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『稲盛和夫一日一言』 1月24日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月24日(水)は、「反省と利他の心」です。

ポイント:「反省」を繰り返すことで自らを戒め、少しでも利己的な思いを抑えることができれば、心の中には、人間が本来持っているはずの「利他の心」が現れてくる。

 2008年発刊の『「成功」と「失敗」の法則』(稲盛和夫著 致知出版社)「反省ある日々を送る」の項で、利己的な心を浄化することの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は洗面するときに、猛烈な自省の念が湧き起こってくることがあります。例えば、前日の言動が自分勝手で納得できないときに、「けしからん!」とか「バカモンが!」などと、鏡に映る自分自身を責め立てる言葉がつい口をついて出てくるのです。

 最近では、朝の洗面時だけでなく、宴席帰りの夜などにも、自宅やホテルの部屋に戻り、寝ようとするときに、思わず「神様、ごめん」という「反省」の言葉が自分の口から飛び出してきます。
 「ごめん」とは、自分の態度を謝罪したいという素直な気持ちとともに、至らない自分の許しを創造主に請いたいという、私の思いを表しています。

 大きな声でそう言うものですから、人が聞いたら、気がふれたと思われるかもしれません。しかし、一人になったときに、思わず口をついて出てくるこの言葉が、私を戒めてくれているのではないかと思うのです。
 このことを私は、自分自身の「良心」が、利己的な自分を責め立てているのだと理解しています。

 人間は、理性を使って、利他的な見地から常に判断ができれば、いつも正しい行動がとれるはずです。しかし実際には、そうなっていません。
 往々にして、生まれながらに持っている、自分だけよければいいという「利己的な心」で判断し、行動してしまうものです。

 それは、例えば自分の肉体を維持するために、他の存在を押しのけてでも自分だけが食物を独占しようとする貪欲な心のことですが、そのような利己的な心は、自己保存のために天が生物に与えてくれた本能ですから、完全に払拭することはできません。
 しかし、だからといって、この本能に基づく利己的な心をそのまま放置しておけば、人間は人生や経営において、欲望のおもむくままに、悪しき行為に走りかねません。

 「反省」をするということは、そのように、ともすれば利己で満たされがちな心を浄化しようとすることです。
 私は「反省」を繰り返すことで自らを戒め、少しでも利己的な思いを抑えることができれば、心の中には、人間が本来持っているはずの美しい「利他の心」が現れてくると考えています。

 仏教で、「一人ひとりに仏が宿っている」と教えるように、人間の本性とはもともと美しいものです。「愛と誠と調和」に満ち、また「真・善・美」、あるいは「良心」という言葉で表すことができるような、崇高なものであるはずです。
 人間は「反省」をすることで、この本来持っている、美しい心を開花させることができるのです。
(要約)

 人間は誰しも完璧ではあり得ず、ときには間違いを引き起こしてしまいます。しかし、そのたびに素直に「反省」し、再び同じ間違いを繰り返すことのないよう懸命に努めていく。そうした日々を送ることが、少しずつ己の人間性を高めてくれるはずです。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「反省ある人生を送る」の項で、名誉会長は次のように説かれています。

 反省ある人生とは、毎日さまざまな判断をしていく中で、それが果たして人間として正しかったのかどうかを絶えず真剣に反省し、常に自分を戒めながら生きていくことです。努めて冷静に、謙虚に反省することです。

 もしも自分勝手で少しでも卑怯な振る舞いをしていたことに気づいたら、「自分だけのことを考えるな」「正しいことを行う勇気を持て」と、自分に言い聞かせるのです。
 このような反省を繰り返していると、間違いを犯す前に、そのような自分の心に気づくようになり、誤った判断をしなくなるのです。

 忙しい毎日を送っている私たちは、その忙しさの中で自分を省みることを忘れ、ただやみくもに仕事をこなすだけで一日を終えてしまいがちですが、そのような日々を送るだけでは、決して自分の人間性を向上させることはできません。
 自分の心を高めようと思うなら、自分に対する厳しい反省が必要なのです。
(要約)

 「反省ならいつもしてるよ」という方もおられるでしょうが、肝心なのは、その都度、真剣に、冷静に、そして謙虚に反省しているかどうかです。

 自分が正しいと思って取った言動に対して、「真剣に」相手の身になって考えてみろと言われてもなかなかできないでしょうし、また感情が高ぶっているときには、そうそう「冷静に」などなれないものです。
 そして最も難しいが、「謙虚」に反省するということではないでしょうか。「卑怯」ではないか、「横柄」にはなっていないか等々、自分を厳しく見つめ直すのは至難の業です。

 私の信条は、『謙虚にして驕らず、さらに努力を』です。
「反省ある人生を送る」ということは、この信条を貫いていくうえでの大前提となっています。


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