巡り会えたこと―宝君の話(プロローグ)

 遥か三千年以上前の古代中国。

 そこには色々な国や部族が、衝突を繰り返しながら、生活をしていた。

 今でこそ山肌が見えてはいるものの、その時代は大地の約80%が、森や草原が広がっていたという。

 そんな広大な土地で、のんびりと放牧などをしながら暮らす姜族と、その一族を支配する殷王朝は、度々刀を交えていた。

 その争いで残念ながら犠牲になった姜族は、約15000人以上。

 見つかった遺体は、想像を絶する程無残な姿を晒していた。

 殷王朝の兵士達が何故そんなことをしたのか……

 それは、当時の“死”というものの世界観に関係がある。

 殺された姜族が再び蘇り、無念を晴らすと信じていたイン王朝の民は、その現象を阻止する為に、胴体と頭を切り離した……

 それだけではなく、祭祀に必要な殉葬者も働かされた奴隷も、半分以上は姜族だった。

 勿論、他の部族に対しても同じようなことをしたのだろうが、特に姜族とは今でいうライバル関係にあった為に、酷い仕打ちを繰り返したのだ。

 数々の戦いを経て、遂に堪忍袋の緒が切れた姜族は、周りにいた同じ思いを持つ国を巡り、イン王朝を倒す事を訴えた。

 その光景を見ていた天界に住む仙道達は考えた。

“イン周革命を利用して、湧き起こる殺劫をどうにかしてしまおう”
“ついでに下界に住む者の中にいる、超人的な力を持つ人間(天然道士)達を集め、神として祀ろうではないか”

 1500年周期で巡る“人を殺したい”という感情
を押さえ切れない仙道達はこうも考えた。

“それならば、いっそ天界と下界の間に神界という場所を作り、そこに彼等の魂を移してはどうか”

 少しずつ人間達の知らないところで、計画が実行されていく。

 そして“封神計画”と名付けられたこの計画の中心人物を担うこととなったのが、釣り好きで有名な太公望呂望である。

 彼は12歳頃まで下界で戦いを見てきた。

 当然自らも巻き込まれている。

 この戦いの半数以上が、少なからず仙道達が関わっていることを知り、“仙道のいない世の中にしたい”
という志を持って天へと昇った人物である。

 そして長年の修行が実を結んで抜擢されだのだ。

 あれから長い年月が経ち、神界も下界も平和になり、平凡だが幸せな時間が流れている現代、再び道士太公望が下山した。

とある使命を遂行する為に……

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