年次有給休暇付与日数

年次有給休暇の時季指定義務

年次有給休暇の時季指定義務についての解説を動画にしてYouTubeにアップしました。興味がおありの方はご覧くださいm(_ _)m
 https://www.youtube.com/watch?v=ZTaBPa9lHHw&t=384s

改正労基法が施行された平成31年4月1日から早2ヶ月が経過した。今回の法改正の目玉は、何といっても年次有給休暇の時季指定義務である。使用者は、4月1日以降に基準日(新たに年次有給休暇を付与する日)を迎える労働者でその基準日に10日以上の年次有給休暇を請求する権利を有することとなる労働者に対して、基準日以降1年以内に5日の年次有給休暇を必ず年次有給休暇日を指定して取らせなければならない。

しかしながら、労基署の相談コーナーには、使用者からの年次有給休暇の時季指定義務に関する問い合わせが未だに後を絶たない。問合わせの多くは、付与義務の履行期間に関するものである。

問合せの中で、使用者が勘違いをしている年次有給休暇の時季指定義務に関する例として多いのが、労働者に対して改正法施行日である今年の4月1日から1年以内に5日の年次有給休暇を取らせなければいけないというものである。
改正労基法の年次有給休暇にかかる時季指定義務の履行期間は、労働者が今年の4月1日以降最初に迎える基準日以降1年以内である。
例えば、今年の4月1日から業務を開始した新卒者であれば、法律通りだと今年の10月1日に基準日を迎えるが、この新卒労働者に対する使用者の時季指定義務の履行期間は、今年の10月1日以降1年間である。つまり今年の10月1日から来年の9月30日までに、最低5日の年次有給休暇をこの新卒労働者が取ればよいのである。

年次有給休暇にかかる不利益変更に関して、先日、厚労省からの通達があった。

すなわち、これまで事業場の所定休日であった、夏季休暇日や年末年始休暇日を、一応労働者の同意を得て、これらの日を出勤日に変更して、その上で、これらの日を年次有給休暇として時季指定をするような労働条件の(不利益)変更については、年次有給休暇の時季指定義務の本来の目的を潜脱するものであるから、こういった変更を行おうとしている事業場については、変更を再考するように口頭で指導をするようにとの通達である。
こういった内容の就業規則の変更届を労基署の窓口に届け出る場合、窓口で監督官から指導を受ける虞があるので、注意を要する。

もっとも、会社の経営担当者や人事担当者の中には、年次有給休暇の付与について5日はやむを得ないとしてもそれを超える分の年次有給休暇については何とか取らせないでおこうと画策している節があるが、人手不足のこの時世、そういった考え方は捨てた方が無難である。むしろ、「うちの会社は従業員の年次有給休暇の取得率が8割を超えています」、などと謳った方が、ハイパフォーマーな労働者を呼び込みやすい。

先日、労基署の別の相談員が受けた会社の社長なる人物からの電話相談で、「何で年次有給休暇の時季指定義務などという法律ができたのか」と延々愚痴られたとこぼしていた。愚痴った社長は、会社の将来をどのように見据えているのだろうか。


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