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CCUSの近況と、広げた風呂敷は意地でもたたまない国のこと⑦

くどいのは好みでは無いのですが、もう毎回繰り返しますよ。CCUSの第一目的は建設作業者の年収アップ・処遇改善です。今回は9.技能実習制度・特定技能外国人制度についての予定だったんですが、軽く触れられる内容では無いし、かといって簡単に理解できるほど甘くもないもので、作り込みに時間がかかっているのでもう先送りします。何日かけてもまとまらないんですよ。

なので9.はまた後日。ひとつ飛ばして今回は10.公契約条例について

(以前に書いたことがあります)


CCUSの本質的な問題は、専用カード作成や建退協システムとの連携など、周辺の整備ばかりが進んで何年経ってもあなたの年収が一向に上がらないところにあります。

ところが、実に簡単な方法でダンピングなどによる手取り額の減少を起こさない、しかも即時可能な方法を自治体がとっくの昔に始めているのをご存じですか?

「公契約条例」といって自治体が定められる条例のひとつで、公共工事における賃金の支払いに発注者が強い権限を持ち、元下間で不平等が起きないようにするものです。全国に先駆けて千葉県 野田市が2009年に導入しました。以降全国で制定の動きがあり、得に東京都各区において条例が成立し、あるべき賃金の確保に効果を発揮しています。まずその広がりを見てみましょう。


公契約条例の全国動向について 公益社団法人神奈川県地方自治研究センター 野口研究員のレポート

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この条例は、基本条例と公契約条例に大別され、具体的な賃金の下限が規定されたものを公契約条例と定義しています。

公契約条例でなければ実益はないと言っていいでしょう。ただし、この条例は細かな規定が自治体によって異なっています。例えば適用工事費がいくら以上の場合か、賃金の下限額水準などです。企業規模によっては入札のハードルそのものが高い場合もあるでしょう。

では受託者にとって最も良い条件設定の1つである東京都 世田谷区の例を紹介したいと思います。


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予定価格3,000万円以上の工事

例えば足立区は1億8千万円以上の工事で下限額は90%なので、参入条件は随分違いますね。実は新宿区は2,000万円以上、90%です。何はなくとも入札参加資格は東京で取るのが良さそうですね。

この条例の素晴らしい点はこれだけではなくむしろこちらかもしれません。罰則規定があることです。条件を示して入札するので、元請はもちろん下請の賃金が下限を下回った場合、発注者に報告することができます。その事実が確認されれば元請の入札参加停止などの処分がなされます(自治体で細部の運用が異なる場合がありますので確認が必要です)。

多重下請構造から抜け出せない状況で苦しんでいる会社が多い我が国でこの条例の威力がお判りいただけたでしょうか。二次三次…となるにしたがって賃金が絞られていませんか。

しかも、あなたに新たな費用や手間は一切かからないのです(誓約書位はあるかもしれない)。

CCUSとのあまりの違いに驚きませんか?現在のCCUSに賃金の保証があるといえるでしょうか。システムへの参加費用はどうでしょうか。

どこをとっても公契約条例を上回る点はないと私は断言します。

この条例はCCUSと共存できるので、国、自治体、民間で受託業者が今後分かれていくかもしれません。発注者と条例委員会の理解が何よりありがたいですしSDGsの目標とも合致しますのでお互いに利があります。どんどん公契約条例が広がるといいですね。市民から積極的に働きかけるのも効果的かも。いずれ国を動かせたら痛快ですね!

風呂敷完敗!





次回は、CCUSと外国人労働者についてか、重層下請構造についての話にしようと思います。

ありがとうございます