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在職中ですけど、残業代請求します!

しばらくブログのアップを怠っていましたが、就業規則の作成依頼とか顧問先の労働者から請求された残業代の計算とか、子守とか、気忙しいことが何かと多ございました。

過去のメールを整理していると、メールの履歴からその当時依頼を受けていた事件が思い出されます。

依頼者は、聞けば誰もが知っているような大手の人材派遣会社の大阪の支店に勤務する兵庫県在住の猫好きな女性でした。派遣社員として勤めているのではなく、派遣会社で事務の仕事をされている方でした。何でも、出退勤時刻通りだと残業が発生しているはずなのに残業代が支払われていないとのことでした。

私の経験上、残業代の請求は、会社を退職した以降にする場合がほとんどです。在職中に会社に対して残業代の請求をするとなると、どうしても会社の上司や社長等の関係が気まずくなって、十分なパフォーマンスを発揮できなくなります。会社の上司や社長にしても、言葉には出さないまでも、残業代の支払いを請求しやがってこん畜生!という思いがあるのは間違いありません。もっとも、周りの従業員は、よし!よくやった!!だとは思いますが・・・

で、くだんの女性は会社を辞める意思は全くなく、在職中に残業代請求をしたいとのことでした。まぁ、大手の会社なのでそういったことも可能なのでしょう。

残業代の請求は、まず、会社に対して文書で残業代の支払いを求める(催告)ことから始めます。賃金の支払い請求権は2年(令和2年4月1日以降分については3年)で消滅時効にかかります。したがって、2年近く前までに遡って未払いの賃金等の支払いを会社に求める場合には、消滅時効にかかる虞があるので、時効の進行を停止させる必要があります。時効の進行は一方当事者に催告することにより6か月間停止します。6か月の停止中に解決を図り、解決が難しそうであれば、あっせんを申立てるあるいは裁判所に訴訟を提起するか労働審判を申立てるといった手続きを踏むことで時効を停止させ続けることができます。

ちなみに時効の停止という言葉は、令和2年4月1日の改正民法により時効の完成猶予という新たな言葉に変わりました。時効の中断は、時効の更新という言葉に変わりました。

催告は文書ですることを求めていません。口頭でもそれは可能です。もっとも実際は、口頭だと、言った言わない、聞いた聞いてない、の争いになることが多く、そのような争いになった場合、催告をしたという当事者がその事実を証拠による証明(立証)をしなければなりません。しかし口頭でのやり取りは、録音記録でもない限り立証が難しく、立証に失敗すれば、時効の停止の効力が発生しないことになるので、権利者に不利な結果になります。

したがって、時効の停止の目的を込めて、未払い賃金の支払いを求めるときは、未払い賃金の支払いを求めた事実を証拠として残すためにも、文書で行います。文書は、できれば内容証明郵便にして郵送します。

内容証明郵便とは、いざというときに郵便局が郵送した文書の内容について証明をする制度です。文書の内容の証明は、内容それ自体のほかに、いつ、誰が、誰に対して送ったのか、といった点についても証明します。証明方法は郵便局に提出された文書の原本を謄本(原本を謄写)にして交付する方法によります。

私は、女性からの依頼を受けて、まず未払い賃金額を計算し、その支払いを求めるところから始めることにしました。残業時間はその女性が手元に残していた会社の出退勤記録を基に行いました。

その後、残業代の支払いを求める文書(案)を作成して、その案に基づいて、女性自身で内容証明郵便文書を作成してもらい、会社の東京にある本社の代表取締役宛に配達証明付き内容証明郵便として郵送してもらいました。

女性の請求を受けた会社は、残業代は支払い済みだとして応じない姿勢を示しました。当事者双方の間で残業時間に争いがありました。女性が主張した残業時間を会社は認めない(そんな残業時間は知らない)

そこで私は、労働局にあっせん申請をすることとして、あっせん申請書を作成し、大阪労働局に郵送して提出しました。

つづく。。。

文責:社会保険労務士おくむらおふぃす



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