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CCUSの近況と、広げた風呂敷は意地でもたたまない国のこと⑥

くどいのは好みでは無いのですが、もう毎回繰り返しますよ。CCUSの第一目的は建設作業者の年収アップ・処遇改善です。今回は8.一人親方です。

まずお詫び。連載⑤では、ツイッター連動でバタバタ騒ぎに巻き込み、申し訳ありませんでした。データの扱いがあまりにも恣意的なもので端折ってしまいましたが、どこが問題なのかなど質問があれば遠慮なくコメントつけてくださいね。

さて一人親方。国交省資料のタイトルはこうです。”社会保険加入対策・建設業の一人親方対策”。

要は一人親方とは名ばかりで、個人事業主を装って違法に社会保険を逃れる手段となっているのはけしからん、という話です。国土交通省は、偽装一人親方と適正一人親方と呼称して使い分けています。

そもそも偽装一人親方って何なのか。本当は会社に属する社員であるのに、個人の請負で働いているような雇用形態を装っていることと、その個人のことを指します。

なぜそんなことが起きるのかというと、本来企業が社員に対して負担することを義務付けられている雇用保険・(企業年金:任意)全額、国民年金・厚生年金・国民健康保険・任意健康保険の1/2、時間外給与、各種手当などを払わなくて済むからです。1人であれば(良いという意味ではありません)さほどでも無いかもしれませんが、企業規模が小さいですとか、偽装が10人20人となると多額の費用を節約できるからです。企業側の社会保険逃れでもあるのです。経費・税金ですから課税対象にならないので損得で考えると損だと私は思うのですが、企業負担分をキックバックさせて脱税しているかもしれませんね。そちらの方が罪が重いと思います。どちらにせよ自分のしっぽを食べているようなもので賢いとは思えません。

ここで危惧されるのが、一人親方扱いとなったひとは自費で上記保険を全額納めなければならないのですが、原因から考えて払わないでしょう。こうして企業も偽装一人親方ともに社会保険を払わないケースが増え年金制度上無視できなくなったのです。当然労災発生時はおおごとになりますよ。ただ、連載④でも触れたように建設業界において、国土交通省・財務省が長きにわたって無責任だったことも忘れてはいけません。

ことの筋からいって偽装一人親方に網を張るのではなく、企業側に正しい指導・査察を行うべきなのです。なぜなら、国交省や業団体によるアンケートでも会社に言われて仕方なく一人親方になった、というケースも明らかになっているからです。ここも国交省・財務省の大きな勘違いポイントです。

もう1点規制逃れの遠因と思われることがあります。公共事業労務費調査において一人親方の場合は調査の仕方が異なります。なにが起こるか簡単にいうと、青色申告レベルでないと給与と経費の区分が困難かつ記入に時間がかかりすぎるので有効調査票とならないケースが大変多かった。結果的に、一人親方の調査票はほぼ白紙で受け取らざるを得なかったのです。そこに目をつけられた可能性も否定できません。現在はかなり厳格に調査が行われるので従来のようにはいきませんが。

さて、偽装一人親方とは雇用会社の側に問題の本質があることがわかりました。もともと一人親方として技術・経験も申し分なく、しっかり確定申告、納税してきたかたにとっては大迷惑です。ところがこの先適正一人親方にも大きな試練が待ち受けています。インボイス制度です。この連載を読んでいただいているかたはご存じだと思うので説明は省きますが、わたしは導入の際企業に属した偽装一人親方のほとんどはここで淘汰消滅すると思っています。企業にとっても個人にとっても、あまりにリスキーなのでもとの会社に社員として戻るか、転職する、起業するなどの選択をせざるを得ませんから。なかには課税事業者登録をして真の一人親方になるかたもいるかもしれないですね。あとわずかな時間、国交省も目くじらを立てて人手と時間を浪費せず、財務省に任せたらいいのにと思います。贖罪の意味なら身から出た錆ですからどうぞご勝手にという感じですね。

先程も触れたように適正一人親方は建設業界において大変重要かつ貴重な存在です。


「一人親方」は働き方です。働き方は万人に保証された自由であり権利です。

全てがこなせなければ一人親方を名乗ってはいけない定めなどどこにもありません。

むしろ一人親方を守る・育てるという視点が国交省資料に全くないことも大変不満な点です。社会保険ばかりをいうなら後納制度を使えばいいのです。ことの本質を見失っている国交省には名前のとおり猛省を促します。

CCUSは一人親方の処遇改善も重要な目的のはずですから。全く進んでいませんがどうなっているのやら。




連載⑥は以上です。

次回は海外技能実習生制度・特定技能外国人制度についてです。大変複雑かつ微妙な問題を抱えていながらCCUSはこれも統合してしまいました。

連載のための下調べで、全様を把握するのに大変な時間がかかりました。なるべく簡素にまとめて図表などもつくると少々時間がかかるかもしれません…

(小ネタ:7月1日より、CCUS管轄部署の長、不動産・建設経済局長だった青木由行氏は内閣官房・地方創生推進事務局長となります)


ありがとうございます