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令和でやってはいけないマジック

アンビシャスカード、トライアンフ、カラーチェンジングデック……これらの手順があなたのメインレパートリーに入っていませんか?

ひょっとしたらそのマジックは危ないかもしれません。

前回の記事はネタ回だったので、今回は理論ではないですが、少し真面目な記事を書きました。

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なぜ危険?なにが危険?優良マジックに潜む罠

最初にあげたプロットに共通する事があります。
それは、これらのプロットが『ウケる』『簡単』『角度に強い』と誰に聞いても文句なしの『いいマジック』という事です。
メジャークラシックプロットでかつ、現場のマジシャンたちもよく演じる『良いマジック』。
実際ぼくも何度も演じた事がありますし、メインレパートリーには入らずともサブレパートリーには入っています。

これらのマジックを演じる事を推奨しない理由、それは『タネを知ってるお客さんが増えたから』です。

これは完全にぼくの経験からくる主観ですが、ぼくがマジックバーで働いていた2019年あたりから、お客さんの中に「あ、それ知ってる!2枚めくるやつや!」とか「あ、1番上だけ色違うやつや!」などマジックの種がわかるお客さんがたまーに出てくるようになりました。

これだけだと(ろいが下手だからバレてるだけだろ)となって終わりなのですが、だいたいその後に続く言葉が「俺これYouTubeで見たから知ってんのよ」でした。

彼らの厄介なところはその動画の内容を具体的に覚えているわけではなく、要素要素で記憶しており、そこが現象や手順の一部と重なると『種がわかった判定』をくだすところです。

例えばトライアンフですと、トライアンフシャッフルだろうが、ザローだろうが、ヘインシュタインだろうが、その技法部分の記憶は抜け落ちており、最後の半回転させるところだけなんとなく覚えていて、現象が起きた瞬間、記憶の中のYouTube動画が思い出され「種がわかった!」となるわけです。

実際詳しく聞いてみると「なんか上手いことやって最後ひっくり返す時に全部揃うんよ」くらいの事を言い、他の種を知らないお客さんからすると(???)のような説明になる事が大半です。

本人もその段階になると『具体的には説明できない、しかし以前に動画で種明かしを見たマジックだ』くらいの状態だと自覚します。

が、周りのお客さんは『YouTubeで無料で種明かしされてるくらいのレベルの事』をするマジシャンと思うかもしれません。(これは完全にぼくの想像で、実際はどうかはわかりません)

これ以外にも(種わかったけど空気壊すし今は言わないでおこう)となって帰り道に「俺ひとつ種わかったけどな〜」と雑談の中に混じるかもしれないですし、「あ、俺種わかったけど可哀想やから言わんといたるわ」なんて事もあるわけです。

いずれにしてもタネを見破られる程度のマジシャンまたはそれに近い評価が下され、マジシャン側が得になる事はないでしょう。

上記の理由が、メジャープロットをそのまま演じてはならない理由です。

メジャープロットは現象がシンプルゆえに記憶に残りやすいのか?いいマジックだからこぞって種明かしされるからなのか?はたまた『指を鳴らす、上がってくる、マジック』など検索しやすいからなのか?

なんにしても現実問題として知ってる客が増えたなら対応しなければなりません。

以下にぼくがとっている対応策をご紹介します。

メジャープロットを演じない


最もシンプルな答えです。
特にスライハンド系カード、コインのメジャープロットは、種明かしされまくってるリスクプロットです。(逆にカップアンドボールやチャイナリングなどの道具がカードやコインでない物はあまり認知されていない印象です。)

ぼくのメインレパートリーに、これらのプロットはありません。(種明かし関係なく昔から人と被るとめんどくさいので入れてなかっただけですが。)

が、おそらくこれは誰でも思い浮かぶ方法でしょうしこんなのは求めてねぇよと言われそうなのでもう少しマシな内容も書いておきます。

ギミックを使う


こちらも体感ですが、ギミックを使ったメジャープロットはわかった、と言われる事があまりないように感じます。

イン○○○○デックや、コインのシ○ルなどです。
単純に記憶に残りにくいのか、商品として出されているから訴えられるかも?とかのリスクを恐れて動画化しないのか(実際に訴える事が可能かどうかは知らない)はたまた動画にしてもなんらかの要因で再生数が伸びないのか、要因は定かではないです。

問題は、理由が定かではないので、『ある日突然知ってる人が増える』というような事が起こる可能性がある事です。

あまり過信しすぎないようにしましょう。

わかった判定を下される記憶のとっかかりとなる要因を排除する

同じプロットを演じていてもわかったとならない事も多々あるようで、どうやら特定のプロットの中に思い出すきっかけとなる動作があるのじゃないか、と考えています。
これから紹介するのはぼくの予想であり検証もサンプル数の少ない情報です、ですからあまり信用しすぎない程度に読んでください。

①アンビシャスカード
ダブルの時のゲットレディの動作と、めくる時のダブル特有の動き
→カルなどを使ってダブルを使わない手法や、プッシュオフだと判定をかい潜れるようです。

②トライアンフ
ラストのデックの半分のカードを半回転させる動き
→最後のパートをフラリッシュ的なタッチの中に動作として溶け込ませてしまう、またはセパ○ゴントライアンフなど混ぜる部分、ラストの部分がメジャーなものと見た目レベルで乖離しているものをチョイスする事で、わかった判定を回避可能。

③カラーチェンジングデック
最初の1枚目のアードネスの動き
→これは対応策は思いついてません、なんかいいのがあれば教えてください。

④コイン系統
フィンガーの時の手の形(あ、狐の手だ!と明確に認知している人がいました)
→サトルティを絡めたり、手順の中にパームしていないけどフィンガーの形をあえて作って適当なタイミングで空を示す事でわからなくさせる。
スリービングやギミックその他でパームではない事を示してわかった判定を回避。

重ねて書きますが、上記はあくまでぼくはそうしている、というだけでプロットの安全性を保証するものではありません。

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タイトルにはやってはいけないと書きましたが、実際のところこれは注目を集めるための過大な表現です。

実際にやったところで仕事に支障が出るレベルで知ってる人が増えたわけではありませんし、バレたところで気にしない、で、やっていける事かもしれません。

ぼく個人の考えとしてはお客さんの不思議さを減らす可能性があるなら何かしら対応すべきだ、とは思っていますが、コスパがいいとは言えない事なのも理解はしています。
ですからこの記事を読んだからといって今演じているメジャープロットに手を加える必要があるわけではないですし、それらを演じているマジシャンをバカにしてはいけません。(ぼくはメジャープロットをなんの工夫もなく演じているマジシャンを見下していますがそれは別の話)

ですのでこの記事を公開した後に「俺はやってても問題ないけどなぁ」とか「そんな気にする必要はないぜ」とか言ってる奴がいたら、記事をちゃんと読んでないか、頭蓋骨の中に脳みそを入れるのを忘れてきたか、はたまた日本語が理解できない(読めないではない)かのどれかでしょう、生暖かい目で見守ってあげてください。

ぼくは種明かしYouTuberは死ぬか指が全部ちぎれないかなぁ?とは思っていますが、今回の記事で彼らのせいで我々が被害を受けている!などと議論をする気はありません。(実際のところどうかも証明できないですしね。)

ですが、問題があるなら対応しないと損をするのは演じている自分たちなのも事実です。

そして現時点での対応難易度はそこまで高くないとも思っています。

この記事を読んでどうするかは読者の皆様次第ですが、皆様の演技のプラスに働く事を願っています。


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