとも言えるゲーム実況動画がある。


まさか蘭たんがシャニマスの実況をするとは思わなかった。
驚きつつ観てみると、アイドルとプロデューサーの様子を影で見守る第三者的な視点で実況するスタイルが面白かった。

時にはプロデューサーとアイドルの距離の近さに口を出したり、担当アイドルのかわいさに悶えたりする様子も最高だったけれど、なによりも嬉しかったのが、アルストロメリアのイベントシナリオ「薄桃色にこんがらがって」を読む動画。

薄桃色は私がシャニマスの沼に落ちていく決定打になったシナリオでもあり、何度観てもラストシーンの優しくて切ない余韻に泣いてしまう。

蘭たんはこのシナリオをどう受け止めるんだろうと思って観ていると、3人の繊細な心の動きをうまく感じ取り、子供というにはしっかりしているけれど大人というには純粋な千雪さんに感情移入していて、オタクとして本当に嬉しくなった。

「甘い毒ガスを吸わされている」という比喩表現も言い得て妙。
優しさや思いやりといった薄桃色の感情がこんがらがっていく物語の美しさと残酷さ、それらを読み取っていく蘭たんの姿に、シャニマスをやってみたい!と思った視聴者も多いんじゃないかと思う。いちユーザーとしてはそうであってほしい。

私がシャニマスのイベントシナリオの魅力をひとつ挙げるなら、優しさと答えたい。

登場人物が非情な現実にぶつかっても、頑張りが結果につながらなくても、シナリオの最終回を読み終えたあとの余韻はいつも爽やかで、あたたかくて、なんかよくわからないけど心が満たされる。(最後まで辛いシナリオもごく一部あるけど)

この優しさを含んだ余韻は「ミュージカルテニスの王子様 青学vs山吹」公演のラストで、青学に敗北したルドルフ中と山吹中の選手が歌う「輝け、もっと」を聴いている時の感情に近い。
敗者たちがお互いを認め合う、清々しさと切なさの混ざり合ったあの感じが本当に好きで、この試合が終わった後も彼らの人生は続いていくんだな、って前向きな気持ちになれる。

私の身の回りにはテニミュが大好きな方が多いので、「輝け、もっと」が好きな方にはぜひおすすめしたい、優しい余韻を味わえるイベントシナリオをいくつか挙げてみようと思う。



流れ星が消えるまでのジャーニー


薄桃色にも登場した、アルストロメリアの大崎甜花・甘奈姉妹のお話。
ふたご座流星群の見える秋の季節に、2人の幼少期の思い出を振り返り、夜空を見上げながら今を見つめ直すというようなお話。
予告の動画からも伝わる優しい空気が漂う、とっても心あたたまるシナリオなので、薄桃色を読んで胸が苦しくなった人にはぜひ読んでみてほしい。

大崎姉妹はお互いを大切に思っていて尊敬し合える関係だけど、幼いころはどんな関係で、どんな出来事が今の2人の仲を結び付けたのか明らかになる。

この物語のカギになるのは、双子の姉、甜花ちゃんが幼い頃から大切にしているデビ太郎のぬいぐるみ。このデビ太郎がめちゃくちゃいい味を出していて最高。

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このシナリオを読んだ後に上のポエムを読んで、おかしくなるくらい泣いてしまったので、読了された方にはぜひ目を通していただきたい。


アンカーボルトソング

こちらもアルストロメリアのお話。
これは今年の6月に実装されたばかりのシナリオで、ファン感謝祭や薄桃色など他イベントシナリオ、GRADを経た3人の様子が描かれている。
正直な気持ちを言うと、過去のイベントシナリオやカードのシナリオを読んだ後の方が楽しめると思うけど、事前知識無しでも十分に楽しめる内容になっている。
あらすじを簡単にまとめてみる。


冒頭、雨の中で街頭のファンに声をかけられながら警備員に先導されるアルストロメリアの様子が描写される。目の前の光景に「変わった」とつぶやく甜花ちゃん。
以前3人で歩いたこの街の風景は確かに変化していた。雨を凌げる屋根ができていたり、工事中だった建物には橋がかかっていたり、ビル群は相変わらず工事が続いていたり。
アルストロメリアもアイドルを始めた頃よりずっと忙しくなり、たくさんのファンが3人を応援するようになった。それぞれが評価されてソロのお仕事が増えていく中で、ゆっくりと、確実に何かが変わっていることに気付き始める。


正直、全シナリオの中で一番好きと言っても過言ではない。
予告動画のしっとりとした感じも、タイトルの「アンカーボルトソング」の表す意味も、エピローグの無機質な街とアルストロメリアのあたたかさのコントラストも本当に美しい。
そもそも、建物の基礎と土台を緊結する金具であるアンカーボルトに3人の女の子を結び付けるって発想もおかしい。

薄桃色では登場人物それぞれの視点が描かれていたけど、このお話は甜花ちゃん視点で物語が進行していくのも面白い。甜花ちゃんのことが大好きになる。
それに、薄桃色でより強固なものになった「3人でアルストロメリア」という関係性にもう一度向き合うことになるので、アルストロメリアを知るうえでとても重要なお話でもある。

また、このシナリオにはたくさんのオタクが描写されている。そのどれもがリアルすぎて笑ってしまうけど、リアルだからこそオタクの気持ちにも感情移入できてしまうのでつらい。
"推し"という存在がいる人にはぜひ読んでみてほしい。



明るい部屋

昨年のクリスマスに実装された、283プロのアイドルが全員登場する事務所越境のストーリー。


年末はアイドルにとっての繁忙期。
多忙な日々に追われるはづきさん・事務所の寮にある部屋の掃除するアイドル・聖歌隊の歌の練習をするアイドルの姿など、283プロの面々も慌ただしく充実した毎日を過ごしていた。
そんな忙しない日々の中にも、クリスマスは訪れる。

あらすじを書くとこんな感じになってしまうけど、それぞれの出来事がやわらかな人と場所との繋がりのようなものに終結していくのが最高。

この物語でカギになるのは、283プロ唯一の事務員である七草はづきさん。
大家族を養うため、事務員の仕事とスーパーのバイトを掛け持ちする苦労人。
責任感が強い人なので、どんな仕事も任せられれば完璧にこなすし、睡眠時間も充分に確保できない中で働きまくる様子が描かれる。
過労で倒れてもおかしくない状況の中、周りに頼ることなく自分の仕事をこなし続ける理由は何なのか。そもそもなぜこんなに可愛いのにアイドルに転生しないのかという安易な疑問への回答も見もの。

中途半端に事務員をやっているということにするのではなく、この職についた理由をきちんと描き切っているところが潔くて良いし、このシナリオに関わるアイドル以外の全ての人物の事情や想いも絡み合ってエピローグにつながっていくのがもう本当にすごい。すごすぎる。
一見何の意味も持たないような一つ一つのシーンを丁寧に描くことで、最終的に結びつく抽象的なメッセージにも説得力が生まれているのが本当に良いんですよね……。

今年の3月に実装されたシーズの2人以外のアイドルのことを知るきっかけにもなるので、興味がある方はぜひ。
私は初見のとき、読了後の余韻がすごくてスマホの前で拍手することしかできなくなりました…


アイムベリーベリーソーリー

2021年8月現在で一番最新のイベントシナリオ。七草にちかさんと緋田美琴さんの2人からなるユニット、シーズを含めた初の事務所越境シナリオになっている。
私が今回この記事を書こうと思ったのも、このお話の余韻がものすごかったから。これこそ「優しい余韻」だと思う。

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上のあらすじも素敵。「少しだけ何かを間違える」は解釈の余地があるし、読み返すたびに発見がある。

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恋鐘が声を当てている「寡婦」のキャラクターは喪服を纏い、骨董屋を営みながらいつかの夏に忘れてきた落とし物のような何かを探し続けている。
ゲームのプレーヤーが寡婦に物を渡すと、寡婦から「あい」というアイテムを受け取る。これを繰り返して、寡婦が求めているのは何なのかを探し出すという結構重めなゲーム。
これを283プロのアイドルがみんなで知恵を絞りながらプレイしている。

このゲームの物語と、現実世界での出来事やアイドル同士の関係性がリンクしていくのが面白いし、何よりラストが最高に美しい。

寡婦の求めているものは何なのか。そもそも寡婦はどうして何かを求め続けるようになったのか。なぜ明るく元気な恋鐘がミステリアスで影のある寡婦を演じることになったのか。
ゲームを攻略する方法やシーズのレッスンの様子、花屋での社会経験など、全ての出来事が「生きる」ということや、「愛する」ことというぼんやりとしているけれどはっきりとしたメッセージにつながっていく。

このご時世で心が満たされなくなったり、自分を労ることの難しさを実感したりしている人も多いように思う。
このシナリオは、そんな現代に向けたシャニマスなりのエールのようにもとれて、もうため息をつく他なかった。ラストの霧子とか、ダンスの先生の言葉とか最高すぎる。

私は初見をツイキャスで実況しながらプレイしていたのですが、読了後はシナリオの力に圧倒されてなんだこれ………なんだこれ………しか言葉が出ませんでした。
場面転換が多くて少し理解するのが難しいお話ではあるけど、シャニマスの魅力がつまった素敵なお話です。残暑にぴったりのこの物語をぜひ。



おわりに

連日嫌なニュースばかりが流れる鬱々とした日々の中、シャニマスのシナリオの読後感だけでなんとか生きているので、ずっと書きたかったことをかけてとても満足しています。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

蘭たんの実況をご覧になっていない方がいたらぜひ一度観ていただきたいし、これをきっかけにシャニマスに興味を持ってくださった方が一人でもいましたら幸いです!



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