社労士亀岡の労務サロン

社会保険労務士の亀岡亜己雄です。1999年事務所を開業し、20数年社労士業を行っており…

社労士亀岡の労務サロン

社会保険労務士の亀岡亜己雄です。1999年事務所を開業し、20数年社労士業を行っております。企業の日々の労務管理、労務リスク対策・対応、労務問題の事後対応、労務管理書類の対応、行政手続き、就業規則の作成・提出・運用、研修会講師などを行っております。詳細はプロフィール記事に記載。

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最近の記事

年次有給休暇の買い上げは行っていいのか

今回は、年次有給休暇の買い上げのお話です。 法律の条数などが登場しますが、年次有給休暇は労働基準法の規定になります。 1 年次有給休暇の買い上げのシーン 年次有給休暇が未消化となった場合に、年次有給休暇の買い上げを何の検討もなく行っているところもあるかもしれません。年次有給休暇の買い上げが発生する場面を整理しておきます。 ●法定の年次有給休暇が未消化のため翌年度に繰り越される。 ●法定の年次有給休暇が未消化のため時効となり取得できなくなる。 ●法定を超える年次有給休暇が未

    • 実労働時間が8時間未満でも割増賃金を支払う必要があるか

      今回は、とてもメジャーな割増賃金のお話ですが、1日の労働時間における割増賃金になります。 1 割増賃金の支払い義務があるのはまず、基本事項になりますが、法律の規定を確認しておきます。 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金) 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増

      • 採用内々定をめぐる問題を考えよう

        今回は、採用内定とセットで理解する必要がありますので、「採用内々定」の問題を取り扱っておきたいと思います。 1 「採用内々定は何?」と考えるとわからなくなる 「採用内定」は社会一般に広まっている表現であり言葉ですが、「採用内々定」となるとどうでしょうか。 一般に、「内定」と「内々定」って何が違うのかとなるのではないでしょうか。企業も十分によく把握して使用しているわけではないと思うことがあります。 「採用内々定」は何だろうと考えるとますます意味不明になります。最終的に採用を

        • 内定取消が認められない場合とは

          今回は、内定取消が認められるか否かに関するお話です。 1 労働契約が成立している内定なのか 内定取消とは言うものの、そもそも労働契約が成立していない場合には、成立した契約を破棄する話にはならないわけです。 そこで、契約が成立したと言える内定なのかを見る必要があります。 基本的な考え方としましては、 求職者の申込みに対し、企業の承諾にあたると位置づけられる内定通知の場合には、その内定は労働契約が成立する内定となります。 たとえば、内定通知が明確になされていなくても、入社

        年次有給休暇の買い上げは行っていいのか

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        • 年次有給休暇
          2本
        • 賃金(給料)
          3本
        • 採用
          3本
        • 解雇
          3本
        • セクハラ
          1本
        • パートタイマー
          2本

        記事

          採用内定とは何か

          今回は、言葉はメジャーでも実はあまりよく理解されていないことが多い採用内定のお話になります。 1 採用の前段階 通常、求職者は求人票などを見て「応募する」という形を取ります。まず、求人票ですが、これは、企業が出した求人広告=募集、つまり「申込みの誘引」=誘っているだけということになります。 この後、求職者が応募する行為が、「申込み」、つまり、相手からの承諾があれば契約が成立する意思表示の一方をなすわけです。 少々細かい話になりますが、採用内定の話は、採用の前段階の話です

          勤務時間外のセクハラ騒動も対応しないといけないか

          1 セクハラとは セクハラの規定が導入されたころは、「セクハラよ」と、ドラマのワンシーンのような言葉が聞かれましたが、最近は、そのような言葉が登場しなくても、後日、「セクハラされました」と公になるケースが増えているようです。 そもそもセクハラとはいかなる行為をさすのか。きちんとインフォメーションはなされているでしょうか。行為そのものは、そのほとんどが男性から女性です。もちろん、女性から男性の行為がセクハラに当たらないということではありません。 セクハラとは何かについて簡潔

          勤務時間外のセクハラ騒動も対応しないといけないか

          パートにも健康診断を受診させなければいけないか

          今回はパートタイマーに対する健康診断の適用の話です。 1 パートタイマー労働者への健康診断適用の問題点 企業では、パートタイマー労働者へ健康診断を受診させるか迷う場合が多く、よくわからないまま、「正社員じゃないから」「パートだから」と受診させていない状況になっている例もあるのではないでしょうか。 これは健康診断に限ったことではありませんが、採用から退職までの労働条件に関係する多くの場面で、「パートである」という理由だけで正社員と異なる扱いをしていることがあるかと思います。

          パートにも健康診断を受診させなければいけないか

          退職後に懲戒解雇理由があることで退職金の支払いを拒否できるか

          今回は、懲戒解雇に係わる退職金の支払いについてです。 1 そもそも懲戒処分の規定が適用になるか 本人がまだ在籍している場合には、不正な事実が発覚した時点で、懲戒解雇を通知し、退職金を支給しないと決定することが可能です。この点は何ら問題ありません。ただし、退職金規定に、懲戒解雇の処分を受けた場合には退職金を支給しないことを規定しておく必要があるのは当然です。  では、不正な事実が発覚したものの、本人はすでに退職している場合はどうでしょうか。発覚時点で本人に通知して退職金を不

          退職後に懲戒解雇理由があることで退職金の支払いを拒否できるか

          労働時間にあたるのはどのような場合か

          今回は労務のテーマの中でも核となる「労働時間」を取り上げます。 1 労働時間とは何かの法規定はない 労働時間に係わる法規定は、労働基準法の32条代の条項になります。誰もが知っています1日8時間や週40時間の労働時間制もこの32条代になります。また、変形労働時間制やフレックスタイム制の規定も32条代に規定があります。 しかしながら、実は、労働時間とは何かについては、つまり、定義については法律の条文に規定はないのです。 2 では労働時間とは何か 労働時間の定義を規定した条文

          労働時間にあたるのはどのような場合か

          配置転換命令の拒否をどう取り扱うか

          1 配置転換を命じることができる根拠 従業員に配置転換を命じるためには根拠が必要です。この場合の根拠とは、配置転換の命令権があるという根拠です。もし、配置転換を命ずる権限がないにもかかわらず命じれば、その配置転換命令に効力はないことになります。  「えっ、そんな難しいこと言わなくても会社ってそもそも配置転換を命じることができるんでしょ」 こんな声が聞こえてきそうです。企業が従業員に指示命令を出すのはあたりまえと思われているため、根拠など関係なしに配置転換も命じることができる

          配置転換命令の拒否をどう取り扱うか

          出来事を記録したメモ・日記・ノートはこう扱うべき

          1 録音や画像だけが事実を示すものではない労働問題の中でも証拠が残しにくいシーンがたくさんあります。企業にとっては、、「どうせ証拠なんかないんだから、主張されたって別に・・」と言った姿勢になりがちです。労働者にとっては、「ハラスメントの証拠なんか残すの難しい・・」とするところです。 一般に、証拠は、多くの場合、録音や画像等を指して言われますが、果たして、録音等がないことで損害賠償は関係ない、あるいは、無理と断定してしまってよいのでしょうか。今回は、この点をいくつかの裁判例を

          出来事を記録したメモ・日記・ノートはこう扱うべき

          退職金支給で本当に問題になる点とは

          1 退職金とは何か退職金の意味や性質を考えたことがあるでしょうか。 “従業員が退職した時に払うお金” 確かに、ごもっともです。ただ、どのような性質のものかを理解しておく必要があります。性質は、退職金を支払う支払わないの話でも密接に関係してきます。 同一労働同一賃金の領域で、均衡・均等な待遇の話になった際も、退職金の性質は密接に関係してきます。 退職金は、一般に支給基準が就業規則などで規定されており、そのことから労働の対象としての賃金と考えられます、また、在職中の労働の

          退職金支給で本当に問題になる点とは

          自主退職との扱いになるはずが解雇とされた例

          今回は、従業員が退職の意思表示をした、あるいは、企業が退職届を出してと言ったパターンの退職の取り扱いについての話です。 1 自主的な退職か解雇かの例【事例1=株式会社丸一商店事件・大阪地判平10.10.30労判750号29頁】 企業(被告)の言動  「新しい事務員も雇ったことだし、残業をやめてくれ。残業をつけるのならその分ボーナスから差し引く」 「来月から残業代は支払えない。残業を付けないか、それがいやなら辞めてくれ」 従業員(原告)の言動  「それでは辞めさせて

          自主退職との扱いになるはずが解雇とされた例

          試用期間の者の解雇や本採用拒否が許される場合とは?

          今回は、試用期間の解雇の問題です。 1 試用期間とは何か 労働問題が生じた際に、試用期間とは何かを理解せずに、対応してしまっている例が多くみられます。  試用期間とは、「能力や適性をみるための期間」と理解しておいていいかと思います。 つまり、採用前は企業も採用した従業員の能力や適性については、ほとんど未知であることから、採用後の一定期間で、あらためて、しっかりと能力や適性をみるという期間を設けているものです。 そして、敵性や能力によっては、雇用契約の解約が許されるとさ

          試用期間の者の解雇や本採用拒否が許される場合とは?

          採用後まもなく退職した者に対し損害賠償請求できるのか

          今回は、せっかく採用したにもかかわらず、すぐに辞めてしまった場合のことです。そこに、損害賠償の話が入ってくるパターンです。 1 損害賠償請求にはパターンがある 従業員に対する損害賠償請求という点でみますと、法的な考え方を考えなければ2つのパターンが考えられます。 ➀損害が発生する場合を想定して、予め損害額を支払うことを契約しておくパターン。 ②事後的に損害賠償を要求するパターン。 あくまでも法的な概念を考えない場合になります。 ➀が可能だったとしても、実際に企業がいく

          採用後まもなく退職した者に対し損害賠償請求できるのか

          始末書の取り扱い

          今回は、実務上、必ず登場する「始末書」を取り上げたいと思います。 1 始末書で問題になること始末書の何が問題になるのか。おそらく多くの企業が経験済みかと思います。 多くの場合、企業は「始末書を書け」「命令だから提出しなければばらない」とします。従業員は、「仕方なく書く」「本当は書く理由がない」と思っています。 ここが、始末書を巡る問題点として浮上することになります。 では、ここに潜む問題点は何か。 企業は「始末書を書け」と命じることができるのか、逆に従業員は、言われ