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#7 「愛」を語る

 小説『死にたがりの君に贈る物語』を読了した。愛の物語だった。生の物語だった。幼少期に親が離婚し、再婚した後も喧嘩ばかりの中で育った自分にとって、共働きで自分勝手な両親のもとに生まれた自分にとって、臆病者で他人の視線を気にしすぐに病んでしまう自分にとって、こんなに寄り添ってくれる作品は中々ない。  自分は親に愛されてないのかもしれない。そう思ってからは、たとえそれが勘違いだったとしても、その考えが頭をぐるぐる回って離れなかった。他人から認められたいという思いも、他人に深く関わ

    • #6 物語はまるでコーヒーのようだ

       物語はまるでコーヒーのようだ。小説『名もなき星の哀歌』を読んでそう思った。この小説はハッピーエンドだったのか、あるいはバッドエンドだったのか。記憶にギャップあるあの少年と少女はどう思っていたのだろうか。パートナーが認知症を患ってしまったあの夫婦は。一方で全てを知っていたあの人たちは何を思っていたのだろうか。  記憶を売買できることは魅力的なことだが、それによって生じる記憶の齟齬を思うとどうしても哀しさが溢れてくる。思い出の行き違いがありつつも、互いの考えを尊重し合ったあの二

      • #5 消化不良の作品

         劇場版名探偵コナンの公開が迫っているということでHuluで配信されていた『緋色の弾丸』を約2年ぶりに観たのだが、やはり劇場で観た時と同様に消化不良だったのは否めない。なぜだろうか。赤井秀一がメインで出てくるという作品で期待値が上がっていたのか。あるいはコロナの影響で延期されたことで、自分の中の期待感が高まっていたのか。ただ『紺碧の棺』や『業火の向日葵』、『水平線上の陰謀』といったコナン映画の中でもつまらない作品と同じだったわけではない。むしろ内容としては面白い部類だったので

        • #4 音楽の力ってなんだろう

           4月から入所する大学の研究所から「力」というテーマで作文を出されたので、音楽の力について書いてみた。以下全文抜粋。  私は勉強や作業をするときに決まって同じクラシックのプレイリストを再生する。それは私がそこに含まれる曲を聴きながら行動することに慣れているからであり、慣れているからこそ集中力が自然と高まりやすくなるからである。一方で実際にクラシックのコンサートを聞きに行くこともある。そこではその曲調によって頭の中で情景を思い浮かべ、余韻に浸ることがほとんどだ。このように音楽

        #7 「愛」を語る

          #3 スポーツって最高

           ついこの前からWBCが始まったわけだけど、やっぱり野球って面白い。俺が初めて触れたスポーツっていうこともあって、最近はサッカーにずっとハマっているけれど野球も改めて良いよねって思った。始まる前は坂本や柳田といった俺の好きな88年世代が辞退して、よく知らない日系アメリカ人も参加するらしいって聞いてあんまり見ないかなーって思ってたけどそんなことはなかった。  中国戦は予定があって見れなかったけど、韓国戦を見てヌートバーの偉大さを知った。それは日本の1点目のタイムリーを打ったり、

          #3 スポーツって最高

          #2 でかい夢

           昨日(2023/3/9)、大学の友達Sと2人で角川武蔵野ミュージアムに行った後に飲みに行ったのだが、そこで酔ってSがでかい野望みたいなのを語り出したことが印象的だった。俺は別にその大きな夢を馬鹿にするつもりとかはなくて、ちゃんと聞いてたんだけどやっぱり現実感がなくて本当にできる?とは心の中では思っていた。Sは本当にやるつもりというかやる気があるようで、余計その情熱との間にギャップを感じた。  そいつがもともと見切り発車しがちなやつで、俺も他のやってる人を見ると冷めがちってい

          #2 でかい夢

          #1 心に何かを刻み込む作品

           小説『きみは雪をみることができない』読了。  昨年の春、自分が大学2年生になるタイミングで購入したが、序盤の主人公の心情や心向があまりにも自分と似ていて同化しそうだったため、読むのを中断して寝かせていたものだった。しかし、2,3日前から読み直してみると、止まることなく読み進めることができ、すとんと心に落ちるような作品だった。  自分が今年度から大学で専攻している社会学のテーマとも有機的に結びつき、非常に心に残るものがある。社会学の中では専門ではないけど、医療社会学やジェン

          #1 心に何かを刻み込む作品