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ナイロンとは、繊維の特徴とナイロンロープの使い方

今から約88年前、アメリカのデュポン株式会社のウォーレス・ヒューム・カロザースがナイロンを発明した。その翌年、彼はこの世から去っていった。

こんにちは!ロープ屋の息子です
ロープには欠かせない、繊維の紹介をしようと思います。
今回扱うのは、ナイロンです!

ナイロンロープは、その優れた物理的特性から、様々な業界で広く使われています。ナイロンは、エコバッグや服に使われているイメージがあると思います。特に服では水や風を弾くような素材なので、案外見かけます。ではロープではどうでしょうか?実はめちゃくちゃ使われています
このブログでは、どのようにロープにナイロンの繊維が使われているのか、ナイロンの特徴から、ロープとしての利用法、よく比較される」ポリエステルとの違いや、ナイロンの父であるウォーレス・カロザースさんも紹介します!


ナイロン6とナイロン6,6の分子構造


ナイロンの歴史

ナイロンは、1930年代に開発された最初の合成繊維といわれるもので、主に石油から作られます。アメリカ、デュポン株式会社のウォーレス・カロザースが1935年にナイロンを発明しました。また、デュポンがナイロン繊維を工業生産したのが1939年という発明から約89年の歴史があります。
デュポン社の有名なキャッチフレーズが

「クモの糸より細く、鋼鉄よりも強い、石炭と空気と水からつくる魔法の繊維」

という、当時のナイロンがどれだけ凄かったのかを象徴していますな!!

この頃日本では昭和11年(1936)に2.26事件が起き、昭和14年(1939)に第二次世界大戦の勃発という年でもありました。このナイロン繊維は、ナイロンショックと言われるほどのインパクトの強い発明と言われており、綿や麻、絹、アセテートなどは当時はありましたが、絹生産が日本の輸出産業優位だった時代に大きな打撃を与えます。日本は1936年にアセテート繊維の試験工場が稼動をしましたが、イギリスでは約10年前にはアセテート繊維をブリテッシュセラニーズ社(英)が本格生産しており、その中でのナイロンが登場したことは日本はかなり痛かったと感じます。
また1940年に発売されたストッキングが500万足が4日で完売するなどのブームが既に来ていました。
日本がナイロンを生産するのは、ナイロンの発明から16年後の1951年のことでした。
そして今日では、日常に欠かせない繊維でもあり素材になったナイロン。最近では3Dプリンターの樹脂にも使われています。89年という年月が経った今でも、さまざまなところに使われているナイロンの歴史をザッっと紹介しました!


ナイロンの基本

ナイロンは合成繊維の一種で、主に石油からできています。その最大の特徴は、強度と耐摩耗性にあります。ナイロン66やナイロン6などの種類があります。
非常に強い繊維の一つです。摩擦や折り曲げなどに対しても非常に丈夫です。比重としては、1.14で絹の約80%、綿の約70% という軽さを持ちますが比重が1.14なので水に沈む特性も持ちます。
熱可塑(そ)性(溶けること)があり適正なセットをすると、伸び縮みしたり、染色しやすく、形くずれする ことはほとんどありません。 軟化温度200℃、溶融点は215℃です。薬品や油に強く、海水にもおかされにくく、カビ、虫の害を受けません。

ナイロンロープの特性

  1. 高い引張強度: ナイロンは非常に強く、重い荷物を支える能力が秀でています。                               JIS規格上の話になりますが、トイレットペーパーの芯の太さでは、234kN. まあ、24t(トン)くらいの引張強度になります。と、あまり想像できないので、靴紐ほどの太さで500キロから700キロくらいは引張れるのです!そう思うとすごいですよね

  2. 耐摩耗性: 摩擦に強く、長期間の使用にも耐えます。          ナイロン以前は天然繊維だったので、劣化は相当激しかったでしょう。

  3. 伸縮性: ナイロンロープは伸縮性があり、衝撃を吸収します。      化学繊維の中でもトップクラスであり、強い衝撃に当たるものなどに適しています。

  4. 耐化学薬品性: 多くの化学薬品に対して耐性を持ちます。        液体アンモニア、亜硫酸など、ほとんどの無機薬品に対し安定ですが、過酸化水素や塩素系脱色剤のような酸化剤には侵されます。


ナイロンロープの利用法

ナイロンロープは、その耐久性と強度のために、船舶用、登山、救助活動、さらには日常的な用途にも使用されます。
パラコードはパラシュートに使うロープのことで、大変強度が必要になります。その繊維もナイロンになります。
天然繊維などのように、ロープが多少の火で燃え続けることはあまりないため、安心して使えます。
また何かの用途で、ロープ自体を水に沈めたい時にもナイロンを使うのもいいでしょうし、高温の場所でも使用することができます!
ナイロンロープはその汎用性と耐久性で、あらゆるシナリオに適応してくれます!
しかし、注意点もあります。長時間の直射日光にさらされると劣化する可能性があるため、適切な保管が必要ですし、一般的な用途で考えるとアイロンなどの高温には溶けてしまう可能性があるので注意が必要です。

ナイロンとポリエステルの比較

  • 強度と耐久性: 両者ともに高い強度を持っていますが、ナイロンは伸縮性に優れ、ポリエステルは耐熱性と耐UV性で勝っています。

  • 用途: ナイロンは衝撃吸収性が重要な用途(例えばロープや登山用具)に適しており、ポリエステルは屋外での耐候性が求められる用途(例えば屋外用ファブリックやテント)に適しています。

  • コスト: 一般的にポリエステルはナイロンよりも安価です。




ナイロンの始まり『カロザースという男』


カロザースは、1896年、アメリカ合衆国のアイオア州バーリントンで生まれました。高校を卒業して最初は商科大学で学びましたが、卒業後、イリノイ大学で化学を学んだそうです。
28歳で博士号をとり、30歳でハーバード大学の講師になります。
その一年後の1928年、カロザースが31歳の時です。
アメリカの繊維会社、デュポン社にむかえられ、研究所の研究部長となりました。
1931年にボルトンの部下として共に人工的にゴムをつくり合成ゴム、ネオプレンを作ることに成功、その4年後の1935年には、ついに人類初の人工繊維ポリアミドを合成することに成功しました。その名も「ナイロン」です。
カロザースの発明がきっかけとなって、世界中で人工的に高分子化合物をつくるさまざまな研究が行われるようになり、世界にとても大きな影響を与えています。

ネオプレンの実演をするウォーレス・カロザース


しかしその裏では、精神の病に悩まされ、自分が人生の失敗者であるという妄想にとりつかれていた。1931年頃、カロザースは「懐中時計に青酸化合物をしのばせている」と当時の交際相手のジュリアン・ヒルに言っていることから、精神的に不安定で死が忍び寄っていました。
1934年から付き合っていたヘレン・スイートマンと1936年2月21日に結婚。スイートマンは化学の修士号を持っており、デュポンにて特許出願を扱う仕事に就いていました。そんなスイートマンとの結婚直後の1936年4月30日、カロザースは産業界の化学者として初めてアメリカ科学アカデミーの会員に選ばれ、科学への貢献が認められた。これはとても栄誉だったが、同年6月になってもカロザースはうつの症状に悩まされ続けていたといいます。

1937年1月、妹イゾベルが肺炎で亡くなる。同年4月28日、カロザースは職場に顔を出したそうです。翌29日にフィラデルフィアのホテルで青酸カリをレモンジュースに混ぜて飲み亡くなりました。41歳のことでした。

[参考] 経済産業省、Wikipedia、nii.ac.jp

カロザースの研究がなされていなければ、ナイロンというものが89年という年月を過ごすことがなかったのではないでしょうか。
彼は発明や名誉などにどのような印象をもっていたのか、教師になっていれば自殺することがなかったのか。ナイロンをどのように思っていたのか。もう少し勉強して、カロザースのことを深堀したいと思いました。
僕の持った印象ですが、どちらかというと彼はアーティストのような人物像に思えてきて、功績よりもどのように生きようとしたかに重きを置いていたのではないかと感じました。

まとめ

今回は、ナイロンの歴史やナイロンロープの特性とその利点を紹介しました。ロープは繊維なしでは作れないと言っても過言ではありません。
天然の繊維から、今回取り上げた化学繊維など、共に歩んできました。
我々ロープも進化していくことの模索を忘れずに成長していこうと思います!
この情報が皆さんのロープ選びに役立つことを願っています。もし質問やコメントがあれば、ぜひお寄せください。
カロザースはきっとまた、やります!

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