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2月18日公表「令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について」㊗️3%アップ!だけど実はヤバいって話


1.初めに


労務単価(賃金)が上がることは、その解消の決定打が無く経済の癌とも言われるスタグフレーションにおいて最終兵器と成りうるものです。

今回の設計労務単価で積算された公共工事は民間工事へ、ひいては日本の労働者全体の賃金や年収が上がるきっかけとなるでしょう。
設計労務単価が上がるということはそれほどの影響力を持ちます。
長く続くデフレから賃上げによって日本の景気回復への期待が持てるのです!しかも3%は想像以上の値で、前年より大きく上伸しました!

実に明るい話ですがここから少しトーンが変わります。
元々統計として10月の賃金から翌年3月の単価を決めるという最終工程、つまり職種別地域別に5か月先の未来を予測する補正がなされる筈ですが、昭和に公共事業労務費調査が始まって以降、この部分はずっと国交省本省内で行われており、大臣や御用学者もおそらく結果しか知らされない程のブラックボックスだと思われます。

ブラックボックスでありながらも、平成24年調査までは未来の単価決定ルールは継続していたと私は推測します。
(この後の図-2にて詳しく説明します)

ところが、H25年からこのルールは大きく転換します。
その結果、突然V字上昇を始めます。
設計労務単価は建設キャリアアップシステム(CCUS)という壮大なプロジェクトの重要なピースとなり、単価決定ルールはそれ以前と全く整合性の無いものになりました。
去年今年はそれに輪をかけて、国策に沿った答えに合わせる為に理屈を作ったと思われます。

まだピンと来ませんよね。
これからそれぞれのルール変更点を紹介し、その後それを証明します。
証明するために必要なデータが時々刻々と発表されたため、公開までに時間がかかりました。4月のリリースとなったのはサボってたわけじゃないですからね
( ̄▽ ̄;)
建設業、ひいては日本の経済全体の話にまで影響するので内容は多岐に渡ることとなったため2万字と、かなりのボリューム感です。
少々根気が必要です。予めご了承ください。

2.納得いかない理屈とは何か



今回の公共事業設計労務単価、驚きの上昇率。
いいことしかない。これは私もそう思います。

ただ、長年公共事業労務費調査に携わってきた私が見ると、
今回「単価設定のポイント」にどうしても腑に落ちない点があるのです。
きっと根本的な、調査方法に起因する問題点です。
それが何か考えてみました。

今に始まったことではなく、初めてこの調査に関わった時から疑問に思っていたこと。私は本調査の実行部隊最高責任機関である関東地方整備局において、最終的に霞ヶ関本省に納めるデータ作成まで関東地整の直接の担当職員と共に寝ずの仕事を何度もしたことがあります。
それでもブラックボックスとした極秘事項については私も知り得なかったのですが、およそ見当がつく程度には密接に関わっていました。その経験を元に丁寧に事実を削ぎ落とし3つの疑問に行き着きました。

1.設計労務単価が示すものとは何か
2.調査結果は実態なのか世相などそれ以外の要因が加味されるのか
3.なぜ霞ヶ関の調査には結果についての考察が無いのか(今回は公共事業労務費調査について)


今回は結果が高く出たんだし、賃金良ければ全て良しじゃないか、と思うかたは貴重な時間を奪うだけなので「14.結論」以外読まなくて結構です。

まずは、懐疑的な見方を排除して例年どおりのスタイルで調査結果の解説をします。上記の3点については順次説明していきます。


3.解説(資料1)


このnoteを読もうというかたには、公共事業労務費調査と設計労務単価について改めて説明する必要は無いでしょう。もし、公共事業労務費調査について何となく知っている、再確認したいところがあるというかたは、事前に以下の国交省公式URLをご覧ください。本調査の趣旨など資料の全てを確認できます。 


さて、2021年11月に調査した結果が日本全体の労務費の指標といっても過言ではないほど大注目の中、2022年2月18日に令和4年3月から積算に適用する調査結果が国土交通省のHPに公表されました。

2020年の調査結果から始まり、2022年3月適用解説noteは3回目になります。なので結果から解説していきます。
初めて見るというかたは過去のnote20202021も読んでください。

4.資料1の疑問


まず資料1を確認します。

資料1

全国平均 主要12職種平均値 19,734円 昨年調査比+3.0(%)
全職種  21,084円 昨年調査比+2.5(%)
どちらも過去10年間連続で上伸!!

なるほどすごいぞ11年も設計労務単価上がりっぱなし。昨年比3.0%UP!
まずは素直に喜びましょう。昨年と同じ工事を落札しても給料は多くもらえます。
労務費以外にも一般管理費等率も上がりましたので、とある試算では数百万円の増額となるようです。増額分は係わった工事業者の隅々まできちんと行き渡るようにして欲しいですね。週休2日制導入の原資にもなりそうです。
国交省はもちろん、国全体で賃上げ表明企業がきちんと賃上げした場合、評価点加算や法人税の低減といったインセンティブが与えられますよ!
最高of最高じゃないですか!


でも、それはそれ、これはこれ。
3%、職種によっては5%を上回る単価(土木一般世話役 5.1%)という今回の結果、そんなことがあり得るのかも検証して見ようというのが例年とは一風変わったタイトルどおり、今回のnoteのテーマです。

平たくいえば、疑ってるってことです。

連合の「90年代の賃金」という研究資料によると、「毎月勤労統計」に基づく名目所定内賃金上昇率は1970年代前期19.4%、後期8.7、1980年代前期4.3、後期3.0。ちょうどバブルの発生と終了直前でまだまだ慣性で勢いのあったときでこのような値です。

賞与と一部の手当、残業代は含まれていない値ですから、事実上の賃上げ率はこれらを大きく上回るはずですから当時の勢いに驚きます。

ここで大事なのは、単年ではなく、20年以上継続して全産業で賃金が上昇し続けたということ。
併せて物価も「同じくらいに」凄まじく上がったということです。

以上を踏まえて今回の公表内容を検証していきましょう。


資料1の今年の結果で最も重要な部分をグリーンの線で囲みました。単価設定のポイントの(2)、(3)ですね。

まず(3)から解説します。
(3)は昨年も行われた特別措置です。単価は< >で示されています。47都道府県、51職種ですから掛け算すると設計労務単価は2,397パターンとなります。このうちわずかですがデータが少なすぎるなどの理由で単価設定ができない地域・職種があるので2,300パターンと仮定しましょう。

特別措置が今年も行われたということは、昨年を下回った単価は昨年の単価に据え置いたということです。昨年の特別措置が全体の42(%)であることがわかっています。つまり対象数が2,300のうち966は据え置きされました。
逆にいうと1,334が特別措置対象外です。
約4割が前年を下回ったということは決して少なくありませんし、確実に上振れします。それでも昨年の結果は1.2%の上昇ですからね。ここ重要なところです!

つまり特別措置が無ければマイナスだった可能性がとても高いのです。
これは毎回調査会社がランダムとなる調査方法にも問題があります。

今年の特別措置(据え置き)は10(%)超とのこと。全体で230です。かなり減りましたが、このうちの多くは2年連続で特別措置された単価ではないかとわたしは考えています。これによる影響が多いか少ないかは判断の難しいところですが、いずれにしてもこの特別措置は先にも言ったとおり、労務費の平均単価を引き上げます。

昨年も書きましたが国交省は特別措置の理由はコロナ禍だとしています。
私にはここに因果関係があるとは思えませんし、未だ相関を示す資料は一切示されなかったし、後日開示もされていません。
今回もないでしょう。

異例中の異例で2度はないと言われた特別措置が2年連続適用されるのは異常事態なんです。
シレッと行われてるのに誰も突っ込みゃしない。

たとえコロナ禍が長引いたとしても因果関係の解らないまま、統計においてこんな恣意的なことをしてはいけません。
国民と科学をバカにしていますよね。


さて(2)です。後回しにしたのには訳があります。
調査結果の総括として「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」とあります。
こんなポイントが示されたのは過去30年以上の調査の歴史でも例を見ないというか初めて見ましたし、且つ(3)にも増して根拠としての理解ができません。


5.考えてもわからんので本省に直電してみた!


ここから長いです

「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」という言葉が長い調査の歴史において初めて出てきた。
私にはその意味が理解できず、調査問い合わせ先として示されている、
国土交通省 不動産・建設経済局 建設市場整備課 建設キャリアアップシステム推進室 課長補佐 村田氏
に公表当日の午後、直接電話で聞いてみました。
そのやり取りを時系列で示します。都度都度私が疑問に思ったことを書き、最後に私が単価設定のポイントとしてふさわしいかについてまとめます。
noteはインデントが効かないので読みにくいと思いますがお許しを。


直通電話でもめちゃくちゃたらい回しにされると思っていたけど、すぐ繋がりちょっとびっくり。

トムロ  「お忙しいところすみませんが、今日公表された設計労務単価に                                                   ついて個人で質問したいのですがよろしいですか?」

村 田  「はい。どうぞ」

    「単価決定のポイントに「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」とありますが、会社経費とも解釈できてどういう費用か分からないので教えてください」

    「会社経費ではありません」

    「では何ですか?賃金として計上できるケースが思い付きません」

    「現在、建設業界では週当りの労働時間を45時間以下にするための取組を進めています。例えば時間外労働を削減するために、能力が高く時間単価の高い技能者を雇用した場合の賃金や手当などです」

    「なるほど。それなら経費ではありませんね。しかし現行の調査票ではおっしゃる費用を記入する指示も、調査票の様式-1と様式-2に専用のカラムも用意されていませんがどうやって調べたのでしょうか。10月調査とは別に専用の調査でも行ったのですか。そのかたを雇用するまでにかかる費用は会社経費ですよ」

    「あくまでも会社経費ではありません。また、10月調査とは別の調査は行っていません。現行の調査票から得られたものです」

    「では様式-2から、能力に相当する手当あるいは様式-1の他者よりも高いであろう基本給などから求められた費用・賃金ということですか」

    「必要な費用名称特に手当は各社で異なるのでどういう名称とは限定して明言できないです」

    「(なるほど。様式-2を使ったとの明言はない。無理をいとわなければ出来なくないけど、調査開始して途中からの指示をしたという訳にもいかないし。公にできないことはしょうがない面はある)
それはおっしゃるとおりですね。では、例えば5人でやっていた作業にどうしても残業が発生するとして、、、」

    「はい。能力の高い職人をより高い基本給や、手当をつけるなどして雇用して増員したり3人で残業無くできるようになった時の費用、賃金ということです」

    「ん~(え?手当じゃなくて?こちらの質問が終わらないのに食ってくるとは意外だったけどなるほど、想定内か。そういう言いかたね。あくまで基準内賃金だって言いたいのか。その言質をとれた以上、この人を詰め過ぎるのは気の毒だな)そういうことですか。わかりました。お忙しいところありがとうございました」

    「こちらこそ。よろしくお願いします」


実際の通話時間は10分程度でしたが、以上のようなやり取りでした。大変丁寧に対応していただいて好印象でした。
課長補佐の激務ぶりを知っているだけに10分程度とはいえ、気ままで適当な仕事ぶりの私の3時間くらいに相当しますし、時間泥棒はしたくない。大事な点は確認できましたし。

まとめるとこうなります。

残業(時間外労働)を短縮するために必要な費用、「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」とは、
①基準内の賃金である。能力に見合った高い基本給や基準内手当であるようだ。
②今回の調査で得られたもので、このために別途の調査を行ったわけではない。
③経費ではない。賃金である。

調査の手引き、積算基準、CCUSの仕組みに照らしても整合性のある答え。

しかし、  私には甚だ疑問があります。

まず、コロナ禍が起きた2年前から公共事業労務費調査は、面接から郵送と電話等による聞き取り調査に切り替わりました。
調査の手引き及び調査票には時間外労務時間を短縮するために必要な費用とは何かを説明した部分は全くありませんし、調査票のどこにも専用の記入欄はありません。
なので調査票そのものからこの費用を見出すことはまず不可能です。
全くないとは言い切れない可能性として、同職種で同年齢帯が複数人いて1名だけ基本給が高い、あるいは1名だけ能力に相当する基準内手当が支給されており、過去の出面表などから恒常的に行われていた残業が10月調査からグッと減った場合、つまりマンパワーが増えた事実を見つけ出し、その理由を口頭で確認できたあるいは就業規則に能力に対する手当の記載があったなら成立します。当然社会保険料が整合していることも必要です。

たまたま10月調査の対象にならなかっただけで発注分に実際は同様の例があったかもしれません。
となるとすべての当初の調査対象会社に確認の電話や電子メールを使って確認することになります。場合によっては調査票データの入力後に条件別ソートすることで可能性の高いケースを見つけ出せるかもしれません。
だとしても全社に問い合わせ確認しないと調査したとはいえません。調査側の勝手な解釈は実態調査とは言えないからです。
今年の調査で有効となった工事件数は9,740件。会社数では少なくともこの3倍はあるでしょうし、有効かどうか確認した会社数は実態調査の経験上そのさらに3倍とすると、およそ10万社以上に確認が必要だったと思われます。

できると思うこれ?
これをこなす以外は「やりました」っていえないんですよ。
しかも後付けの作業だろうから絶対調査を請負った会社の契約額に入っていない。発注者によっては精算もしてくれないでしょ。だって請負額の10倍くらい貰わないとペイしない手間ですから。しかも報告期限は延ばせないので相当な増員があったでしょう。

そして何より妙なのは、時間外労働を減らすことがそんなに重要性が高いのかってこと。

今、建設業に求められているのは週40時間労働(正確には2024年まで猶予期間)と週休2日制の導入です。よくある例としては、1日8時間労働(休憩含む)で週6日労働ってケースです。
これでは週当り48時間となり、法定オーバーとなります。就業規則でこの定めのままだと全員が調査棄却になる可能性が高いです。
なので近年多いのが、1日8時間で5日労働。これですと週休2日もクリアです。ただ、単独での作業であればいいのですが、複数業者が同時に作業していてその他の会社が48時間労働だった場合、止むを得ず残業することもあるでしょう。しかしそれは村田課長補佐のいう時間外の趣旨とは異なります。

現在の公共工事は週休2日で設計されることも多く、その場合は事前に告知されます。当然日額の補正や工期の延長が行われます。そもそも積算において時間外労働は起こり得ないのです。

2年後には原則化されますので、積算基準書の歩掛も大幅に改定されるでしょう。

ただし自然相手ですから毎日同じ環境ではありません。
現在も積算上、不可動日は考慮されています。現実にも時間外労働や休日の振替はあるでしょう。それにしてもわざわざ猶予期間内に増員やスーパー作業員を無理してまで雇うでしょうか。求人の会社経費がかかりますし、新たな社保の支出も発生します。
1人を雇うにも会社のトータル費用は本人の給与の何倍にもなります。

端的にいって法定労働時間を守り、施工歩掛を意識していれば現場作業員に「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」など経費以外で会社が意識して毎月計上できる訳が無いというのが私の見解です。

まとめます

現行の調査方法で「時間外...」の費用を計上することは限りなく現実的ではない。そもそもそんな費用が発生する余地はない➡「時間外労働時間を短縮するために必要な費用」は限りなくゼロに近いし、その確認のために延べ何万人工を掛ける程の費用対効果はない。

つまり国交省は、単価上昇のポイント(2)としていますが、常識的、物理的に3%労務単価を押し上げる効果は無い。ポイントとするにはあまりにも無理があるということです。


そうはいっても担当のキャリア官僚が「やりました」といったんでしょ?言質を取ったんでしょ?

はい。そうですね。やったんでしょう。じゃなければ単価設定のポイントとして挙げることなど出来るわけがない。調査した結果だといえるわけがない。
私の推測は全くの的外れで、もっと簡単で正確な確認方法があるのでしょう。
全く思い付かないけど。

設計労務単価の上昇率は実は年々ジリ貧で、ついに前年は1.0%まで低下していましたから、2つの特別措置で+3.0%になったことは言うほど簡単には説明がつきません。
特措がどれくらい寄与しているのか根拠が示されていない(示せない)ので推測ですが、数の減った特措(3)よりも(2)の対象に合致するケースはさらに少ないと考えられますから、本来の有効データの基本給、手当、賞与が大きく上がっていないと辻褄が合わない。

それでも寄与したというのなら言葉ではなく数値等の根拠を今からでも遅くありませんから示すべきです。
先に書いたとおり、この調査では今まで一度も示されたことはありませんが。


細かいことはともかく働く方々の賃金が上がるなら公にはそれでいいんです。
補正予算もありますし、賃金上昇分のサイフは十分にある。それで景気が上向くなら調査過程がどうであろうといいじゃないか。
という考えもあるでしょう。

しかし、公務員の年収、賞与は前年の民間企業の年間の動向から人事院により勧告されます。
一方官庁の調査する労務費や賃金は1部を除いてデフレーター処理をしません。しかも調査する各省個別のルールで行われるため、レベルを合わせて比較することが困難です。

それら毎月の結果や年間の結果ならまだ分かりますが、公共事業労務費調査は10月の調査結果を翌年3月から適用するので未来を予測する何らかの補正が必要なはずなのです。
あるいは一切補正しないか、です。

いずれにしても、その根拠となるデータや根拠は一切発信されていません。

仮に2月に経団連や連合の発表する春闘「要求」を考慮するとして、それは指標であって結果ではありません。
結果が出始めるのは3月の上旬ですからそれ以前に公表される設計労務単価の未来を予測する根拠にはなり得ません。

今回の設計労務単価調査で特筆すべきことは、前国交相と日建連、全建ほか業団体、さらに現職大臣と自民党建設議連との間で2%程度の賃上げを実現しようとの動きが活発化していた事。

また、3%の賃上げ目標は12月から1月にかけて岸田首相が新しい資本主義を掲げたうちの一つとして明言しています。
そこで違和感を覚えたのは、それまでとはまるで別のように経団連が殆ど反対声明を出すこともなく、賃上げ率をあらかじめ打ち合わせていたかのように認めたことです。

私は今回の労務費調査ではどんな集計結果が出ようとも3%有りきだったと考えています。逆にいえばそうでないと今年の違和感の説明ができないのです。


参考として先ほど触れた他省のデータを見てみましょう。
設計労務単価の前々日(2月16日)に公表された厚生労働省「毎月勤労統計調査特別調査」における従業員5人以上の企業で、スーパーゼネコンを含んだ額は月給の比較で昨年比+0.4%です。業種の比較では建設業が最も高かったとの結果。
また、この調査では賞与分がわからないので、さらに経団連や東京都の調査結果を流用して試算してみました。なるべく条件を合わせましたが、厳密にはそれぞれがバラバラで企業規模や調査時期が異なりますが、私の試算では前年比+2.7%となりました。

正確さは欠けますが設計労務単価には賞与を含みますので、上昇率としてはまあまあいい線でしょうか。
ただし、労務費調査対象となった会社のほとんどが従業員数50人以下ですので実態はもっと低い値になるはずです。

毎月勤労統計調査でも示したとおり、従業員1~4人の社会保険義務付けではない小規模企業だと、毎月決まって払ういわゆる基本給分は、0.7%増で僅かながら大企業の0.4%を上回りましたが、おそらく賞与と労働時間で比較すると1時間当たりの賃金は小規模企業を大きく上回るのは想像に難くありません。
いずれにせよ設計労務単価が+3%となる比較説明ができるものではありません。



さらに続けます。

設計労務単価公表の前年12月に公表される国土交通省「建築保全業務労務単価」の伸び率は4.1%でした。本文によると、

国土交通省は、直轄の官庁施設の建築保全業務の積算に使用する「2022年度建築保全業務労務単価」を決めた。1日当たりの「日割基礎単価」は、全国・全職種平均で前年度比4・1%増となり、10年連続で上昇した。(本文まま)



すごい値ですね!翌年2月に公表される設計労務単価を占う上では大変心強い結果でした。どうやらこれに限らず翌年に使用する単価を、占いに近い未来補正式が密かに決められているとしかいえません(*_*)
(回帰式など数学的手法を用いて一定範囲の未来・可能性を予測することはできますが、今回のように狙った通りの結果が得られることとは関係ありません)


設計労務単価とほぼ同時に公表される「設計業務委託等給与実態調査」はどうでしょう。

改定後のポイント
○今回の決定により、全職種単純平均で対前年度比3.2%引き上げられることになります。

10年連続の引き上げにより、全職種単純平均値が42,195円となり、最高値を更新(公表を開始した平成9年度以降)しました。

○詳細については添付資料をご覧ください。

○なお、設計業務委託等給与実態調査は、過去に国土交通省発注業務の受注実績がある企業を対象に、地域、規模の分布を反映して抽出し、技術者の給与実態を調査しています。(本文まま)



10年連続で上伸。3.2 %で過去最高とは!なんだか似過ぎてますね!


同時期の公表はまだあります。
「電気通信関係技術者等単価について」

電気通信関係技術者等単価について電気通信関係労務者賃金実態調査に基づき、国土交通省が発注する電気通信設備工事等の積算に用いるための技術者単価(基準日額)を決定した。(本文まま)


令和4年から適用する調査結果


令和3年から適用する調査結果


前年比較
電気通信技術者 +3.8%
電気通信技術員 +3.7%
という結果です。こちらも過去最高値です。何だか奇跡のような一致です。



先の厚生労働省「毎月勤労統計調査特別調査」について、人気建設系Vtuberの浜岡みなみちゃんの印象と、建通新聞の記事で見てみます。



建通新聞 2月17日付け


2022年ってそんなに年収が上がったって気がしますか?賃金だけインフレしていない気がするんですけど。
あ、違うのか。公共工事を請ける会社だけは年収が上がるんですね!

(他のニュースソースである建設工業新聞の記事など、
詳細な解説が異なるのでぜひ全部に目をとおしてください。やるとやらないとでは結構情報量が変わるので裏付けができます)

建設工業新聞



6.それでもやっぱり妙


再三いいますが、設計労務単価が前年より大幅に上がったこと自体は大変良いことです。

ただし調査票の実際の調査票提出対象は現場作業を行った会社が大原則ですから、スーパーやサブゼネコンは調査対象として出ることはまずありません。
ここがとても重要なのですが、調査対象はほぼ全てが何次目かの下請けとなります。

スーパーゼネコンですら2022年の2月末から3月にかけてようやく新年度からの3%の賃上げを表明したのに、調査対象となった下請企業が果たして2021/10月に前年の調査より3%もの賃金アップがあったのでしょうか。
実際に上げている企業を知っているので可能性はゼロではありませんが、極めて少数です。

ここでも比較のために、厚生労働省の令和2年版  厚生労働白書から日本の平均給与の推移を見てみます。

ご覧のとおり、上昇しているとは思えません。全体として同水準から低下傾向といえるでしょう。
特に直近の2009年~2018年の変化は 日本の全労働者の年収でわずか2万円です。それすら上昇とはいい難い。
何故なら、この間2014年(平成26年)に消費税は5%から8%になっています。3%はちょうど2万円ですから控除すると420万円。可処分所得は全く変わっていません。

建設業の皆さんは、年収が増えた実感はありますか?この後示しますが、設計労務単価は平成25年から驚くべき上昇を始めるのですが...


令和2年版 厚生労働白書より



何を言わんとしているかというと、春闘を前にして10月の賃金を調査した結果を3月から適用せよということが解せないのです。
調査の根本に疑問を感じます。
これは以前から謎でしたが、デフレが続くほど調査結果が前年以下となることはおそらく説明できます。

また、設計労務単価以外の国交省の賃金調査結果には"個人の社会保険料を加算する"ことは行われていません。この後説明しますが、社保の個人負担分を加算するのは設計労務単価だけの措置であり、他の調査結果3%とはその意味が全く異なるのです。
数値は同じでも何が上がったかの評価をしようとしても同じ土俵には載せられない、ということです。
こちらも評価に関する根拠は国交省より一切示されていません。

私のように、昨年以降の調査結果は先に数値有りきでは?と思うかたは、結構いるんじゃないでしょうか。
3という数字がいいように解釈されているのは数字や統計という事実の分析を生業にしているものとしては実に気分が悪い。

なので官制賃上げと揶揄されるのも当然です。上昇させることに無理やり理屈をつけるのが正当化されるならば、数値の二重計上によってGDPに多大な影響を与え、結果的に当時の政権のナントカノミクスと称される思惑に合わせたとしか思えない改竄が行われたのは事実ですし、その結果を公表することが批判されることと設計労務単価の不自然な上昇との境目は一体何でしょうか。
都合の良い統計という意味では双方は全く同じであって、日本国民を欺くか世界を欺くかの違いしかありません。

数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつくことはできるといわれる実例です。


国交省は11年上がり続けたと言い張りますが建設業の賃金にその実感がないと私は思います。
これはどう説明したら良いのでしょうか。

国交省が毎月上旬に調査している主要資材の価格動向、建設労働者の需給調査にこの1年間、ほとんど変化が無いことを私のツイッターで来月呟いているのですが、どうしたらその結果になるのか未だにわかりません。
その間ウッドショックや資材の値上げは幾度もあったし、担い手不足が深刻だと言っているのは他でもなく国交省自身なのです。
なので私は国交省、特に旧建設省公表の統計を全く信用していません。
資材の取引価格を正しく示しているのは物価版のみです。

7.解説(資料2)

長いな〜〜〜
解説する資料って2枚しかないんですよ。なのにもう何千文字費やしてるんだろ。多分くどいですよね。
それが私のスタイルなので許してください。
去年、特に今年の結果が異常なのでめげずにもう少しお付き合い下さい。
自分ではもう飽きてますけど💧

資料2を見てください。

資料2


こちらも毎年公表されているグラフなので見たことあるあるって思うでしょう。
私も毎年解説していますが、時系列でみると資料1以上に国交省発表の設計労務単価とする統計が今回の公表値で如何に不自然な値であるかをより直感的に理解していただけると思います。

左から時系列で見てみましょう。

グリーン線で囲ったり、緑でギザギザしているところがポイントです。過去のnoteに書いた部分もありますので見たことのあるかたもいると思いますが、改めて説明します。

経年で見た設計労務単価の不思議な動き

①平成11年⇒平成12年の疑問


資料では妙な言い訳をしていますが、東日本大震災で建設労働者の賃金が下がることはあり得ません。
上がるのが普通です。妙な理由付けです。確か同年比較の厚労省の賃金調査データは低下していません。
私見ですがこの年からデフレとともに建設業界の多重下請構造が急激に進んでいった。右肩下がりどころか右肩はもげてますね。
この調査は景気後退局面で下請次数が増えるほど単価が下がる構造なのです。なぜなら調査の原則として、現場作業を行った会社を調査します。下請次数が多くなるほど労務単価は安くなります。
みなさん自分で自分の首を絞めていた訳です。一番割を食ったのは末端の職人さんですが、これが14年も続いたのです。

②平成24年⇒平成25年の疑問


突如ルールの変更が起きた年です。
社会保険の本人負担分を上乗せしたのですが、保険料徴収の趣旨、計算方法からしてこんなことをする訳が分かりません。
その根拠として国交省および各省の他の賃金・労務費調査ではこんな奇妙なことは行われていません。

平成24年まで実に14年連続して低下の一途だった設計労務単価。
国土交通省としてもさすがにこのまままともにやっていては大変なことになると思ったはず。
図らずも同時期に俄然注目され始めたのが建設業の社会保険の加入率の低さです。この二つを一度に解決する方法が先の社会保険料の個人負担分を調査結果に加算するという荒業と考えます。
常識的には個人の給与総支給額から求められる標準報酬月額に対して国民年金、厚生年金、国民健康保険(税)等が控除されるはずです。
ところが国交省は社保の加入が少ないことを理由に設計労務単価に社保の個人負担分を加算したのです。
今までのルールはいったいどこへ行ったのでしょう。私は未だに納得いっていません。

100歩譲ってこれを認めると、当然会社負担分が必要になります。この年の積算基準は現場経費が増額され、つじつまは合いました。
つまりこの荒業を使った以上、公共工事の受託者において社会保険の加入は必須でなければならないのです。労基法では義務ではありませんが、たとえ5人以下の会社でも入ってもらう必要があるのです。
なので公共工事では社保に加入していない会社は工事に参加することができなくなりました。

まあ、国民皆保険の趣旨からもそうであるべきですが、以前のnoteにも書いた様に何十年も放置してきたのは他でもない所轄官庁なのですから、一人親方などの職業スタイル・保険選択の自由が私はあるべきだと思います。

③令和4年の疑問


今回の結果は過去一訳がわからんってことです。

平成25年から設計労務単価は10年上昇し続けます。しかしよく見てください。上昇「率」は年々下がっていきます。当然です。社会保険料はほぼ変わらないのに土台である労務費が下がっているからです。
いよいよ誤魔化しも効かなくなってきました。こんなに長くデフレが続くと思っていませんからね普通。もちろん調査の仕組みから下がっていく分もあわせてです。

令和3年は特別措置をもってしてかろうじて+1.0%を達成しました。
社会保険料率の段階的増加スケジュールは政府が決めますので国交省でも手が出せません。
このままでは令和4年にマイナスに転じることは容易に想像できます。

さて、トムロ総研が主張し続けているスタグフレーション真っただ中で前年10月の調査結果が3%も上昇するのは当然なのでしょうか。
例えば昨年調査以降翌年4月の春闘および9月までの間に3%程度賃上げした会社が建設業で過半数以上あったと思いますか?
私は有り得無いと思います。

資料2の10年間の単価上昇率表を見ると、年々1/2、1/3と減少していき、今回はいきなり2倍、3倍です。
昨年の秋以降にいったい何が起きたというのか?
賃金は下がったまま、物価はぐんぐん上昇していたはずです。


最終的な集計は本省で行なわれ、その内容はブラックボックスだと書きました。
今までの調査結果で想像出来る根本的な疑問として、毎年調査会社が変わるにもかかわらず各職種・各地区で単価差がきれいに並ぶことはそうそう有り得ない確率ですが、おそらく集計の最終段階で例えば東京の特殊作業員などを基準として係数化した上で微調整を行っているのでしょう。
我々には一切わかりませんが、ここにブラックボックスながらもルールがあるならば踏襲していけばよいので、令和2年までは守られていたと思います。

しかし、令和3年の特別措置、そして令和4年に至っては今までに無い驚きの新ルール、ルールとすら言えませんが首相発言に都合よく数値を変更する政策的特例が爆誕したと考えます。

何があっても変じゃない時代。
統計なんてさほど意味がないという雰囲気といえるかも知れません。
首相自ら賃上げ政策を明言。それは岸田政権でついに具体的な数字として語られます。
統計としての設計労務単価には全くもって納得いきませんが、3%以上の官製賃上げは景気刺激には大いに貢献すると思います。


運悪くなのか、官制賃上げ発言の前に国家主要統計の改竄が次々と明らかになっていました。
それは国土交通省にとどまらず、厚生労働省においても数年前の統計処理ミス(なのか)や、労務費・賃金については前述の二省のみならず経済産業省などでも個別に調査が行われていますが、それぞれのルールであるために横並びの比較ができないという致命的な状態が全く改善されません。そのことが改竄をし易くしているともいえそうです。

これらは調査される側の負担も大きく、あらゆるところから時期など無関係に大量の調査票が送られてきます。大企業だとそれ専門の部署があるくらいです。
中小企業では当然兼務でしょうから不満は爆発寸前です。調査票の回収率が悪いのは当たり前なのです。それが調査票の改竄につながることに気付かないほど霞ヶ関はバカではないはず。
過去からの慣習を変えられない体質、皮肉にも電子化で増え続ける単純作業、調査する方される方が報われるものでなければ国家統計自体が成り立たなくなるでしょう。

(参考図書:「国家の統計破壊」明石順平著など)

積算基準も賃上げ後押し

令和4年度 土木工事積算基準の改定に「一般管理費等率」引き上げがあります。設計額は確実に上がります。

それは良いことなんですが、相変わらず重要な部分が改善されません。
一般管理費等率って財務諸表2期分を使って決定まで1年以上かかり、本社機構の人件費、国債の金利、市中金利なども含めて算出するんですが、この2年で上がる要素なんて無いですよね。
内部留保が〜って考え方もあるでしょうが、それは決して健全じゃないし官がどうこう言う筋合いのものでもない。
ただ、本来賃金やステークホルダーに配当として分配されるためのおカネと考えれば、これからどんどん一般管理費として吐き出してもらうのはわかるんですが、一番充当されるべき現場作業員に行き渡るんでしょうか。

アイスブレイクで取り上げていますが、今後自分らが検証するようですけど。

ここは全然メジャーではない話なんですが、前払い金のある場合、一般管理費等率は補正係数と対になります。
理屈では前払い割合の高いほど補正係数は小さくなるし、昨今の超低金利下では補正幅が小さくなって然るべきなんですが永らく変更されていません。

設計労務単価の直後に公表された「令和4年版  土木工事積算基準」の変更点には記載がありませんでした。
変更なしという事でしょう。
公式製本は6月なのでここで100%断言はできませんが、まず間違いありません。
当然納得はできませんよ、けど設計金額が上がるならいいじゃんということで溜飲を下げますよ、もう...


令和4年度版土木工事積算基準の一般管理費等率



https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001470965.pdf


8.アイスブレイク


設計労務単価とCCUSとの関連は切り離せないので時間軸は3月に飛びますがこんな話もありますよというコーナー。
アイスブレイクでは、これだけで建設行政に関するnoteがそれぞれ一本書ける様な内容を厳選していますが、時間の無いかたはアイスブレイクはすべて飛ばして結構です。
私の備忘録的側面もあるので。

いつもお世話になっている、苺さんのtweet 3月25日


全てはCCUSに繋がっているので、避けてとおることはできません。

業界紙より   会社の施行能力評価について


CCUSの視点で見ると会社の評価は職人によってもたらされたものですから、このような仕組みを横断的に運用することは履歴の積み上げにも有効でしょうし、カードの色にも貢献するので謳い文句の年収への土台ができます。
そうなれば、職人側も賃金について強く要求しやすくなります。
CCUSにおいて、そうしない理由が見つかりません。


国交省の公式資料がありました↓


https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/ccus_mieruka.pdf


施工能力の見える化評価


施工能力の見える化評価


重要なのは、施工能力を評価しました、つまりその会社の職人の能力にお墨付きを与えました、カードの色にも反映します!

までで国交省の自己満足で終わっちゃいけないということ。
CCUSに組み込まれた以上は、誰が評価に応じて年収を上げてくれるのかってことですよ。
CCUSのメリットって何でしたっけ?
この国交省の資料からは読み取れませんね。
ま、そういうことです。絵に描いた餅とか他力本願っていうんでしょうね。こういうの。

答えは請負者が払えってことです。ほんと、腹が立つ…


アイスブレイクについては、別なnoteを書きたいと思いますので気長にお待ちください。
今午前3:30ですよ。しばらく文章書きたくない。


9.世の賃上げとは


アイスブレイクを一旦終了して、続きの話をします。ここまで、昨年までの設計労務単価の決定プロセスとは全く違う、日銀っぽくいうと異次元の値が公表されたのだということをダラダラと書いてきました。
ここからは私の伝えたいことにさらに深く入ります。


みなさん春闘ってご存じですよね。
毎年春にその年の賃上げを労使が協議することです。
今回の設計労務単価もそうですが、前年10月の調査を元に設定する以上翌年の賃上げがどのくらいか、特に建設業はどうなのかを織り込まなければ賃下げになりかねません。
ここをどうやって補正しているかはブラックボックスで分からないとはっきり書きました。
今回のnoteは大手業種の賃上げ要求と妥結結果がほぼわかる時期にリリースすることにしていたので、経緯と結果を見てみましょう。

民間企業の春闘結果

民間の優はこんな感じという比較
トヨタだけでなく、NISSAN、HONDAも同様に賃上げ要求一発回答です。


驚きの結果


スーパーゼネコン、みんなで足並み揃えて賃上げ3%
頼むから自社の社員だけでなく、現場の職人に3%を行き渡らせてくださいよ。
当然外注工事費も増やして貰います。


中小企業の春闘の動き


どうでしょう?私が訴えたいことが伝わるでしょうか?
トヨタ、ニッサンなど建設業界に匹敵する従業員数550万人の自動車がなんと一発満額回答(各社の回答形式が違うので%で表記できず)
スーパーゼネコンは3月7日には3%の賃上げを早々に表明しました。

中小建設業団体組合の集計結果は4月20日以降ですが、スーパーゼネコンだけが3%の賃上げ達成で良いわけがありませんので、プラスは期待したいですね。
ただし、企業体力という面ではスーパーと同じという訳にはいきませんので、今年度受注工事分から労務単価が上がってくれれば実質分配されますので実は取れるはずです。

過去にここまで早期に大幅賃上げが一発回答された年を私は知りません。
バブル期でもそうそう無かったかな?そういった意味では今年は極めて異例、奇妙なのです。ついこの間まで何十年も、「統一賃上げまでの体力はない。各社別の春闘であるべきだ」と経営陣のお偉いさんたちが言っていたんです。
ですから私個人としても驚きのあまりおくちポカーンでしたね。

そろそろお気づきのかたもいらっしゃるでしょう。
設計労務単価がなぜ3%も上げたのか。

10.政府主導の春闘・賃上げ



みなさん、経団連はご存じですよね。主に大企業の経営者で構成された団体です。反対に労働者側の代表団体が連合です。また、経団連は政府与党つまり自民党の強力な支持母体の1つで政府に対して対等に渡り合える力を持っています。
毎年、連合の示す賃上げ目標に対して反対の立場を表明するのが恒例となっています。
ところが今年はどうでしょう。団体交渉一回目で満額回答が続出。

「経団連の十倉雅和会長は「期待を上回るぐらいの勢いの回答」と評価した」

朝日新聞デジタル抜粋3月17日


経団連の会長が、期待を上回る回答と総括したのです。
連合の会長の言葉なら分かりますよ。
これがどういうことかわかりますか。

先に書いたように、労使関係における経営者側の思想として、労働者の賃金はできるだけ上げたくない。過去の歴史を見ても必ず連合の表明する目標に対して要求全額は会社が維持できないなどの反対理由を公言するスタイルでした。

ところが今年は経団連からのコメントが無い。
その時点でシナリオはもうあるのだと思いました。岸田政権が3%以上の賃上げを公言できたのは少なくとも経団連とは話がついていた。
例えば、賃上げ3%と法人税の低減制度の立ち上げ、内部留保課税案潰しや法人所得税の見直しの先送り、とかね。

私が十倉会長の立場であれば、今のご時世では致し方ないという趣旨の発言をして悟られないようにしたでしょう。
期待以上などと言ってしまっては、今までの20年間は何だったのかと私みたいな奴が、プンプンするのは当然です。
いい人なのかもしれませんが、立場を忘れて賃上げは織り込み済みであることの証拠を晒してしまいました。

賃上げする原資はずっと貯めこんであったのです。コロナ禍が都合よくつかわれた感がありますが、官製賃上げであるという事実は揺るがないものと考えます。

さらにこの夏には参院選が控えていますね…まやかしと言われるペケノミクスを賃上げとして実現したのは政府新与党だというのは選挙へ向けて最高の実績ではありませんか?





11.アイスブレイク#2


春闘に関連してこの3月における日本国経済政策のビックリエピソードをまとめました。

◎日銀の見解






◎民間シンクタンクの見解




12.渡りに船


あ〜あ
ホントのこと言っちゃいましたね麻生さん。口軽すぎ。ギリギリまでリリースを待った甲斐はありましたけど👍

『お前らのことを一番考えてるのは他でもない自民党だ。自民党が経団連に言ったから賃上げしてんだぞ。だから参院選よろしくな』ってことでしょ。

呆れたけど、私が予想してきたこと9.がたった一言で証明されました。

国交省は淡々と調査結果は求めたものの、政府の鶴の一声で3%になるように手が加えられたのです。
これは調査でも統計でもありません。対象は設計労務単価以外にも沢山ありますから、これが糾弾されずに1年間使われていくとしたら、最悪差額の返還を求めた民事訴訟が起きるかもしれません。

尤も、賃金が上がって文句を言う人などいないでしょうが、統計を捻じ曲げるのは許しがたいのがトムロ総研の意地。




13.アイスブレイク#3


設計労務単価と建設行政全体における重要な変革についてあれこれ

労務単価や諸経費率、最低制限価格など公共工事において同じ工事でも新基準だと総額が大きく上がったことはとにかく喜ばしいこと。
春闘と合わせ今後もどんどん上がって民間工事にも波及し、日本中の労働者の賃金が商品のインフレ率に近づきスタグフレーションを解消するきっかけとなって欲しい。

一方、今年の結果は何もかもがおかしい。恣意的にことが進められるなら政官の思いどおりになる。それは民主主義や資本主義とは全く逆の社会。

官僚の人数が減らされていく中で気の毒なのですが、統計の改竄が次々と発覚、横行しています。これは本人達のせいだけでは無く国政の問題です。
ですから、政策的に決定した結果に辻褄を合わせるような説明はせず、政策である旨公表すべきだし、正直であれば政・官の支持率も向上するでしょう。
低賃金で批判されることより賃上げで国民を幸せにしていく方が正しいですし、それは政府与党だけでなく企業の社会的責任を果たすことにも繋がるのです。



◎建設業の賃金アップでは避けて通れないCCUSの喫緊の動き

日建連の会長は昨年より奥村組のCEOが務めることとなりました。
自社施行においてCCUSの普及を高めるためと、肝入りで始めた社会実験にクオカードを使うという太っ腹企画を行いましたが、その結果報告が入ってきました。
果たしてその効果は...

https://twitter.com/tomuroRI/status/1506217751471624200?s=20&t=IODeVsPvojxeJCHAGhSjug

◎補助金制度継続



◎どうも成立ちと先行きがきな臭い認定行政書士制度とCCUSアドバイザー


◎総研は以前よりCCUSより遥かに賃金の安定と流動性が機能する、自治体に権限のある「公契約条例」を導入し、運用することを訴えてきました。
その現状について新しい動きと、この機会に全容を確認します。
また書類書類、紙だ紙ですけどね。


江戸川区の例も紹介

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/28969/setumeikaisirilyou.pdf


我孫子市の例


そもそも公契約条例とは




◎こんなことも  3/8付け
次年度(来月4月)より港湾・空港工事で諸経費が設計どおりに使われているかを確認するってよ。

過度のダンピング、ピンハネはできなくなりますよ。

同じ省内で一般管理費等率を上げる土木・建築工事でもやらない理由がないですね。
官製賃上げですから、ここまで一貫性をもってやることにこそ意味があります。
我々は大いに注視していくべきところです。
みなさん、建設業での導入が公表されたよってプレスリリースを見つけたら教えてね。







◎喫緊のトンチキ騒ぎ


◎国土交通省 賃上げしたら加点してやんよという暴挙 
いい塩梅じゃないと中小企業がバタバタ死ぬかもね


◎2022/4/1付け   国土交通省   事務次官名での異例の通達
激動となるであろう今年度の注意事項  
これだけでnote1本書けそう


14.結論

長々と書いてきましたが、結論を。

誰も言わないんで私が言います。

統計を政策でコソコソ歪めるのは止めてもらいます。散々な結果を受けたからこそ政府は景気対策としてこう判断した、と言ってください。

賃上げは大歓迎です。が、
肝心なのは賃上げが続くことです。今回できたのですから20年は続けて過去を取り戻すくらいのことをやると腹をくくってもらいます。

企業は内部留保を付け替えてどんどん賃金に充ててください。
中小企業を護ってください。
政府と日銀が後ろにベッタリついているんですから大丈夫です。


2.で示した3つの疑問の答えはこうなります。

1.設計労務単価が示すものとは何か

発注機関の都合で計算されたもので、民間企業がそのまま使っていいものでは無い。会社の経費を含まない為、給与でもなくただの「賃金」である。誤用してはいけない。
今までは統計としての価値があり賃金の変化を見ることに大変重要な存在だったが、今後は疑ってかかるべきものとなった。

2.調査結果は実態なのか世相などそれ以外の要因が加味されるのか

今年は政府によりつくられた調査結果である。

3.なぜ霞ヶ関の調査には結果についての考察が無いのか(今回は公共事業労務費調査について)

ヤバくて書けないから。
私の仕事を増やしてくれて迷惑。


戦争が起きてしまう世相ですから、もう何でもありって感じです。
残念ですが、近年の国家統計をまともに信じちゃいけません。
自分で真実を掴みにいかないと死にます。いろんな意味で。


ふざけないまともな結論もちゃんとあります。

公共事業労務費調査と設計労務単価の精度向上と、必要経費の明示で皆さんがきちんと利益を出せる業界となるために必要なことを真面目に紹介します。

自死に等しいダンピングを無くしていく意識付けにもなります。
既にある、たったひとつのことを守るだけです。


国交省が定め推奨している「標準見積書」、これ必ず使ってください。


そうすれば会社の職人でも一人親方でも労賃を確保した上に経費が必ず明示できます。

あたり前に使われるようになれば、不当な値引きや指値契約は出来なくなりますし、国交省を始めとした発注機関による元下間の契約状況立ち入り調査で困ることは一切無くなります。

また、この見積書で契約すれば労務費が翌年の公共事業労務費調査に反映されますので、あるべき賃金が設計労務単価となります。
本当の上昇スパイラルが生まれます。

国交省側の見方になりますが、今回私が提起したような統計の疑義を持たれても一定の根拠となりますし、これをもとに官製賃上げがあったと推測されても、現在のように末端のバラツキの多い分散の大きなデータからではないということは主張できるのです。

って事で、四の五の言わずに標準見積書を使って賃上げに結び付けましょう。
CCUSに任せていてはいつまでも賃金は上がりません。標準見積書なら賃金の反映に即効性があります。

さらに凄いのは、この見積書がきちんと流通し実取引が続いていけば、設計労務単価に会社経費を含んだ〈 参考値〉に近づいていくので、今の試算だと4割ほど見積総額が上がると国交省が示しています。
(設計労務単価と民民取引の内訳は同じものでは無いということです)

それでも使いませんか?

使うしかありませんよね?

これが電子データでやり取り出来るようになったらもっと便利になりますよね?

つまりCCUSより、標準見積書を使う方が早くて簡単で安くてうまい。


標準見積書


下の国交省URLや、各建協などに雛形があります。
必ず使ってくださいね。
今後、口約束とか絶対にダメですよ。


https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/ccus_roumuhi_youseitsuuchi_dantai.pdf


以上

20,805文字
2022年 4/2  4:15

以下追記

◎中小規模 春闘最新の動向


仮に結果が3%になったとすると、机上の話ですが設計労務単価分+自社分で建設業は6%程度の賃上げ原資が見込める事になります。
物価は余裕で二桁上げてますが、これならお給料もちょっと期待しちゃいますね。

◎公契約条例とCCUSの両立は不可か
   自治体のCCUS普及率はなぜ低い
   の2点について

ツイッターで連投したので、こちらもぜひ読んでみてください
時間とともに想定が事実に変わっていきます

ありがとうございます