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10年前のメールから 『不遜な申立て』

続き

依頼者の女性は千葉の労働局にあっせん申請書を郵送する方法で提出しました。しかし相手方(被申請人)である会社はあっせんに参加しませんでした。あっせんは相手に参加を強制することができません。相手があっせんに参加しないことを表明するとあっせん手続ははそこまでです。女性が申請したあっせんは被申請人があっせんに参加しないことにより打ち切りとなってしまいました。

私は依頼者の女性に今後どうしたいかと意向を尋ねたところ、女性は私に「自分で労働審判をしたい」と回答しました。そこで私は、あっせん申請書(正確には、あっせん申請書に添付の「別紙」という形で作成した、労働審判手続申立書に準じて作成した文書)を労働審判手続申立書に変更するための変更箇所を教示して、裁判所への労働審判手続き申立ての方法や必要書類(相手方である会社の履歴事項証明書等)を説明し、その女性に、千葉地方裁判所に持参して提出してもらう方法で労働審判手続き申立を行ってもらいました。

その後第1回労働審判期日が指定され、その期日の1週間くらい前に相手方である会社から答弁書が依頼者の女性宛に裁判所経由で送られてきました。相手方は代理人弁護士を付けずに会社の社長が答弁書を作成していたようでです。私は女性にお願いして答弁書のコピーを私宛に郵送してもらいました。

数日して助成からの相手方の答弁書のコピーが私の手元に届きました。その相手方の会社の社長が作成したと思しき答弁書を読んでみると・・・

申立の趣旨に対する答弁は、まぁ何とか形になっていたのですが、申立の理由に対する認否以下がチンプンカンプンで、何となく感想文のような文書になっていて、相手方が主張したい事実は何なのか今一歩も二歩も理解できません。

もっともその答弁書で何となくわかったことは、会社の社長はその女性を「不遜」だと評価していたことです。社長である俺様に向かって何たる思い上がった態度だ!ということでしょうか。社長は答弁書の中で、申立人の相手方社長に対する態度が「不遜」、その挙句にこういった申立てをすることも「不遜」、あれもこれも「不遜」、というように幾度となく「不遜」という言葉を用いて依頼者である女性を非難していました。

相手方である会社の社長にとってはその労働審判は、「不遜な申立て」だったのでしょう。しかし結局労働審判手続き期日の中で、相手方である会社が申立人である女性に解決金として賃金の数か月分相当を支払うことで調停が成立して労働審判は終了しました。

それからしばらくして、会社からその女性に解決金が支払われました。東北の大地震が発生したのはそれからほどなくしてです。私は電話で女性に地震の被害がなかったかと尋ねたところ、女性は「足元まで津波の海水が押し寄せた」と特に興奮した様子もなく淡々と私に話しました。

文責:社会保険労務士おくむらおふぃす


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