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【日記】身体が道を覚えてる/2024.05.06

学生時代の友達に会いに行った。地元から少し離れた学校に通っていたんだけど、卒業後は地元に就職したこともあって一年近く会えてなかった。
飲み屋とかおしゃれなカフェがたくさんあるにぎやかな場所で会おうかと思ったけど、なんだか学生時代のことを懐かしみたい気持ちになったので、当時よく行っていた商店街で待ち合わせすることにした。

商店街の最寄り駅に来たのは卒業以来だった。当時と比べてテナントのお店が数軒変わったと地元民の子は言っていたけど、言われないと気づかないくらい何も変わっていなかった。空はどんより曇っていて、駅前ロータリーのどこか湿っぽい雰囲気も懐かしかった。

待ち合わせの時間まで少し余裕があったので、学生の時にフィールドワークで何度か訪れたシャッター街に行った。アーケードも看板も当時のまま残されていた。GWの駅前はそれなりに活気がある雰囲気だったのに、ここだけは異様なほど寂れて静かだった。数年前に初めて来た時も廃れ具合に驚いたけど、今もその時から何一つ変わっていない。でも、誰もいない薄暗いアーケードに曇天の淡い光が差し込んでいる街路の雰囲気は今も変わらず好きだ。持ってきたカメラで何枚も写真を撮った。数年後、この場所がビルとかホテルになっていたら嫌だな。今の雰囲気を残したまま、今よりも少しだけ生活感のある場所になってくれたらいい。

約束の商店街に向かった。大まかな道のりはチェックしたけど、道中は地図を見ずに歩いた。何も見なくても、体は道のりをしっかりと覚えていた。居酒屋のキャッチであふれる飲み屋街、クリスマスに予定がない友達と一緒にケーキを食べたカフェ、格安の美容室、ライブ帰りによく行った牛丼屋、入試前夜に宿泊したホテル。目に見えるもの全部が懐かしかった。

友達と会ってからは当時の話をしながら歩いたり、新しくできた知らないお店に入ったりした。学生のころはいろんなお店が入った駅ビルのほうが魅力的に見えたけど、久しぶりに訪れてみるとこの商店街も良い場所だったことに気付いた。おしゃれなインテリアの店とか、純喫茶とか、作家もののアクセサリーショップとか、歩けば歩くほど面白い場所に巡り会える。学生の頃にこういう楽しみ方を知っていればと悔しくはなったけど、卒業してしばらく経った今の自分が、こういう風景を良いと思えるようになっていることがうれしかった。

解散して駅に戻る。行きとは違う道のりを歩いたけど、地図を見なくても辿り着けた。記憶って無理やり引っ張り出すものじゃなくて、必要な時に自然と表れるものなんだと思った。
次にここへ来るのはいつになるだろう。友達には「また会おうね」って言ったけど、具体的な話はしなかった。もしかしたら何年も後になってしまうかもしれない。その時にも、この道を覚えていられたらいい。


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