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平和に生きたいから、声を上げている。

よく父親と口論になる。今日もなった。
口論という言い方は、立場が対等じゃ無いから適切では無いが、他に良い言葉が見つからないので便宜上そう呼んでいる。
父は、人として言ってはいけないことをよく言う。
「誰の金でここに住めていると思っている」とか、あまり記憶に留めたくはない人格否定とか。
それについて良くないと言ったり、ミラーリングをして返したりすると毎度のことだがそれはよく荒れるのだった。

よく口論になるのは私と父で、同じくデリカシーのない父の被害を被って不満を抱く母はその話に参加しない。それどころか同じ被害を受けているのにも拘わらず、「黙って流せば良いのに」と私に言ってくる。

確かに、その通り黙って流せば、表面上は綺麗に収まるのだろうなと思ったし、負けずに即時言い返す自分を冷めた目で見ている自分もいて、「どうして声を上げ続けるのか」と少し考えてみようと思った。

よく言われる言葉、「黙って流せばいいのに」

そんなこと出来る訳ないと思った。

どうして受け流せないのかって、だって、私はこの人と距離を置くことが出来ない状況にあるから。大学生という身分で、家を借りられるほど金を稼げるわけもなく、経済的に自立できない。距離を置けない、共存していくしかない状態で、不満を抱えたままずっとモラハラを受けているのは精神衛生上問題があった。

され続けて、表面上受け流しても、心の中ではずっと不満がしこりのようになって消えなくて、嫌な気分のまま精神を蝕むのを知っている。
私が言い返すのは、相手のしたことをいけない事なのだとわかって改善して欲しいし、例え分からなくても、「自分は黙らない『面倒くさい』人間だ」と相手に分からせるため。

黙らないでいるのは疲れるししんどいけど、自分の尊厳を犠牲に黙っているのはもっと辛いから、私は声を上げ続けるしかないのだと思う。

私はなんのために「沢山の時間を無駄に」するのか

Netflixで配信されているドキュメンタリー「科学者とジェンダー」を観た。
そこで登場する人間が、「沢山の時間を無駄にした」と言っていた。
彼女は優秀な科学者なのにも拘わらず、女性であることを理由に不当に狭い研究室をあてがわれ、それに対して声を上げたところ聞く耳すら持たれなかったことをきっかけにアクティビストになった。

彼女がもし男性だったら、そんな事に時間を取られずにしたい研究に没頭できた。彼女は自分がしたいことのために、わざわざ膨大な時間を割いて、戦ったのだ。
じゃあ私は、何のために戦おうとしたんだろうか。
夢がなくて、大してやりたいことも無い自分が、フェミニストとして声を上げている理由は一体なんなんだろうか。

私は、幸せになりたかった。

幸せになりたくて、でも小学校の宿題で出た「将来の夢」なんて何も書けなかった少女時代に記憶は遡る。女性の活躍しているロールモデルなんて居なかったし、一体自分が何になれるのか見当も付かなかった。一般的に一般的に「女の子の夢」とされる花屋やパン屋などには驚くほど興味が湧かないのだった。もし男に生まれていたら、宇宙飛行士とかなりたかったかも知れない。
幸せになりたくて、思春期、「女の幸せは結婚だ」という言説にぶち当たる。女の幸せは異性である男から愛されることで、男に愛される女となり男の愛を勝ち取ることこそが女にとっての出世だという刷り込みを受ける。
幸せになりたくて、「女らしい女」を目指した結果見事に「搾取しやすそうな女」と認識され不特定多数の男たちから性的搾取を受ける。
思い返せば自分の10代の人生が惨めすぎて、悲しくて、悔しくて。こんな社会を呪った。
もう私みたいに悲しい人生を歩む人間を作りたくないと思った。それが、過去の自分の弔いになると感じた。
つまり私の活動の糧は自分の不幸。自分の恨み。

幸せになりたかっただけなのに、女であるだけでそれすらも阻む社会が恨めしかった。

たとえ何者でもなくても、嫌なことは嫌と言いたい

未だに私には、なりたい職業も思い描く将来像も特にない。
フェミニズムの活動家たちを見ていると、活動以外にも学者だったりアイドルだったりして本業があるし、私もフェミニズムだけに人生を捧げて生きるつもりはない。

ずっと「差別するな」って当たり前のこと当たり前に訴え続けている自分を想像すると、虚しくて辛くなる。声を上げるのは大切なことだけど、もっと自分を充実させたい。フェミニズム以外のことも考えたい。

差別や不当なことにはとことん抗って声を上げていきたいけれど、それがもし無かったら私はどうやって生きていたんだろうと考える。
本を読みたいし、草木を愛でて気ままに暮らしたい。そんな事しか浮かばない。そんな事しか浮かばないけど、それが私にとって譲れない事なんだろうなとは思っている。

平穏な日常を送りたい。その為に、私は黙らないで自分を大切にすることを実践してきた。だから、黙っていたら、もうダメになってしまうと思うんだよな。
それはもう私がなりたい私でもないので。
今が幸せ。だけど、それを維持し続けるためにも言いたいことは言うべきだと思う。
毎日言わなくても良い。でも、不満があれば言う。それを繰り返した先に自分の欲しい未来があるから、私は黙りません。

本を買います…!!!